郵便局がなくなる日

郵便局がなくなる日が来ることを想像できますか?日常生活において多くの通信は電子化に切り替わり、郵便で必ずしも受け取らねばならない内容物は確かに減っています。日本に行くといつも会社関係の郵便物を数か月分、チェックするのですが、正直、ほとんどが絶対不可欠とは思えないものです。

日本郵政HPより

100の郵便があるとすれば7割から8割は水道、ガスといった公共料金のお知らせ郵便。特に私の場合、賃貸事業が主力なので契約件数が多いこともあるのでしょう。東京電力の郵便は来なくなったのですが、東京ガスはネットで登録、チェックできるにもかかわらず、いまだに郵便物がきます。水道に至っては2か月に一度の支払いにもかかわらず、もうやめてくれ、というほど検針や料金のお知らせがきます。

銀行やその他の自動引き落としサービスからの郵便も私にはうざいです。多分、監督官庁から郵便物で送れという指示があるのでしょう。カナダではそんな手間暇はかけません。

それ以外はほぼ全部ダイレクトメールで開けもせずにゴミ箱行きです。ダイレクトメールはかなり立派な封筒、分厚い内容もありますが、送るほうも効果があると思っているのでしょう。ご苦労なことです。

とはいえ、日本は暑中見舞い、年賀状という独特の習慣があるため、郵便が無くなると困る、という人がほとんどだと思います。インターネットがない方も多いわけで、何でも電子化だから郵便局はいらない、とは口が裂けても言いません。ただ、その巨大な郵便インフラに対して需要の落ち込み分を補えない、これが現実であります。

ここカナダ。昨年11月に郵便局がひと月以上ストライキを行い、クリスマスカードも配達されず、大ひんしゅくを買いました。多くの企業はストライキ突入前に郵便を使わないよう呼びかけました。特に小切手による支払いをされている方々は支払ったと思っても郵便が届かないから支払いが実行されず、未払い扱いになるトラブルが続出しました。私どももE-Transfer、EFTなどに切り替えるようお願いした結果、それ以降、小切手払いは本当に少なくなりました。つまり郵便局がストライキをすればするほど企業や個人は「郵便局がなくても困らない対策を練る」わけです。

ところが懲りないカナダ郵便が突然、またストライキをおっぱじめたのです。数か月前から「またやるぞ」」という下地はあったのですが、カナダ政府が郵便事業の大改革案を提示したことにむくれ、ほぼ突如、ストライキに入りました。政府の大改革のポイントは戸別配達を止めてコミュニティメールボックスに自分で取りに行くという案です。これは既に実施されており、その強化プランであります。また緊急性の度合いの応じて郵便は航空便から陸送に変えるというものです。具体的にはたぶん、価格差をつけるのでしょう。国土の広いカナダらしい選択肢です。

こうなると国民も企業も怒りを通り越して自己防衛策をひたすら考えるしかないのです。もはやニュースにもならないのです。つまり郵便局はないものと思え、であります。

世界を見渡せばどの国も郵便事業は細くなってきているのが現状です。理由は電子化が進んだことが大きいでしょう。日本郵便も赤字が続き、その対策案がない中で点呼などのトラブルが相次ぎ、日本郵便が持つトラックの営業免許を取り消されてしまいました。泣きっ面に蜂とはこのことでしょう。日本の場合は人口減、更には年賀状などの利用数も減少の一途を辿っていることから改革は困難を極めると見ています。

日本郵便は提携したヤマト運輸との協業も暗礁に乗り上げていますが、思うに郵便事業という高い公共性に対して利益追求型で効率を重視をする民間企業とは経営スタンスがかけ離れているのでしょう。日本の郵便は110円からとなっていますが、この価格そのものが物価高や物流問題、2024年のトラック問題などを乗り越えられなくなったということかと思います。

カナダでも日本でも同様ですが、フェデックスのような民間の宅配業者は何が正当な料金だかさっぱりわからないというのが現実です。ネット上では5割、6割引きを謳っていますが、フェデックスが必要なサービスは今回一度限りというケースが多いのではないでしょうか?私どもはカナダで書籍などの宅配がある関係で業者レートをもらっていますが、たぶん、一般レートより8割以上安いかと思います。これを見て通常価格がいくらなのか、さっぱりわからないともいえます。

ところで数か月前、事務所を引っ越した時、郵便物の転送サービスの申請に郵便局に行き、手続きをして、お金も払ったところ、コンピューター画面に「この住所での転送サービスは出来ません」と。郵便局の人も理由がわからず、調べてくれたところ、転送元である入居していたシェアオフィスで配達先不明郵便が大量に発生し、転送サービスも多いことから郵便局が転送サービスの提供を止めたことが判明しました。

言われてみればなるほどと思います。シェアオフィスには30以上の会社が入居し、事務所がない人のための住所貸しビジネスや郵便物受け取りサービスも提供していたのです。多分、シェアオフィス側は何も知らないうちに郵便局からサービス拒絶を受けていたのでしょう。私どもも転送サービスが受けられなかったので「過去の郵便、さようなら」であります。にもかかわらず、現状、何一つ、困っていないというのはこれまた郵便局にとって頭痛の種であるとも言えそうです。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2025年10月3日の記事より転載させていただきました。

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会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。