イラン「大量のアフガン人を強制追放」

国際移住機関(IOM)は先月30日、「イランから帰還するアフガニスタン人不法移民の数が前例のないほど急増している」と警鐘を鳴らした。それによると、6月だけで25万6000人以上が母国に送還されている。この記録的な移動により、国境の対応は限界に達している。また、深刻な資金不足により、IOMとパートナー団体の支援活動が阻まれている。
IOMによると、今年初め以降,約71万5000人のアフガン人がイランを出国した。一方、パキスタン政府は4月に強制送還のキャンペーンを開始して以来、20万人以上のアフガン人を出国させている。

IOMのエイミー・ポープ事務局長、IOM公式サイトから

IOMのエイミー・ポープ事務局長は先月30日、「パキスタンからの帰還急増に続いて、イラン政府が居住許可のないアフガニスタン人の出国期限を設定したことを受け、帰還者数は増加した。イランからの帰還者が余りにも多いため、既に脆弱な支援体制に計り知れない負担をかけている」と述べ、「人々は着の身着のままで到着し、疲弊し、食料、医療、そして支援を緊急に必要としている。より強力かつ迅速な国際社会の対応が必要だ。アフガニスタン政府だけではこれに対処することはできない」と警告を発した。

IOMによると、イラン政府は3月20日までに不法滞在のアフガニスタン人全員の国外退去を義務付けた。それを受け、帰還者数は4月に増加し始め、5月まで続き、6月にピークに達した。6月25日だけで、1日で2万8000人以上がアフガニスタンに帰還したという。

ちなみに、IOMは、2025年1月1日から6月29日までの間にイランから帰還したアフガニスタン人移民を合計71万4572人と記録している。このうち99%は不法滞在者であり、70%は強制送還されたものだ。懸念が高まっているのは、家族連れの強制送還が増加していることだ。帰還者の大半が独身の若い男性だった以前の数ヶ月とは状況が一変しているのだ。

IOMは6月3日、イランから強制送還されるアフガニスタン人家族の増加について懸念を表明した。5月には1万5675件が記録され、前月の2倍以上に上った。イラン当局は、不法滞在のアフガニスタン人に対し、7月6日までに国外退去を求めている。イラン内務省のナデル・ヤラフマディ氏は国営テレビで、イラン国内に600万人以上いるとされるアフガニスタン人のうち、約400万人が影響を受けると述べた。

一方、パキスタン政府は4月に強制送還のキャンペーンを開始して以来、20万人以上のアフガン人を出国させた。パキスタンは、居住許可を取り消された80万人以上のアフガニスタン人を追放するための強力なキャンペーンを開始した。これらのアフガニスタン人の中には、パキスタンで生まれた人や数十年にわたってパキスタンに住んでいる人もいる。内務省によると、4月には13万5000人以上、5月には約6万7000人がパキスタンを出国し、6月最初の2日間で3000人以上が帰国した。

過去数十年にわたり、数百万人のアフガニスタン人が相次ぐ戦争から逃れ、パキスタンに流入した。加えて、2021年にタリバン政権が政権に復帰した後には、数十万人がパキスタンに流入した。2023年にはアフガニスタン人追放運動が始まり、数週間のうちに数十万人が嫌がらせや逮捕を恐れて国境を越えた。パキスタンを出国したアフガニスタン人は合計で100万人を超えたといわれている。

治安と経済問題が悪化する中、多くのパキスタン人はアフガニスタン人の受け入れにうんざりしていることもあって、国外追放キャンペーンは幅広い支持を得ている。パキスタンは現在、国連難民高等弁務官事務所が6月末に発行した難民カードを所持する130万人のアフガニスタン人に対する保護を撤回すると警告している。

IOMは「両国境を越えた流入は、アフガニスタンの既に脆弱な受け入れ・社会復帰システムを圧倒する恐れがある」と指摘し、「帰還は安全で、尊厳を保ち、自発的であり、受け入れコミュニティが管理可能なものでなければならない」と強調し、全ての国に対し、アフガニスタン人の移民資格に関わらず、安全で自発的かつ尊厳のある帰還条件が整うまで、アフガニスタン人の強制送還を即時停止するようにと改めて求めている。

ちなみに、アフガニスタンのイスラム主義組織タリバンの暫定政権は国外脱出者に「恩赦」を与えるとして、帰還を求めているが、多くのアフガン人はタリバン政権を恐れ、帰国を渋っている。


編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2025年7月日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。