あなたが生命保険に入るべき理由。(中嶋 よしふみ)

保険に入るやつはバカ。

そんな話を目にすることは多い。SNSでもFPの書いたネットの記事でも、ほぼそんな風潮、そんな論調だ。

しかし、これは間違っている。

あなたが生命保険に加入すべき唯一にして最大の理由は『残された家族の生活水準を維持するため』である。

人が亡くなった場合、公的保障として遺族年金がある。

住宅ローンを組んでいる人ならば団体信用生命保険(団信)といって、強制的に保険に加入する仕組みもある。

パートナーの収入もある。

そして生活保護もある。

少くとも日本で飢え死にを心配する必要はない。したがって、生きているうちにわざわざお金を払って保険に入らなくても良い、という考え方は必ずしも間違っていない。ネットの声やFPの記事は概ねそのあたりがベースとなっている。

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家族の生活水準は誰が判断するか?

しかし、生命保険の要不用を判断するのはあなたではない。生命保険は保険料を払うのはあなただが、保険金を受け取るのはパートナーや子供、つまりあなたではないからだ。

そして生命保険がなければ生活水準を維持することは難しいケースがほとんどだ。それは筆者が普段からアドバイスをしているような、パワーカップルと呼ばれる共働きで高額な収入を得て、都内にタワーマンションを買えるような夫婦であってもだ。むしろパートナーの収入が高いほど生活水準の維持は一人では不可能となる。

それでも保険なんて要らない、生活水準なんて下がっても良い、脅して保険に入らせるつもりか? 節約して暮らせば保険金なんてなくても生きていける、という人も要るだろう。

それはそれで否定しないが、それを決めるのはあなたではなくパートナーです、パートナーの意見を聞きましたか?ということになる。

自身に万が一のことがあった際に金銭的な影響を受ける人がいるのならば、まずは検討が必要だ。

その際には要不用という白黒ではなく、保険金はいくら必要か?というグラデーションで判断する必要がある。筆者のようなFPはここでアドバイスをする。そして加入が必要となれば保険会社や代理店で加入すればいい。

筆者が言うとポジショントークになってしまうが売り手とアドバイザーは分けて使うのが鉄則だ。売り手のお勧めはアドバイスなのかセールストークなのか判断がつかないからだ。

貯金は三角、保険は四角

インターネット上には「保険に入るやつはバカだ」という意見は多い。しかし実際にお金の相談をする人で、家族のことを考えずに「保険は不要」と断言する人はまずいない。

要らないという意見はよく聞く、FPでもそう言う人はいる、でも万が一の時は心配、でもパートナーにもある程度収入はあるし公的な保障もあるし、結局どうすればいいのか?

このようにアレコレと考えて答えが出ずに相談をしてくる人は多い。というかそういう人がほぼ100%だ。

そんな人に伝えているのが、生活水準から判断すべき、パートナーが亡くなった後にどんな生活を送りたいですか?というアドバイスだ。

昔から保険の世界では「貯金は三角、保険は四角」という言葉がある。貯金は右肩上がりに少しずつ増えていく三角形の形になるが◢、保険は加入した時点で満期になるまで一定かつ多額の保険金を貰える、つまりは四角形だ■。

これは貯金があれは保険は要らないという断りの文句を潰すセールストークだが、本質的に正しい。貯金と保険はまったく性質が異なるからだ。

パートナーの死亡後に生活水準が上がるような保険金はさすがにやり過ぎだとは思うが(実際はそれも保険金を受け取る人が決めれば良い)、生活水準の維持を目的にするとゼロで良いケースはほとんどない。

なお、保険に加入する際は、トラブルが多いと報じられている金融機関や保険代理店は避けるべき、とアドバイスをしておきたい。これはググれば出てくる。保険会社も代理店もいくらでもありますから、という事になる。

保険を売らないFPが保険をお勧めする理由。

保険の営業マンがYahoo!ニュースにステマ記事を書くんじゃねぇよ!と思った人には申し訳ないが、筆者は保険を売らないFPとして活動している。

どうせこっそり裏で紹介してキックバックを貰ってるんだろ?と誤解されることもあるが、そう思われないように金融機関に関わる仕事はセミナーや執筆なども含めてすべて断っている。幸い日経新聞でも保険を売らないFPとして紹介されて「お墨付き」を貰っている。

金融機関から手数料もらわず 顧客本位の「中立」FP 経営苦しくても真摯に助言 – 日本経済新聞

金融機関から手数料もらわず 顧客本位の「中立」FP 経営苦しくても真摯に助言 - 日本経済新聞
資産運用や保険選びなどの助言をしてくれるファイナンシャルプランナー(FP)。銀行・証券・保険会社などの社員でない独立系FPでも、実は証券会社の商品仲介や保険会社の代理店をしてコミッション(手数料)を得ていることが多い。「それでは中立的な助言はできない」と考え、金融機関と契約せず顧客からの相談料(フィー)だけで頑張るFP...

むしろ筆者はSNSで「保険を売らないFPじゃなくて保険を売れないFPだろwww」「保険を売ってもいないやつが偉そうに保険を語るんじゃねーよwww」などと保険代理店の営業マンからクソリプを受けることも珍しくない(金融機関はSNSの利用に極めて厳しいためこんなことは絶対に書けない)。

じゃあなんで保険を売らないFPが保険の加入をお勧めするのか?と聞かれることもあるが、保険を否定するのがFPの仕事じゃありません、快適な人生を送るためのアドバイザーがFPですから、という事になる。

これはFPですら勘違いをしてる人が多いので声を大にして言っておきたい。

中嶋 よしふみ  FP シェアーズカフェ・オンライン編集長
保険を売らず有料相談を提供するFP。共働きの夫婦向けに住宅を中心として保険・投資・家計・年金までトータルでプライベートレッスンを提供中。「損得よりリスクと資金繰り」がモットー。東洋経済・プレジデント・ITmediaビジネスオンライン・日経DUAL等多数のメディアで連載、執筆。新聞/雑誌/テレビ/ラジオ等に出演、取材協力多数。士業・専門家が集うウェブメディア、シェアーズカフェ・オンラインの編集長、ビジネスライティング勉強会の講師を務める。著書に「住宅ローンのしあわせな借り方、返し方(日経BP)」
公式サイト https://sharescafe.com
Twitter https://twitter.com/valuefp

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編集部より:この記事は「シェアーズカフェ・オンライン」2025年9月30日のエントリーより転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はシェアーズカフェ・オンラインをご覧ください。