日本では三階建て狭小住宅がごく普通に建築されています。特に多いのが100坪程度の一団の土地や一筆の土地が相続などで売地になった場合、それを買ってそこに戸建てを建てる需要が極めて限られるからとされます。故にパワービルダーから街の不動産屋、戸建ての開発業者が入り乱れ、狭小住宅を建築します。地型(じがた)や土地面積によりますが、よくあるのが当該土地の真ん中に通路をつけて両サイド及び奥に2軒で合計4軒とか表通りに面して3‐4軒建てるケースでしょうか?

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私はこれはジャパン スペシャルだと思うのです。つまり他の国では考えにくいのと不動産開発の思想からはあまりいただけないものがあります。
まず、狭小住宅の特徴は1階がなぜか駐車場、そして狭い階段を上がると2階にキッチン、ダイニング、風呂で3階が寝室のパタンが基本だと思います。もしも日本人が終の棲家という発想を持つならば、なぜ狭い曲がりくねる階段の住宅を設計してしまうのか、これが私の根本的疑問です。そして最大の疑問は「一階に鎮座しているその車、動くのでしょうか?」であります。
一階に駐車場があるのは一般的に延べ床面積の計算の除外なので大きなものを建てることができる=建築会社は儲かる、買主は広めのものを買えるというウィンウィンになるのでしょう。
私の友人が見事にこれに当てはまる住宅を建て、更に屋上があってBBQができるというのでお伺いしたことがあります。屋上の利用は良いのですが、1階には外車が鎮座しています。「この車、奥さん乗るの?」と聞けば「No」。その彼は転勤族でほぼ2年に一度転勤で国内を転々と回り、東京勤務になるのは6-7年に一度。つまり乗らない高級車が住宅の一番良いところを占拠しているのです。こんなバカな話はないわけです。
では「あなたに車は本当に必要か?」と失礼ながらも質問をさせてもらえば都心に住んでいて若いなら絶対に必要ということはほぼないと思います。公共の交通機関があまりにも充実しているからです。事実、私は日本に年にほぼ4回ずつ34年も通っていますが、車を持ちたいと思ったことはありません。レンタカーもよくしましたが、最近は運転がかったるいので電車とかバスで十分。「コストコに買い物行かないの?」という奥方、そんなに大量に買わなくても小家族なら大丈夫です、と申し上げます。
私はそういう観点よりも将来、階段が昇れなくなった時のことを考えよ、と思うのです。よって1階がリビング、ダイニング、2階に昇る階段は可能ならば曲がりくねらず、ストレートな形状で設置するのがベターです。(将来階段昇降型のリフトをつけやすいのです。)また2階にもトイレを必ず作ること。廊下の一角を広めにとり、そこに簡易冷蔵庫を置けるようにすれば水を取りにいちいち下まで降りなくても大丈夫でしょう。
私がそれ以上に狭小住宅が好きではない理由は住宅街のイメージが壊れやすいのです。たとえば世田谷区の高級住宅街を想像してみてください。一軒100坪の住宅がずらり並んでいます。前面道路も広く、外車が似合う街並みです。そこに狭小住宅が突如現れたらどうです?近隣住民は嫌がるでしょう。兵庫県芦屋市の六麓荘町では最低建築可能敷地面積を400㎡と定めたのは景観や街のバランスを考えたうえでの決定ですが、それは芦屋に限らず、どこの街にも街並みというのがあるものなのです。それを都市計画上、考慮するのは市町村や近隣の役目であり、デベはなんでも建てられるという発想は許されるわけではないと思うのです。
日本は人口減、一方で高層マンションが林立し、居住可能面積は無限に増えている中、街並み維持を考えず、業者が儲け主義に走るのはいかがかと思います。また今後は一定の戸建てには緑地化義務もありだと思うのです。戸建て居住者には街並み維持の義務を負うぐらいの意気込みは必要でしょう。京都の街並みが美しいのは伝統を守る気持ちが強いからです。それは日本のどこでも同じだと思います。
戸建てとマンション、とかく言われるのが戸建ては維持管理に金がかかる、とされますが、そんなことはないと思います。直す時には一定のお金がかかりますが、そう頻繁にある訳ではないですし、マンションのように自分が必ずしも直接的便益を受けない管理や工事に対しても管理費、修繕積立金を経由して負担しているのに比べれば安いものだと思います。
こう書いておきながら最後に一言。子供の教育には地べたの住宅が良いと思います。湾岸高層マンションは私から見れば「ごめんなさい!」以外の何物でもないのであります。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2025年8月18日の記事より転載させていただきました。






