優秀な相手に「この人は違う」と思わせるコツ

黒坂岳央です。

仕事において「気遣い」と「出しゃばり」は紙一重である。「自分がやります!」という積極性が出しゃばりとなって「ありがた迷惑」な人もいるし、その逆に態度は控えめながら、実にかゆいところに手が届く気遣いができる人もいる。

そして優秀な人ほど、この紙一重を敏感に感じ取り「この人は違うな」と一目置かれる。筆者は独立してこのあたりを勉強し、これまで一流ビジネスマンから「他の人ではなく、ぜひあなたに仕事をお願いしたい」と信頼を勝ち取った経験がある。

筆者は有名一流ビジネスマンなどではないが、今回紹介するワザを見せる相手に「この人はすごいな」と感じたことは少なくない。

本稿では、相手の懐に入りつつ、信頼と尊敬を勝ち取るための具体的な方法について論じていく。

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1. 相手の発言を「行動」で返す

優秀な人は相手に求められてアドバイスをすることが多い。「こうすると課題が解決しますよ」「この本、動画がおすすめ」と根っからギバーの人ほど、相手の求める情報を余すことなく与える。

だが、多くの場合、このような提案やアドバイスを「知って満足」となって行動しない事が多い。だが一部の人は実際に行動する。さらにごく少数の一目置かれる人は「行動して報告する」のだ。

たとえば、相手が薦めた書籍があったなら翌日にはその書籍を購入し、「〇〇さんが教えてくださった本、非常に勉強になりました。特に最後の章のこの話はご提案いただいた内容と同じで学びになりました」と感想を添える。

これだけで、相手は「この人は行動できる人だ」と感じる。一流ビジネスマンほど多くの人は知っても行動しないことを理解している。もちろん、相手にそれを咎めたりはしないが、端から期待もしていないことが多い。

そこでこうした行動力を見せることが「この人は違う」と信頼されるのだ。

2. 質問の仕方で「伸びしろ」を伝える

優秀な人は相手の質問から力量を見破る。

「どこに注目するか?」で相手の力量を測っている。ありきたりなWhatの質問や、検索すればすぐ出てくるような質問ではなく、「なぜその判断を下したのか?」というWhyの質問を投げかけることが、相手の思考に敬意を示す行為となる。

たとえば、「もう少し待てば楽に動けるタイミングがあると知っていながら、なぜ大変なタイミングで起業されたのですか?その時に何か勝算が見えていた、ということでしょうか?」という質問だ。

こうした質問は「相手の思考や行動」から価値を見出そうとする姿勢である。これにより、相手は「この人は思考のプロセスに興味を持っている=伸びるタイプ」と認識する。

筆者自身も相手の思考や行動に興味を持つ。それらは検索やAIでは答えを引き出せず、相手に質問するしかない。加えて、思考や行動からは多くの有益な情報を引き出すことができる。過去にそのように質問して、相手の行動理由からフロンティアスピリッツを見出して、ビジネスの姿勢に反映したことは何度もあった。

ノウハウは今どき検索すれば出てくるが、結局差をつけているのは一流の持つ思考や行動なのだ。

3. 相手の時間を節約する

有力者ほど忙しく、多くの意思決定を抱えている。その時間的価値を理解し、積極的に自らが「手間を引き受ける」姿勢を示すことが、信頼構築の近道である。

たとえば、打ち合わせ後に「ここまでの議論を要点にまとめました」「次のアクション項目を整理しました」といったメールを送る。これは単なるマメさではなく、ビジネスにおける「比較優位の原則」を理解している証左である。

つまり、自分の時給は相手より安く、相手はより重要な仕事に時間を充てるべき存在であることを経済原理を肌で理解している人間に、優秀なビジネスマンは自然と一目置く。

4. 「調べた上で会う」リサーチの習慣

相手に時間を割いてもらう以上、「事前に調べておく」ことは礼儀である。

最近のSNSの投稿、インタビュー記事、過去の経歴などを軽く確認しておくだけで、話題の深さが変わる。

「先日のインタビューで御社の方向性についてお話されていましたが…」と切り出せば、「この人は準備をしてきた=こちらの価値を理解している」と受け止められる。情報収集とは、相手への敬意そのものである。逆にそうしなければ、「調べたら分かる質問」をたくさんすることで、相手の時間を無駄に奪ってしまうことになる。つまり、「自分が調べる手間を相手に処理させている構図」となっているから嫌われるのだ。

筆者は雑誌やテレビなどで取材を受けることがあるが、やり取りをしていて「この人は頭の回転が早く、非常に優秀だな」と感じる人ほど、こちらのことを入念に調べた上で連絡をもらうことが多い。

こうした振る舞いが自然にできる人間には、必ず誰かが「次も会いたい」と感じる。一流に近づく最短ルートは、まず“配慮される側”ではなく、“配慮する側”に立つことから始まるのだ。

 

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働き方・キャリア・AI時代の生き方を語る著者・解説者
著書4冊/英語系YouTuber登録者5万人。TBS『THE TIME』など各種メディアで、働き方・キャリア戦略・英語学習・AI時代の社会変化を分かりやすく解説。