「横並び好き」な日本人の投資行動がもたらすもの

投資家の集まりで話をしていると「他の人はどんな投資をしていますか?」とか「今、不動産を買っているのはどんな人たちですか」といった質問を受けます。他の人の動向を聞いて自分の投資の参考にしようとしているのかもしれませんが、これは投資判断の参考にしてはいけない情報です。

特に日本人は周りの人が何をしているかを気にする傾向が強いと思いますが、他の人の真似をして追随しても後追い投資になってしまいは良い結果が出ないことが多いからです。

日銀が発表している資金循環の日米欧比較によれば、日本の個人投資家が保有する約2200兆円の金融資産の51%は現預金に滞留しています。

しかし、インフレ率の上昇と日本円に対する不安から海外株式に投資するインデックスファンドへの資金流入が始まっています。

日本経済新聞社が読者約1900人を対象にしたアンケート調査では約3割の回答者が3年前に比べ新規投資額を2倍以上にしたという結果が出ています(図表も同紙から)。これは昨年から導入された新しいNISAをきっかけに現預金を取り崩して投資する人が増えてきたことを示しています。

先月末にはeMAXIS Slim 米国株式(S&P500)の残高が8.5兆円を超え、eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)<愛称:オルカン>も残高は7.5兆円を超えています。さらにeMAXIS Slim 先進国株式インデックス(除く日本)も残高1兆円を突破し、この3本だけで17兆円を超え年内に20兆円に到達する可能性も出てきています。

20兆円は2,200兆円に対してわずか1%ほどの金額に過ぎません。しかし、日本人は横並びが好きな民族です。

既に動き始めているアーリーアダプターの投資の成功に触発されて、多くの日本人が預貯金・現金から投資商品に資金シフトを始めれば、株式市場の需給は改善し、外貨への資金の流れを加速する原因になります。

「横並び好き」な日本人のこのような投資行動が株価上昇と円安をもたらし、それがさらに資金を呼び込む呼び水となってスパイラル的なマーケット変動をもたらす。そんな可能性も今のうちに想定しておくべき。アンケート調査の結果を見てそう思いました。

O2O Creative/iStock


編集部より:この記事は「内藤忍の公式ブログ」2025年10月16日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

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資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。