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全法人、個人事業主も税務調査のオンライン化の対象に
コロナ禍への対応として、国税庁は2022年10月から、国税局の特官所掌法人を対象に、職員が法人に臨場しない国税局からの「オンライン調査」を実施しています。
これまでは、税務調査のオンライン化といっても、調査官が法人に訪問し、その場で法人のパソコン等を利用したWEB会議システムで支店や工場と連絡をする「臨場型オンライン調査」でした。
それが、調査官が法人に臨場せず、国税局からWEB会議システムを通じて行う、真の意味での「オンライン調査」となったのです。
これまでは、国税局の特別国税調査官が担当する特官所掌法人がオンライン調査の対象とされていました。
そのオンライン調査が、令和7年9月からは、全法人や個人事業主までも対象に、順次進展していくことになったのです。
そこで、税務調査がオンライン化することでどんな変化がもたらされるのかを考えてみようと思います。
税務調査のオンライン化とは
これまで税務調査といえば、税務署の職員が事業所や自宅に訪問して対面で面談したり、電話でのやり取りや郵送で資料提出を行ったりするのが一般的でした。
しかし、今後は「オンライン調査等」として、質問や資料収集の方法に次のようなものを採用されるようになります。
インターネットメールでの連絡
税務調査が実施される場合、納税者や関与税理士に対して、「この税目のこの期間を対象にした税務調査を実施する」という事前連絡が来ます。
これを「事前通知」といいます。
この事前通知は、電話にて実施されており、今後もそれは変わらないようです。
一方で、その事前通知以降に「税務調査当日には、このような資料を用意してほしい」というような連絡はメールでされるようになるとのことです。
WEB会議システムによる面談
Microsoft TeamsなどのWEB会議システムを利用し、調査等に係る質問や回答のヒアリングが行われます。
うちは、もうほとんどのミーティングがオンラインで行われており、唯一お客様のところに伺うのが、税務調査の立会くらいなので、WEB会議での現地調査が出来るようになると、さらに、好き勝手にどこでも働くことが出来るようになりそうです。
オンラインストレージサービスでのデータの受渡し
調査官から求められた帳簿書類などの資料データをメールやe-Taxのほか、PrimeDriveなどのオンラインストレージサービスを利用して、安全にやり取りできるようになります。
これまでは、税務署はFAXの受信はOK(送信はNG)でしたが、今どきFAXなど持ってなかったので、資料提出は郵送で行っていました。
それらの資料提出が、オンライン経由でできるようになるというのは、無駄な作業の削減に繋がります。
いつから?誰が?どの税が対象?
令和7年9月より、オンライン調査等は段階的にスタートします。
このデジタル化は、国税庁が政府共通の業務実施環境である「ガバメントソリューションサービス」(GSS)を導入することに伴い、一気に進められます。
まずは金沢と福岡国税国管内から
まずは、職員一人につき一台のGSS端末が配備される金沢国税局及び福岡国税局とその管内税務署から、オンライン調査等への対応が先行開始されます。
その後、その他の国税局等及び管内税務署で、令和8年3月から同年6月までの間に順次GSS端末が配備され、その配備の時期に伴いオンライン調査等に対応していく予定です。
全法人に加えて個人事業主も
対象は、これまでの国税局調査課所管の大規模な法人だけでなく、税務署所管の全法人にとどまらず個人事業主にまで拡大されます。
税目もすべての税目で可能に
税目も、法人税、消費税、源泉所得税、個人所得税といった事業者に係るものだけでなく、譲渡所得や相続税・贈与税等の資産税も含まれることになります。
つまり、すべての国税に関する納税者がオンライン調査等の対象となり得るということです。
オンライン調査は強制ではなく納税者の同意が必要
「オンライン調査等」は、あくまで税務調査で必要に応じて行われるものであり、強制ではありません。事前に納税者の同意が必要となります。
その同意を得たことを明らかにするため、納税者は調査官に同意書を提出するなどの手続きが必要になります。
例えば、インターネットメールでの連絡を行う場合は、メール利用の意思確認が行われた後、納税者がMicrosoft Formsを利用して同意事項やメールアドレスの登録を行う手続きが必要です。
登録後には調査官からテストメールが送信され、納税者への着信が電話で確認されます。
状況によっては、インターネットメールでの連絡は行うものの、面談はオンラインではなく調査官と納税者が対面で行うなど、一部だけオンラインツールを活用するハイブリッドなケースも想定されています。
納税者へのメリットと留意点
オンライン調査等の導入は、納税者にとって資料郵送の手間が省けるなど、利便性向上につながります。
また、税務行政の効率化にも寄与するため、調査全体の迅速化も期待できるでしょう。
とはいえ、帳簿はCSVなどのデータで提供はできるにしても、あの膨大な量の紙の請求書や領収証を、どうやって、税務署が調べるんでしょうか?
全部PDFにしろとかいうんですかね。
「税務DX」とか言い出して、一方的に、予定納税の納付書を送ってこなくなったことで、納付漏れが多発。その尻拭いとしてのリマインドと納税のサポートを税理士が行うことで、なんとか対応できていることを国税は知っているんですかね。
まさか、今回も「税理士への押し付け」が前提の税務署の効率化なんてことはないでしょうね。
編集部より:この記事は、税理士の吉澤大氏のブログ「あなたのファイナンス用心棒」(2025年7月31日エントリー)より転載させていただきました。






