ニデックが特別注意銘柄に指定されたことに衝撃を感じています。私は株主ではありません。ただ、同社の創業者である永守重信氏が日本の三大創業者の一人(あとは孫正義氏、柳井正氏)として認識されてきた中で、永守氏が後任にようやく託し始めたとたんにこうも簡単に崩れ落ちるのか、という驚きなのであります。

https://www.nidec.com/jp/
何が起きたか、表層の問題点はともかく、その原因を含めた様々な調査が行われるのでいづれ明らかになると思いますが、個人的な想像では創業者が非常に厳しい経営姿勢だった故に社内でつじつま合わせをせざるを得なくなったのではないかと思います。その点では過去日本で数々の不正検査があったり、ビッグモーター事件などがありましたが、その類と同類ではないかとみています。
会社ぐるみというより結果として知らぬ間にあちらこちらで亀裂が入っており、それがある時、発覚し、調べれば調べるほど不適切なものが出てくるのだと思います。
これを日本の経営文化という枠組みで考えてみたいと思います。
以前、同様問題でトヨタがやり玉に挙がったことがあります。その時の私の印象は「社内風通しの悪さ」でありました。その点はこのブログでも指摘したと記憶しています。トヨタは自動車業界の王様であり、その帝国の下で仕える者は有無を言わさぬ強制力があるし、また無数の傘下の企業の中で自分たちだけができないとは音を上げられず、仮にギブアップすればとてつもない迷惑が全社的に広がり、それは社内のさらし者になるという空気はあったのだと思います。ではこのような空気が同事件を機にトヨタから無くなったかといえば私はまだわからないとみています。
日本的経営文化の良さと表裏一体である悪さとは組織の活用のしかたにあると考えています。ある小さな社内目標(ハードル)がクリアできない場合、それが仮に一人の担当者に課せられた場合、組織上、垂直関係にある上司がその対策を考える必要があります。ところが日本の場合、小組織(アメーバー的組織)が密接に連結した形で全体が動くため、小組織内のチームリーダーを中心とした小組織内の水平関係(=身内関係)の中で時としてガン細胞が生じることがあるのです。このガンが転移することもあるし、早い時期に発見され、根治されることもある訳です。
ニデックのガンはたぶん、数年前からあったものだろうと察しています。それが今になってわかったものの既にステージは3とか4になっていたのです。特に不適切会計の場合、製品の不正と違い、若干の修正の猶予があったはずなのです。ところが経理処理において過去に遡っての修正は恥そのものであり、経理担当者としては致命的とも言えるものです。これを嫌って隠したのかもしれません。
永守氏としては青天の霹靂かもしれないし、うすうす感づいていたのか、そこはわかりません。が、一概に厳しい創業者へのブーメランだと責めるわけにもいかない気がするのです。
それは経営者は大なり小なり皆さん癖が強いのです。特に創業者となれば我儘に近いことすらあります。ただ、その会社が世界を代表するレベルまでのし上がったのは事実であり、経営者の手腕を否定するものでもないのです。ではトヨタで不正問題があった時、豊田章男氏を否定し、トヨタを否定したかといえばそうではなかったと思います。
ニデックの今回の問題は個人的には修復可能だとみています。イタリアの問題は根が深いものとは思えず、中国問題の解決の方に注力すれば早期の復活になるとは思います。
ところで親分が去った後、会社はどうなるのでしょうか?ウォレン バフェット氏の退任が近いバークシャーハサウェイ社の株式を売り推奨にしたアナリストがいました。わかる気がします。カリスマ度が高ければ高いほど会社の末端神経にまでその精神が行き届くと同時に時として神聖化すらすることがあるのです。私が勤めていたゼネコンのトップもある意味、神聖化されたがゆえに倒産の憂き目となりました。逆回転し始めると恐ろしい勢いで回るのです。アマゾンだってジェフ ベゾス氏が抜けてから大きな成長をしている認識はないですよね。もちろん、マイクロソフト社のようにうまく引き継がれるケースもあります。そこはケースバイケースですが、偉大なる経営者が君臨した会社ほどその引継ぎは加速度的に困難になるとも言えます。
叩けば必ずホコリが出ると思う輩もいるし、ここぞとばかりに悪さをたくらむ輩もいるでしょう。創業者は創業するときが一番楽しく、抜ける時が真の意味で生みの親としての苦しみを味合うのかもしれません。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2025年10月30日の記事より転載させていただきました。






