大企業の従業員と家族が加入する健康保険組合が、後期高齢者医療への「強制仕送り」で追い詰められている。いまや拠出金は年間10兆円規模に達し、多くの組合が「保険料率10%超え」という“解散ライン”を突破した。制度の逆進性は深刻で、現役世代の負担超過と老人の受取超過が積み上がる構造は、医療保険そのものの存続を揺るがしている。
- 健康保険組合連合会は2025年9月25日、全国約1400健保組合の2024年度決算を公表し、合計145億円の黒字だったと明らかにした。ただし黒字は保険料率引き上げなど“延命措置”によるもので、制度の健全性を示すものではない。
- 個別にみると、半数近い組合は赤字で推移し、4分の1近くが保険料率10%超えという“解散ライン”に到達。企業が組合を維持するメリットが薄れ、解散圧力は急速に強まっている。
- 背景にあるのは、後期高齢者医療への年間10兆円規模の「仕送り」だ。健保組合の支払う拠出金が膨張し、組織存続を脅かす最大要因になっている。
- 現行制度は、現役世代が高齢者医療費を肩代わりする大規模な所得移転を内包する。特に高度医療の多くが“延命治療”に偏り、自己負担の仕組みが不十分なため、医療費が青天井に膨らむ構造が続いている。
- 欧米で一般的な「一定ラインから先は自費」の制度が日本に存在せず、本人が望まない延命治療でも、家族や医療者が止められない。結果として寝たきり長期化・介護破産・医療費爆増という地獄が制度的に再生産されている。
- 健保財政の悪化で、協会けんぽの地域上限に届かなかった組合も料率が急上昇し、赤字で解散するケースが増加。制度の綻びを現役世代の負担増で埋める限界が露呈している。
- 国は「子ども子育て支援金」を新設し、健保組合から1兆円規模を徴収する仕組みを導入したが、これも“老人医療10兆円+子育て1兆円徴収”として組合の負担をさらに悪化させ、違法性を指摘する声も出ている。
- 健保連は「このままでは組合が維持できない」と強い危機感を表明。制度の持続可能性を問う声は高まるが、労働者政党のはずである立憲民主党を含む主要政党は、この“現役世代の死活問題”にほとんど触れていない。
健保組合が毎年10兆円もの拠出金を高齢者医療へ送り続ける構造は、すでに制度破綻の兆候を示している。延命治療偏重と保険適用の過剰が医療費爆増を招き、現役世代の保険料は上限を突破して組合そのものが崩壊しつつある。







