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はじめに:国政から地方へ、制度設計の応用
先の論考では、国政における重要議題について、各政党の政策スタンスを一覧で閲覧できる民間主導型のサイト構想を提案した。これは、情報公開の新たな地平を切り拓く制度設計として、民主主義の言論空間を再構築する可能性を秘めている。

この仕組みは、地方自治体の議会にも準用できるのではないか。むしろ、地方議会こそがこの制度の恩恵を最も必要としていると私は考えている。以下に、その背景と理由を述べたい。
地方議会における機能不全の実態
地方議会は、執行部が提案する予算や条例案を審議し、市民の利益を最大化するための優先順位をつける役割を担っている。しかし現実には、機能不全に陥っている議会が少なくない。
一方では、多数の議席を持つ会派が市長部局と癒着し、議案審議が形式化・空洞化している。他方では、市長と議会が対立し、政策への反対が目的化してしまい、重要な行政施策が停滞するケースもある。
いずれにしても、議会が本来果たすべき「市民の利益の最大化」という役割から逸脱している。執行部との健全な牽制関係が保たれている地方議会は、残念ながら我が国では稀有な存在といってよい。
なぜ議会は可視化されないのか
このような機能不全の背景には、市民の地方議会に対する無関心がある。そして、問題ある議会ほどその無関心を温存するために、議会の透明性を高める改革を極端に嫌う傾向がある。
例えば、議会の動画公開は透明性向上の第一歩だが、佐倉市を含む多くの自治体では、常任委員会等の動画公開が行われていない。体感としては、全国の基礎自治体の7割程度が未公開であろう。
※ 総務省の調査では、全国の市議会では動画公開を導入している市議会は9割以上となっているが、この結果は佐倉市議会のように「本会議のみ公開」という議会を含んでいる。議案の個別審議が行われる最重要審議体である常任委員会については調査が及んでいない。私の「体感」は、あくまで常任委員会等、本会議以外の動画公開についてであることを留意されたい。
さらに、議会に関心のない市民が突然動画を視聴しても、内容を理解するのは難しい。だからこそ、主要な議案については、執行部が事業の目的を簡潔に説明し、議員が賛否とその理由を一覧で公開する仕組みが必要なのだ。
議会だよりの限界と新たな制度設計
本来、こうした情報公開は「議会だより」が担うべき役割だが、現状では議会自らが記述内容に制約を設けており、内容が極めて薄い定期刊行物にとどまっている。
そこで、第三者が運営するプラットフォーム上で、議会で審議された重要議案について、首長(執行部)と議員のスタンスを一覧で閲覧できる仕組みを構築すべきだと考える。
このサイトが機能すれば、議員個人の考えや賛否が可視化され、市民の地方議会に対する理解と関心は確実に深まるだろう。
おわりに:制度で政治の透明性をつくる
地方議会の機能不全は、制度の不備というよりも、制度の「使われ方」によって生じている。だからこそ、制度設計によって政治の透明性を高めることが、民主主義の再構築につながる。
一方で、このようなプラットフォームができたとしても、使われなければ意味がない。そこで、このようなプラットフォームができた際に、どうすれば利用が促進されるか、という点もあわせて考察する必要がある。
次回は、この構想を具体的に制度化するための地方議会向けプラットフォームの設計案と利用促進の方策について、さらに踏み込んで検討したい。






