7月1日に路線価が発表になり、東京が8.1%上昇でほぼ一人勝ちとなりました。最大の理由は投資マネーと共に人口が増えているからです。25年1月時点での東京都の人口は1422万人で前年に比べて87千人ほど増えています。東京都の人口調査によるとピークは2025年の予想になっていますが、私はまだ先だとみています。逆に言えば人口増がなければ東京都の不動産価格の上昇は維持しにくくなります。

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投資マネー増⇒雇用増⇒住民増⇒不動産価格上昇 は経済の方程式のようなものです。雇用が増えても隣接県から通ったらどうなのだ、という質問もあると思いますが、全員が隣接県から通うわけじゃないわけで東京都が肥大化するサイクルに基本的変化はないとみています。
東京都の人口の推移ですが、人口推計でネガティブな点は高齢者の死亡に伴う人口のマイナス要因ですが、これは非日本人などの流入人口が強力にサポートし、プラスを維持できるはずで、人口推計にその部分が十分に反映されていないとみています。特に中国人の一時滞在などによる人口増が今後想定を超えてくるとみています。また東京都の世帯数は予想では2035年まで増えて続けるとみられる点も人口予想が今年にピークになるという点とやや矛盾を起こしています。
私が東京都の未来図を想像すると① 都内の企業が雇用を拡大 ② 外国人雇用は爆発的に増える ③ 外国人は長時間通勤は苦手なので都内に住居を求める ④ 日本人の単身者層もどんな政策を掲げようと今後も増大の一途とみています。すると東京都だけ日本全体とアイデンティティが異なる街に成長する可能性が出てきます。アメリカにおけるニューヨークのようなものです。するといわゆる東京っ子が住みにくさを感じ、郊外に出る一方、海外からの投資マネーと人流で東京都の国際化はより一層進展するというシナリオです。
この話を読んで怒りを感じる人も多いでしょう。日本が外国に乗っ取られるような話なのか、と。乗っ取るというのは大げさかもしれませんが、世界の大都市の中心部は富裕層や外国人に占められるのは世界ではごく当たり前の光景なのであり、東京だけが例外ということはあり得ないとみています。
英国ロンドンではロンドン子が10年以上も前から郊外に脱出し続けているし、バンクーバーでも白人はバンクーバー島などに移住する人は着実に増えています。理由は街中が住みにくくなるからです。「お隣さんは外国人」というのはロンドンやバンクーバー、ニューヨークなど国際都市では当たり前の光景であり、それは社会や経済の根幹をなすものであり、受け入れざるを得ないのです。ところが、自分の隣人になるのはちょっと気が重い、という生粋の地元育ちの人は多いのです。ならば自分が逃げた方が早い、というわけです。
私の経営するシェアハウスや外国人向けアパート、更に通常のアパートの住民を見る限り、若い人がワークライフバランスを取ろうとしている様子も窺えます。特に「ライフ」の部分は自分の好きなことをする時間を職住接近によって実現させているわけです。通勤で片道1時間半、往復で3時間かけるならちょっと家賃が高くても往復1時間以内がベストだし、それならば他の人より一日2時間、好きなことに使えると思えばお金に変えられない価値があるというものです。
一方、都心のライフが子育てを含めたファミリー層に向いているかといえば一般的には向かないと申し上げてよいと思います。住環境が悪すぎで、緑もなく、ファミリー向きの健康さが都心には少ないのです。湾岸地区の高層マンションは私にはとてもファミリー層の教育や生活環境に向いているとは思えないのになぜあれほどの人気なのか理解に苦しむものがあります。
では不動産の話。実は外国から見ると若い人が多く、人流がはるかに高いレベルの都心は不動産の魅力が非常に高いのです。 理由は賃借人が短期間だったりドライな人が多く、居住地に固執しないため、不動産の流動性も高くなりやすいのです。なので地上げをして開発がしやすい点はあります。また都内は相続絡みの売り物件がコンスタントに出ます。要は相続税を払うために不動産を売る人が常時あるのです。そしてそれらにはなかなか手に入りにくい物件が多いのも事実です。
不動産価格の問題もあります。世界の主要都市に比べ半分以下で買える物件も多いのです。そして私のようなオタク系になると旗竿物件といった再建築不可物件や借地権物件など誰も手出ししないものが信じられないほどのバーゲン価格で手に入るチャンスを見出しています。(さすが事故物件だけは敬遠します)。一般向けではない複雑な土地や所有関係は専門の業者にはうまみ倍増で掘り出し物的な要素もあります。
そして不動産投資マネーは海外からです。世界をうろつくマネーは様々な種類があり、不動産取得を目的としたマネー、特に海外の年金基金がバックについているケースが結構あり、巨額の取引が成立しやすくなっています。一部のファンドは日本向けの投資目標額をかなり大きく設定しており、担当者は血眼で物件を探しているというのが実情です。(買わないと実績につながらないので無理に買っているなという印象の大型取引も散見できます。)
また建築費が高騰していますが、このあたりも外国での建築に比べればはるかに安く、はるかに工期が短く、はるかに品質が良いことは知る人ぞ知る事実です。これらが主導するマネーと機運が東京の不動産を更に上昇させやすいとも言えましょう。
80年代のバブルは不動産と株価の上昇をもたらしたことが主因とされますが、現在の不動産価格上昇は既に10年ぐらい続くトレンドなので長い目で見れば不動産長者は相当出てきているはずです。当然ながら懐が緩んで景気の底支えになりやすいとも言えそうです。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2025年7月3日の記事より転載させていただきました。