岸田元首相をお好きではない人がかなり多いことは知っておりますが、それでも在職日数1094日の長き期間でやり遂げたことはたくさんあります。その中で私は韓国との関係を劇的に改善させた点は高く評価しています。もちろん、これをお読みの方や保守系の方には「韓国など興味ない」「関係改善など望んでもない」という厳しいお言葉もあると思います。ただ、一時、極端に冷え込んだ日韓関係のままが良かったとも思わないのです。
東アジア外交に於いて日本が唯一タッグを組めるのは韓国しかない事実は否めないのです。日本の隣国という観点では中国、ロシア、北朝鮮、台湾、韓国、また、遠い海の向こうにアメリカやカナダがありますが、それは余りにも遠すぎます。その中で台湾は政治的に複雑で国として認知されていないため、政治的取り組みには困難が伴います。中国とは表面上の付き合いは出来ても戦略的パートナーにはなりません。もちろん、韓国ならよいのかと言えば他国であり、他の民族なのですから長短いろいろあるのも事実です。
ただ以前から申し上げているように日本や韓国はほぼ単一民族に対して多くの国は複数の民族を国内に抱え、民族間の問題も存在しています。民族とはそう簡単に交わらないと考えると日本と韓国が相思相愛になることもないわけでそこは割り切る必要があると思うのです。
ではなぜおまえはいつも日韓関係を大事にするのか、と言われると外から見てるからこそ見えやすいのですが、日本と韓国に似ている点はあるのです。産業構造も国民の意識も社会構造も国民性も似た点はあります。もちろん、細かい点を見て行けば全然違うじゃないか、という反論はあるでしょう。ただ、ここは大局的な観点で捉えるべきだと思います。
韓国の李在明大統領が就任後G7会議を別として訪問したのが日本が最初となりました。李氏は反日姿勢が強いとされ、就任前から尹錫悦前大統領が作り上げた日韓関係が大きく方向転換されるのではないか、と懸念する声が多かったのは事実です。また「共に民主党」出身で革新政党であるため、日本との関係は昔からあまりスムーズではなかったとされる中で李氏は石破首相と2008年以来となる「共同プレスリリース」なるものを発表、内容はかなり実務的なものがちりばめられており、シャトル外交復活やワーホリの拡充、また両国のコミュニケーションの強化や協力体制の構築などが盛り込まれています。

李在明(イ・ジェミョン)大統領と石破首相 日韓首脳会談 首相官邸HPより
メディアのトーンは割と淡泊な感じがします。想像ですが、やり玉にあげようがない内容ということなのでしょう。「石破氏の外交手腕は?」とか、党内外で揺れる信任の問題がある中、アフリカ会議を含め、無難にこなしたという気がします。
とすれば「石破おろし」を画策するグループにとってはあまり好都合ではないのかもしれません。どこかのメディアに「党内方針の決定が長引けば長引くほど石破氏が有利になる」と書いてあった記憶がありますが、まさに着実にポイントゲットをしているように感じます。世論調査でも支持率回復の方向にあり、反石破グループはやりにくくなってきています。
本題の日韓関係ですが、地球全体を俯瞰する中で思うのは誰と誰がどのような関係か、下心満載で「長年のお友達」とか地政学的な関係というよりフェイスブックの「いいね的関係」、つまり事象、案件ごとにこれはこの国と仲良くし、これはこちらの国と仲良くするとった個別案件主義が垣間見えています。現代社会の特徴とも言えますが、個別の善し悪しに囚われると最後、見渡すと友達がいなかったという孤立に繋がる可能性はあると思います。
故に日韓関係は岸田路線を引き継ぐことでよいのだと思います。もっと言えば安倍路線である未来志向をきっちり進めていき、世代間を通じて安定的にしていくことが求められると考えています。もちろん、抱えている両国間の問題はまだ山積しているはずですが、それに対して「言うべきは言う」という姿勢を貫きながらも解決策を時間をかけてでも探っていくしかないのでしょう。
今の日米関係を見ると「いじめられてもアメリカ大好き」ではマゾのようでもありますが、それでも日米関係を見直そうという動きにならないのは長年築いた不動の関係がそうさせるのでしょう。ならば日韓関係は少なくとも政治家たちが必死になって過去の「難しい問題」に立ち向かいながらもここまで到達したのだという評価はしても良いと思います。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2025年8月25日の記事より転載させていただきました。






