21日、臨時国会の開会にあわせて、自民党と日本維新の会が正式に連立政権の樹立で合意した。これにより、維新が掲げてきた「飲食料品の消費税を2年間免税にする」案が実現に向けて動き出す可能性が出てきた。しかし、この政策には経済学的にも財政的にも多くの問題が指摘されている。
- 自民(196議席)と維新(35議席)の連立により、計234議席で衆院過半数(233議席)を上回った。高市政権の成立と同時に、維新の政策課題も与党協議の俎上に載ることになった。
- 維新は「物価高対策」として、飲食料品の消費税を2年間ゼロにする方針を掲げているが、これは国民民主党が以前主張し、後に撤回した政策の焼き直しに近い。
- 「身を切る改革」を掲げる維新が、財政赤字を拡大する減税策を持ち出すのは矛盾しており、むしろ政策の整合性を欠く。
- 食品の消費税をゼロにすれば、一時的に可処分所得は増えるが、保存のきく穀類や飲料などの買い占めが起こり、需給バランスが崩れてインフレが激化するおそれがある。特に「来年4月からゼロ税率」と決めれば、その前後に駆け込み需要が殺到し、穀物価格は20%近く上昇しかねない。
- 欧州諸国では、物価高騰時に食品税率を引き下げた例があるが、インフレ抑制効果はほとんどなく、むしろ物価の上昇を助長したことが経験的に知られている。したがって「インフレ対策としての減税」は経済理論にも実績にも反している。
- 高市総裁はもともと「一時的な減税よりも持続的な所得向上が重要」との立場を取っており、維新案を受け入れず、修正する可能性もある。
- 経済学的に見れば、食品消費税ゼロの所得再分配効果は小さい。高所得層ほど支出額が多く、恩恵も大きくなるため、結果として格差縮小効果は限定的で、むしろ財政負担とインフレを拡大させる副作用のほうが大きい。
- こうした政策が繰り返し浮上する背景には、短期的な人気取りに走る政治風土がある。政治家だけでなく、それを支持する有権者の経済学的なリテラシーにも課題がある。
維新が掲げる「飲食料品の2年間消費税ゼロ」は、一見すると庶民思いの物価対策に見えるが、実際にはインフレを悪化させ、財政赤字を拡大する危険な政策である。高市政権は維新との連立を維持しつつも、この政策をどのように修正・抑制するかが問われる。結論として、先行事例から見ても、食品消費税ゼロは再分配効果が乏しく、弊害のほうがはるかに大きいといえる。

連立に合意した自民・維新 吉村代表と高市総裁






