クレカでマウントを取る「昭和の発想」

黒坂岳央です。

SNS上で、アメックスセンチュリオンカードやラグジュアリーカードを誇示し、経済力をアピールする投稿が散見される。彼らは、高額な年会費を支払う「選ばれし者」であるかのように振る舞うが、現代の価値観ではステータスではなく、むしろ心の問題を映し出すように思える。

問題は高級カードの保有そのものではなく、それを不特定多数に見せびらかす「承認欲求」と、時代に取り残された「古い感覚」にあると考える。

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高級カードは単なる選択肢

まず留意いただきたいのは、筆者が高級クレジットカード自体を頭ごなしに否定すべきではないという点である。

筆者自身、長らく無料の楽天カードを利用してきたが、最近になってホテル宿泊特典やマイル獲得を目的として、有料カードを複数枚保有するようになった。

年会費が高いとされるカードでも、海外やレストラン、ホテルを頻繁に利用するビジネスパーソンにとっては、その特典が年会費を相殺する「合理的アイテム」となる。

これはお金を出せば契約できるサービスの一つであり、本来、人に見せびらかすようなものではない。一部のカードを除けば、少し年収が高いサラリーマンで十分支払える金額である。

実際に筆者がサラリーマンの頃、課長がプラチナカードを飲み屋で出していた。おそらく、特典を求めてのものであろう(彼は周囲に見せびらかすようなことはしていない)。

「今、このクレカはこのキャンペーンをやっているので上手に使えばお得」というノウハウの共有としての投稿ならわかる。だが、お金を出して得られるものを誇る心理は、本質的な経済力のPRとしては機能しないだろう。

マウントは自信がない人がやること

高級カードの誇示行為は、経済的な優位性を示すというより、「他人から承認してほしい」という内面の渇望を映し出していると捉えるのが自然である。

メルカリには普通のカードをセンチュリオンに見せかける「カモフラージュカバー」も販売されており、承認欲求の強さを示す具体的な例である。他者の評価によって自身の価値を測ろうとする姿勢は、特に現代の若者世代には共感されにくい。

現代では、若い頃から積立や投資を継続し、数十年かければ高齢者になる前の段階で一億円の資産を形成できることが現実的に確立されたコンセンサスとなっている。高級クレカを保持することはそれよりも難易度は圧倒的にやさしい。

「時間をかければ難しくないこと」を誇示されても、令和の現代人は冷めた目で見るか、あるいは「それしか誇るものがないのか」と評価を下げる傾向にある。特に中高年が「持っているもの」で自慢するのは、内面の自信のなさとして映りがちである。

カードはただの道具であり、それを誇示する行為は本質からズレていると思うのだ。

クレカ自慢にメリットなし

そして、高級カードを不特定多数に見せびらかす行為は、評判が悪くなるどころか、実生活における無用なリスクを招く。

近年、SNS上で金品を誇示する投稿が、強盗や窃盗の標的となるケースが増加している。自身の経済状況を不用意に公開することは、犯罪のリスクに自ら晒す行為に他ならない。カードの優待といった実益もないのに、自身の安全性を低下させる行為は、合理的な判断とは言えない。

周囲に良い印象を与えず、虚しい承認欲求を満たすだけで、安全面のリスクを高めるというデメリットを考えれば、何のためにやっているかわからないだろう。

現代のステータスはカードより「影響力」

令和の現代、ステータスは高級クレカではなく、影響力ではないだろうか。

具体例としてYouTubeのチャンネル登録者数やSNSのフォロワー数といった影響力は、お金で買えるものではない。また、SNS以外でも真剣に仕事に打ち込んでいたり、社会を良くする活動に奔走する姿は人の心を打つ。

これこそが「内面の魅力」であり、多くの人から認められていることの証明である。

実際、若い世代に受けるのは高級クレカより影響力や仕事である。そして中高年で大きな影響力を持っているなら、それは内面的な魅力も両立していることを意味し、人々は称賛する。年を取るほど、目指すべきはクレカではなくやはり中身ではないだろうか。

長い期間、人生を生きた人が「お金を出して買えるもの」で自慢する姿は虚しく映る。これからの時代、リスペクトを集めるのは、合理的な選択の先にある「内面の豊かさ」と「影響力」なのである。

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なめてくるバカを黙らせる技術」(著:黒坂岳央)

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働き方・キャリア・AI時代の生き方を語る著者・解説者
著書4冊/英語系YouTuber登録者5万人。TBS『THE TIME』など各種メディアで、働き方・キャリア戦略・英語学習・AI時代の社会変化を分かりやすく解説。