外国人による不動産取得規制 日本は緩すぎ

日産追浜工場の閉鎖が正式になりました。かつて務めたゼネコンが日産の関東地区のほぼ全ての工場の工事を定常的に請け負っており、私が事務担当だった時期が1年半ぐらいあり、同工場にも出入りしておりました。思い出深いです。立地としては最高だと思います。日産が鴻海と提携してEV工場の可能性を探っている話もあるようですが、私はあの土地の用途は無限に考えられると思います。別に日産ではなくてもよいでしょう。同工場の閉鎖は象徴的ともいえますが、1999年のあの倒産瀬戸際の日産を覚えている方には「またか」でしかなく、結局経営力が足りず、社内権力闘争に明け暮れた同社の自滅だと思います。今回はゴーン氏の時のようなV字再生ができるとは思っていません。

では今週のつぶやきをお送りします。

心配性の日本人の投資心理

日課のようにして読んでいる複数の証券関係者のブログ。そこから見えるのは日本人機関投資家、証券会社、一定水準以上の投資家の市場への向き合い方です。数字なんてどこでも読めるのでそれは二の次で、その世界の関係者から聞き出したつぶやきの類が一番面白いのです。AIではまず出てこないため貴重なのです。私の株式格言は「AIの行く 裏に道あり ホントの話」。

では日本の3連休明けの市場を読むとどうなるでしょうか?選挙予想はほぼすべてのメディアで現与党の苦戦が見込まれているので自公で42から49程度に収まると仮定します。市場がどれぐらい負けを読み込んでいるかですが、私は47程度までなら織り込んでいるとみています。野党の躍進で消費税を含む物価高対策へのプレッシャーが大きくなり、財政問題が表面化するので長期国債の利回りが上がり、円はひょっとすると150円台になるかもしれません。円安はとりあえずは株式市場にはプラスです。

次にアメリカとの関税交渉がありますが、石破氏が選挙結果を踏まえ、辞任するのかどうかであります。選挙後にすぐに表明すればアメリカは次の総裁決定まで関税交渉を例外的に待つというシナリオはあり得ると思います。アメリカにとって石破氏より悪い首相は出ないだろうという勘繰りがあるからです。一方、一部のコメンテーターが述べているように石破氏は首相の座にかじりつくとなればネガティブで政治の混乱が更に深まるという読みが出ます。これらをセロトニンが少ない日本の投資家がビビりながら火曜日のマーケットが開けるのを心配げに待つのです。だけど、金曜は日経平均が82円しか下げなかったということは市場は底堅く、強いシグナルには見えます。

セブン対クシュタールは喧嘩両成敗

この買収提案劇、小説にできると思ったぐらい盛り上がったのに最後の結末があまりにもあっけなく、個人的に至極がっかりしました。私はクシュタールがセブンの取締役会に送り付けた長い英文を全部読みました。読んでいてムカついてきたのです。「クシュタールよ、君たちはひろをコンサルで雇うべきだったな」と。クシュタールは日本市場の特殊性を全く理解しておらず、ケベック州の井の中の蛙企業がアジア企業にちょっかい出してみた、ぐらいのレベルでした。つまりクシュタールにセブンを買収するだけの能力も知恵も知識も見識も良心も何もナッシングだったのですね。

ではセブン。これも酷かったと思います。アメリカと日本で行われた買収提案の会議。共にごくわずかな資料が開示され、セブンの責任者は手持ち資料を読み上げただけ。DONE。これを「典型的日本式」でこれを理解しないのはクシュタールの不勉強という意見は頂けず、セブンは珍奇なMBO案を含め、とにかく上へ下への大騒ぎで大企業としてあまりにも無残、無防備、無能でした。穴の開いたパンツを履いていてそれが相手にみられたようなものです。

クシュタールの買収提案引き下げでセブンの株価は2日間で2230円台からほぼ300円、13%程度下げています。この先、もう一段の下げがあるかもしれません。それはライバル2社の追い上げがより現実化するからです。日販ではまだセブンが差をつけていますが、追い上げる側の勢いが違います。多分、企業体質の問題で、セブンはコンビニができた時からずっとトップなので殿様商売で乱世にも動じず、「芸子を呼べ、今宵も楽しく飲むのじゃ」の体質が抜けないのだと思います。セブンのファン層は外資に取られなくてよかったと思っているかもしれませんが、案外「しめた!」と小躍りしているのはライバル2社ではないかと勘繰っています。

外国人による不動産取得規制 日本は緩すぎ

20年前なら外国で不動産を買うのはあまり問題にならなかったと思います。私はバンクーバーのダウンタウンのど真ん中に1.7ヘクタールのマリーナを所有運営していますが、この海は完全に私有。今ではもちろん許されない所有形態ですが、100年もの当該土地(海)の所有者の歴史で私有地として受け継がれてきたため、英語でいうgrandfather (適用除外)で極めて珍しいケースになっているのです。カナダ政府は悔しいでしょうね。だって外国人が海を持っているのですから。

千代田区が面白い提言をしています。同区内のマンションは5年間転売禁止の自主規制をせよ、と。具体的にはデベがマンション購入者と交わす契約に5年間の売買は禁止と謳い込むのでしょう。ただ罰則規定がなければほぼ無意味。日本人はまじめだから守るかもしれませんが、外国人はそんなのはお構いなしで常に抜け穴を探しています。私は以前、国土法を改正して短期転売の課税強化をもっと行うべきと申し上げました。また京都で導入予定の固定資産税評価額の0.7%の空き家税といった対策を国の法律でより一般化すべきだと考えています。このまま一部の優良物件=値上がりしそうな物件が投資家、特に外国人に買い占められてしまえば禍根を残すことになります。

MASA Sibata/iStock

併せて農地や山林、港湾、国の重要施設のそばなどの不動産取引規制も明白にすべきでしょう。基本的には全国規制マップを作り、当該土地の売買は全て国土法に基づき、取引の事前承認を国交省から得ることを要件とすべきです。また外国人が不動産を売却した際の課税問題も生じています。要はとりっぱぐれ。売却益課税の為の源泉徴収の仕組みはあるのですが、非居住者による1億円以上の物件などかなり緩々で形骸化しています。私なら売却者が外国人の場合、その売買代金の20%から30%の源泉税を課し、その課税徴収は取引時に不動産仲介者が責任をもって実行し、国庫に遅滞なく納付するという徴収代理をさせるべきと思います。方法なんていくらでもあり、別に外国人差別ではなく、納税を担保するための方策と言ってしまえばそれまでであり、誰もそれに文句は言わないし、言えないのです。日本はとにかく外国人が苦手で優しすぎであります。

後記
アメリカ人の顧客と日本酒を酌み交わしながら「持っている資産をどう処理するか?」という話になりました。氏はアジアのある難しい国で高級レストラン事業を展開し5店舗運営しています。「そんな国で高級路線っていったい誰が顧客なの?」と聞けば「政府高官さ」と。市民の収入では絶対にアフォードできない価格帯でも「持っている人は持っている」そうです。「それを仕切れるのはYouが唯一の白人だからだろう」と酒の勢いで聞けば「そうだ」と。70歳になる彼はそろそろ引退して北米暮らしに戻りたいと。「どうするの、その店?」と聞けば誰か真面目に運営して事業継続してくれるならタダでもよい」と。それは聞かなかったことにするけれど資産の処分って案外難しい場合もあるようです。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2025年7月19日の記事より転載させていただきました。

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会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。