「趣味がない人」が急増した理由

黒坂岳央です。

現代人は無趣味の人間が急増した。

株式会社アスマークの調査によると、わずか7年間(2014年→2021年)で「趣味はない」と回答した男性は驚くべきことに約4倍強に急増している。この無趣味化の進行は、単に個人的な肌感覚だけではない、定量的な事実として目の前にあるのだ。

なぜ趣味を持たない人が増加したのか?その理由を独断と偏見で考察したい。

maroke/iStock

1.「趣味」という意識が消えた

かつて「趣味」とは、特定の道具、場所、時間、そしてコミュニティを必要とする独立した活動であった。しかし、現代において、これらはすべてスマホとして集約され、「総合デジタルエンタメ」として内包された。

たとえば昔は読書は書店で本や漫画を買い、部屋で読んでいた。映画を見たければビデオをレンタルするか、映画館へ足を運んでいた。写真ならカメラを買って、撮影に出かけていた。

ところが、今はスマホで読書、漫画、アニメ、映画、写真、動画、何でも事足りる。しかもポケットの中にあるデバイスを取り出して瞬間的に消化できるのだ。

これにより、消費する側は膨大な時間をこれらの活動に費やしているにもかかわらず、手軽さゆえに「明確な趣味」として分類できず、「趣味がない」と認識してしまう傾向が強まったと考えられる。

2. 忍耐力の低下

どんな趣味にもエネルギーが必要である。

先日、髪を切りに行った時に店長さんから「夜中3時に起きて釣りに出かけた」という話を興味深く聞いた。非常に熱量が高く、よほどの釣り好きでなければとてもそこまでパワーを出せないと感じた。趣味を楽しむ人には、こうしたある種の爆発的エネルギーを必要とするのだ。

ところが現代人の多くは無気力と感じる人も増えた気がしている。この「爆発的エネルギー」が失われた原因の一つは、スマートフォンから得られる即時的な快感に慣れ、脳が常にドーパミンを放出する状態にあることだと考える。

スマホ消費には予習、復習、忍耐力、エネルギー、計画性は要らない。どんなものぐさでも瞬間的にドーパミンを出せてしまう。

ところが、このようにインスタントにドーパミンを出し続けていると、大きな目標に向かって努力を積み重ねたり、忍耐力を発揮する動機がどんどんなくなる。そんなことをしなくても、スマホ1つで手軽に気持ちよくなれるからだ。

現代人からやる気を奪っているのはスマホで間違いないのだが、スマホは趣味も奪い取っているのだ。

3. 「意味」を求める価値観

現代人は何かとコスパ、タイパ至上主義が増えたと思っている。これは裏を返せば、「経済的メリットが薄いことは何もしたくない」という態度とも言える。

ところが趣味というのは本来、経済的なリターンや具体的なスキルアップを目的としない活動である。メリットを求めるようになったら、それは趣味ではなく仕事である。

多くの人々が「この時間を使って、何が得られるのか?」という問いを持つようになったことで、経済的なリターンやメリットがない趣味は「優先度が低い」と判断されやすく、純粋に楽しむだけの趣味は「無駄な時間」として切り捨てられやすくなってしまったのだろう。

余剰資金で好きなものを散財する代わりに、インデックス投資に全力投資し、余暇時間はお金のかからない暇つぶしをするようになれば、趣味も消滅するだろう。

令和こそ趣味を取り戻す価値が高い

筆者が大事にしている本質の1つは「大衆の真逆にチャンスあり」だ。それは趣味における考え方にも当てはまると思っている。

かつて、趣味にハマる人はどこかカッコいいように見られていた時期があった。「この分野ならあの人に聞け」みたいな感じで、オタクと言うよりギークというニュアンスが強かったと記憶している。

だが現代は「カメラやゲームなんてやってもお金は増えない無駄な行為」といったように、趣味はどことなく下に見る人も増えたと思う。

しかし、だからこそチャンスなのだ。今は夢中になって何かを極めることは大きなリターンがある。YouTube投稿を趣味の爆発場にしていたら、ヒットして企業案件で仕事になった人もいるし、たくさんのチャンネル登録者を獲得した人もいる。

誰もが無気力、やりたいことがない人で溢れているからこそ、夢中になって一見散財に思えるような活動にのめり込んでいる人が魅力的なのだ。

やっぱり趣味が人をつなぐ

筆者は多趣味なのだが、人とのつながりの起点は仕事、そして趣味だと思っている。

たとえば筆者はファミコンからPS5まで歴代のゲーム機を総なめにしたゲーム好きなのだが、ゲーマーの人との会話はものすごく楽しい。

また、英語を含めた外国語学習に興味関心があるので、英語というテーマについての話は何歳になっても盛り上がる。

パソコンのキーボードは万年筆にハマる人のように何台も持っており、日替わりで打鍵の違いを楽しんでいる。キーボードマニア同士の話は楽しい。

今は育児を何よりもコミットしているのだが、保護者同士で一番盛り上がる話題が「それぞれの家庭の子育て事情」だ。その人の価値観、考え方が反映されているし、育児の葛藤や悩みの共感などで面白い。

何歳になっても、趣味は人とのつながりを作ってくれると思っている。だが、趣味はある日決意していきなりハマることなど出来ない。だから今、何かしらハマっているものがあるならそれは大事にしたほうがいいと思うのだ。

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なめてくるバカを黙らせる技術」(著:黒坂岳央)

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働き方・キャリア・AI時代の生き方を語る著者・解説者
著書4冊/英語系YouTuber登録者5万人。TBS『THE TIME』など各種メディアで、働き方・キャリア戦略・英語学習・AI時代の社会変化を分かりやすく解説。