ひろが最近仕事で戦ったこと:日本と北米のトップのあり方の違い

零細企業における経営判断は概ねオーナーによる単独の判断がほとんどだと思います。時折、個人経営者の方と名刺を交わすと肩書にCEOとついている方をお見掛けします。私は声にこそ出しませんが、「あなた、CEOの意味は知っている?」と聞きたくなります。またカナダなのに「代表取締役」と日本語の肩書がついている方もいますが、「代表権」は日本の法律であり、カナダは関係ないのになぁ、と思うこともあります。

さてその個人事業主や小規模企業の多くは取締役会がある訳ではないし、人事や報酬を決める委員会がある訳でもありません。創業者社長が一人で物事を判断するケースが多いでしょう。

そういう意味では私もそうですし、北米は特にトップの判断が会社経営において極めて意味あることなので率先して旗振りをしなくてはいけません。日本の経営者は概ね、下から上がってきたことに対して取締役会で議論することがいまだ多いと思います。北米では社長の陣頭指揮とその辣腕ぶりが評価対象になります。そこは大きな違いとも言えます。

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私は手持ち事業が多い上に次のステップへの調査研究というプラスアルファが入っている状態で極端な話、30分ごとに違うビジネスをしています。大手企業ですとそれぞれの部門長に任せられるのですが、残念ながら私の会社ではすべてがそこまで育っていないので社長自らハンズオンで仕事をしています。

お前は手持ちプロジェクトが一段落したはずだが、今、何をやっているのか、と思う方もいるかもしれません。私もカラダ一つでずいぶん事業を広げてきた中でそれぞれの事業の実務や修正作業、改善を行うだけでも結構なボリュームがあります。ひろが最近戦ったこと、いくつかご紹介しましょう。

カナダで展開する書籍事業は書店小売り販売、教科書卸、図書館卸、日本向けギフト販売などいくつかの柱が立っており、それぞれの柱を太くすることに注力しています。例えば教科書卸ですとカナダの大学向け教科書卸は7割程度の市場占有率だと思います。営業活動はずっと続けていますが、過去5年間どうしても口説けなかった大型大学があり、私は20回はアプローチしたと思います。今般、風向きが変わったのです。そして遂にこの大学が陥落しました。感無量です。諦めない、これが大事なのです。

私の高校時代のクラスメートがカナダで雑貨販売しないか、と持ち込んだ案件。ある薬剤をかけると花が咲くというノベルティグッズで一目見てこれはカナダで売れると即答。英語版の説明書をつけたりパッケージを変えてたりとクラスメートも奮闘、私は輸出許可取得の際、「薬剤」が引っ掛かり、検査証明を出したりしてどうにかクリア、現在は数週間後に入荷するその商品の販促を戦略を練っています。正直、この売り上げは100万円にもなりません。ですが、何事も小さな芽から育てる喜びの気持ちが大事だと思います。

マリーナ事業ではある客がボートを売却。その空きスポットを巡り、既存の客がそこに移動することになり、今度その空きスペースに別の顧客、そしてそのまた空きスペースに新規の客が入るというチェーンリンク取引事例がありました。難しいのは同じ日に4人の顧客が同時に動く必要があり、これはなかなか面倒なものです。一人ひとりに説明をして完璧を記した計画を立てねばなりません。そのうちの一人の客が文句を言い出したのですが、「こんな4連のチェーンの取引を短時間にアレンジするのは至難の業なのだからグズグズ言わずに協力してほしい」と懇願したところ、「お前には負けたよ」と賛同いただいたのは期限の前日の夜9時半。粘りと熱意なのだと思います。

高齢者向けグループホームの別棟集会場にキッチンを作るプロジェクト。本体工事の際に工期遅延があり、本体工事の完成を急いだため、別棟の工事が中途半端な状態でこの1年、少しずつ作業を進めてきたのですが、いよいよ大詰めの作業でした。その工事代、本体工事を請け負った会社に見積もりを取ると240万円。私は直感的に「論外に高い」と判断し、街中のキッチンキャビネット屋を当たります。幸いにして中華系の会社ととんとん拍子に話が進み、工事代金は60万円で交渉成立。さて、出来栄えはどうかと心配したのですが、なかなかきちんとした仕事でかなり手間暇もかけてくれた割に良いディールだったのはありがたかったです。私もいろいろな仕事をハンズオンでやってきているので「直感的な金額の妥当性」は割と当たるのです。その改善努力をすれば1/4になったのはほぼ騙しあいのような世界でどう生き抜くかという戦いでもあったと思います。

日本の賃貸住宅事業では久々に空き室を埋めるのに苦労しました。2部屋空くので、主に外国人向けに広告を入れると制御不能なほど問い合わせが来ます。ところがやり取りしているうちに「交渉中止」になるケースが続出で全然決まらなくなったのです。そういう時もあると思い聞かせながらもかなりイラついていました。というのは募集広告を出せばいくらでも問い合わせはあるのでそのやり取りや審査で忙殺されるのです。これは私がいくら好きでやっているとはいえ、なかなかしんどい状況でした。今回日本に来る前に入居者を確実に決める、と目標を立てて「この客は絶対に逃がすな」といつもよりギアを3段ぐらい上げて対処したら2件とも渡航前日までに決まりました。目標設定の重要さを改めて感じた次第です。

どれも小さいことの積み重ねです。しかし、零細企業に求められるのは高いレベルの熱意とあきらめない気持ちと切磋琢磨、これが全ての基本だと思っています。

私としては次の事業のステップに入りたいと思っていますが、時の風が吹かないので今は自分の立ち位置を守りに変えています。そしてそれらが実り、手持ち事業が充実した頃には風は必ず吹くので攻めに転じようと思っています。仕事も同じトーンではできません。ただ、手抜きはせず、その日その時に求められたことをきっちりこなすという姿勢だけは貫いています。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2025年9月21日の記事より転載させていただきました。

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会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。