日本が目指す外交とは?:トランプ大統領とディールできたのは安倍首相だけ

岡本 裕明

参議院選挙を控えていますが、党首討論で外交の論戦はあまり深みがなかったようです。選挙において外交は二の次、三の次であり、各政党はそこはわかっているのでその議論に時間を割かなかったのだろうと察しています。では選挙を別にして各党に外交を語ってみよ、と言ったらどんな答えが返ってくるのでしょうか?例えば参政党は日本に入ってくる外国人に一定の抵抗を持っていることはわかっています。では伺います。コンビニやレストランの店員は今後、どうしますか?日本企業は外国で稼ぎまくっているのに日本は外国人を受け入れないというのは不平等だと指摘されませんか?

日本記者クラブ主催党首討論会で発言する野田佳彦代表 立憲民主党HPより

我々が江戸時代に戻るのならほぼ単一民族主義でもよいのかもしれません。尊王攘夷論戦のようなものでしょう。国民にはそれぞれ感情があり、思いがあり、好き嫌いがあります。それは尊重します。ただ各人が個人の好みを言い合ってもしょうがないのであって日本国の10年後、50年後、100年後をどうやって支え、どのように基盤を作るか冷静になって考える必要があります。

これに対して「ロボットを大量に稼働させ、外国人労働力に頼らなくても自立できる社会を作ればよいじゃないか」と某コメンテーターが述べていましたが、そんなに短絡的なものでよいのでしょうか?

お前は日本がどうあるべきと考えるのか、と聞かれたら「二本足でしっかり立ち、諸外国からリスペクトされ、多少の波風でもぐらつかないポリシーと筋力ある国家づくり」だと答えます。筋力さえあれば外国人が日本に住んでもそう簡単に日本の本質が揺らぐことはないのです。

日本は幕末に開国して今年で171年になるのですが、諸外国との付き合いは大いにブレまくりました。ただ私の見る日本の近代外交は基本的に外国勢力が怖いという意識が潜在的に強かったと思います。西郷隆盛の征韓論はロシアの南下政策を食い止めるためのものでしたし、戦中の日本のアジア各地への進出も日本に資源がないことで自立できない弱点を補うことを優先したことは大いにあります。大戦の後期にはアメリカ軍に激しく攻められ膨張政策の失敗は日本に一定の外国苦手意識をもたらします。近年の外交ではアメリカに配慮をせずして日本の外交が成り立たないのではないかとすら思いたくなります。

戦後は経済成長で貿易を通じて大いなる成長をするも99%の日本人は外国人と直接接することはなく、海の向こうの人という意識を持ち続けます。ここに来て日本に来る外国人が増える中、お金を落としてくれるだけならともかく、長期滞在者も増える中、直接影響する事態が発生し、賛否両論が渦巻くようになったと考えています。

昔から思うのが日本人の英語下手。かつては中学校から、今では小学校3年生から英語を学ぶのに成人して海外旅行に行っても旅行英語もおぼつかないのは何故でしょうか?たぶん、苦手なのだと思います、英語ではなく、外国人が。なので参政党が外国人に頼らない国家運営というと確かに聞こえが良いわけです。しかし私からすればそれを裏返せば逃げにも聞こえないか、とも感じるのです。

トランプ大統領と関税交渉のディールがうまくいきません。思い起こせばトランプ氏とまともにディールできたのは安倍晋三氏だけなのです。それまでトランプ氏と日本政府はほとんどつながりがなかった中で安倍氏はトランプ氏の懐に飛び込んでいったのです。そして蜜月の関係となります。それを日本政府は「安倍さんがいなくても交渉できる」と若干勘違いした気がするのです。

安倍晋三元首相 首相官邸HPより

関税ディールで私が欠落しているな、思うのはトランプ氏に手柄を与える餌がないように見えるのです。私ならアメ車が日本で売りやすいようあらゆる制度的ハードルを取り除き、「トランプさん、お手柄です」と褒めたたえてしまったらよいと思うのです。(どうせ売れないのは分かってますから。)石破さんは取引に負けたくないという気持ちが先行しすぎているようにみえるのです。あれじゃディールは出来ないでしょう。

私は海外に34年住んでいますが、カナダ人とディールすることが少しわかってきたのは20年ぐらいたってからです。同じ空気を吸い、同じ土俵に立っているという意識を持つようになり相手がようやく胸襟を開き始めたのです。英語ができるとか数年間アメリカの大学に行ったから交渉ができると思ったら大間違いなのです。国際人感覚とはそんなものじゃないのです。

日本の地位の凋落が指摘されています。GDPはインドにも抜かれそうなところにあります。ただ、私は経済指標といった尺度では計れない日本の持つ威厳と独自性は今でも世界の中でも際立っており、日本や日本製品、日本人は様々な分野で世界の中のキーポジションに君臨しています。諸外国、特に西側諸国は目先の損得に振り回され、ポリシーなき政治を演じています。その中で日本は歴史と伝統を背景にブレない社会、そしてより強固な社会を作ることこそが日本の外交となるべきことなのです。

世界が日本に相談に来るぐらいの国家になって欲しいものです。これは保守とか改革派という次元ではないと思うのです。日本人故に日本の権益を守ることは当たり前。そして諸外国にそれをきちんと説明し、時として意見の相違があってもそれで慌てないぐらいのどっしりした国家を形成してもらいたいと思います。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2025年7月18日の記事より転載させていただきました。

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会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。