高市人気と自民停滞をどう読むか?内閣と自民党支持率の相関③

自民党HPより

(前回:高市人気と自民停滞をどう読むか?内閣と自民党支持率の相関②

今回は「高市人気と自民停滞をどう読むか?」というテーマの結びとなる。

高市内閣支持率66%

高市内閣となってから初となるNHK世論調査の結果が11月10日に更新された。内閣支持率は66%であった。これは小泉内閣の81%には及ばなかったとはいえ第1次・第2次安倍内閣の発足時よりも高く、自民党内閣としては第2位の高支持率であった(小渕内閣以降・NHK世論調査)。

NHK世論調査 内閣支持率 政党支持率 毎月の最新情報

NHK世論調査 内閣支持率 政党支持率 毎月の最新情報 | NHK選挙WEB
NHKが毎月行っている世論調査のうち、内閣支持率については2013年の第2次安倍内閣発足以降の推移が一目でわかります。また調査結果をお伝えしたニュースに基づいて、そのほかの内容も掲載します。

歴代内閣順位

NHK世論調査で蓄積されたデータから、小渕内閣以降の歴代内閣における発足直後の内閣支持率を抽出し時系列ではなく支持率順に並べたのが次のグラフである。

今回は、自民党が下野していた時期の民主党政権時代の内閣支持率も含めた。それを含めても高市内閣は歴代3位の高支持率であった。

なお、NHKの世論調査(11月)では時系列で示しているが、「調査方法が異なるため単純に比較はできないものの」という注釈を付けている。この「調査方法の差異」の存在には確かに注意が必要であり、所謂“apple to orange”に陥って誤った推論を展開する危険性には十分注意したい。

発足時内閣と党支持率

一方で、同調査による高市内閣発足直後の自民党支持率は30.7%であった。これは小渕内閣24.3%・森内閣30.3%・小泉内閣30.4%に次ぐ歴代4位の低さであった。やはり先行他社の世論調査同様に「内閣高支持・党低支持」という二重構造を示す結果であった。

支持率に関し、「一定の支持層を持つ人を包含(付け焼刃)しても政権運営に支障をきたせば元の木阿弥になること」は小泉内閣のスタート直後に経験済みである。

実際のところ、内閣としては殆どの期間で平均以上の支持率を維持できていた小泉純一郎総理であっても、彼が率いる自民党に関しては政権終盤に至って「郵政民営化」でようやく支持を安定させられた次第である。結局は国民の情緒的な支持を得られる政策を推進しなければ党支持率は浮揚できないと見るべきであろう。

以下そのための2つの観点を示してみたい。

自民党支持率上昇策

ここには筆者の主観が入るので単なる自己満足の論点提起に過ぎない。

1. 岸田・石破内閣時代に支持離れを誘発した政策の見直し

潮目が変わったのは「国葬儀」・「旧統一教会の取り扱い」・「政治資金不記載問題」といったテーマが議題だった頃である。どこかに国民の支持が離れる政策があったと考えられる。丹念に調査の上政策的に誤りだった部分の修正を図るべきであろう。個人的にはエネルギー政策(太陽光発電・原子力発電・再エネ発電賦課金)の見直しが焦点だと考えている。

またガソリン暫定税率廃止だけでなく13年超過車両への重課など「贅沢品」「消耗品」としての自動車の位置づけも、時代毎の価値観の変化に応じて「地方における生活必需品」「価値上昇もあり得る資産」として再考して頂きたいと考える。

2. 高市内閣・自民党のオリジナル政策

独自の経済政策は本命の一つである。特に、サプライチェーンからの中国外しや米国への産業回帰といった「産業と経済の大きな環境変化」は見逃せない。1990~2000年代にかけて日本から製造業が海外流出したが、半導体製造業誘致が象徴する「逆回転」を幅広い業種で起こせるかどうかが大きな鍵であろう。

また、株高が続く現在は、ダウンサイドリスクにも手を打っておくことが肝要である。自動車の電動化からAIへと移り替わった「夢(希望)のストーリー」が現実に逢着するタイミングで次に続くテーマが出現しなければ、実体経済の減速に端を発する下振れリスクが無視できない。万一、年金や日銀の資産が大きく毀損されるような事態が発生すれば、その影響は甚大であろう。

現在、日本社会は雇用不足から一転、人手不足に移行している。このことは仕事不足という「量的な課題」を克服したことになるが、個別の仕事の賃金上昇は未だ緩やかなものに過ぎず「質的な課題」は依然として残っている。ここに実のある答えを用意できるかどうかが最初の正念場となるだろう。

3. 禁忌事項

例えば「台湾有事」に関する総理の発言が基点となり対中関係が多少波立っているが、これは大きな問題ではない。メディアや野党は殊更に取り上げるが“戦狼外交”は中国国内向けの恒例行事であり、例えば報道官だった趙立堅氏のその後を見れば一定の距離を置いて眺めていればよい話であると解る。

“国際社会”なるものがあるとしても中国外交官に品格を求める国は殆どなく、自民党も“ペルソナ・ノン・グラータ”のような強い言葉は不要だろう。

ただし、内閣を短命にし自民党の退勢を促進する“禁忌”事項は確かに存在する。閣僚の失言による辞任ドミノや不記載問題の再燃などの“スキャンダル”などがそれである。第一次安倍内閣とその時期の自民党支持率が短期間のうちに急降下した要因の一つはこれだろう。これらが無かったからと言って即支持率上昇につながるわけではないが、起きれば即支持率低下を招くだろう。

まとめ

「公明党の与党離脱」というハプニングはあったが日本維新の会と連立を組むことで一時的な穴埋めはできた。しかしこれにより「議員定数削減」という「諸刃の剣」を背負った。

11月のNHK世論調査では「衆議院議員の定数削減への賛否」も設問したが、『「賛成」が70%、「反対」が15%』という明瞭な回答を得ている。これは「議員定数削減が国民の情緒に訴える(溜飲を下す)危険なテーマ」であることを示している。仮にこの宿題に党内の理論が邪魔をしたりするならば、自民党全体が一気に“国民の敵”認定を受けるリスクがある。

最後に筆者のまとめに変えて、実績ある政治家が遺したという言葉を引用させて頂く。

安倍総理が遺した言葉

安倍前総理に訊く~第1次安倍政権はなぜ失敗したのか

安倍前総理に訊く~第1次安倍政権はなぜ失敗したのか
ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(6月14日放送)に安倍晋三前総理大臣が出演。第1次安倍政権での失敗について語った。 第1次政権の失敗 安倍前総理が特別インタビューとして6月14日(月)~18日(金)の...

第1次政権の失敗

(中略)

安倍:第1次政権の失敗から学んだことで(中略)やらなければいけないと考えたことを、とにかく大変なスピードでやって行こうと思ったのです。相当無理な政権運営になった。そして、私がやりたいこと、やるべきだと考えたことが、国民の皆さんのニーズとは必ずしも一致していなかったのです。(中略)しかし、私たちにはある強さがあった。「第1次政権で失敗をした」という経験があることです。

国民が何を望んでいるか~経済の再生

安倍:そうした経験を生かしながら、「国民は何を望んでいるのか」ということを念頭に、戦略的に政策の優先順位を決めたのです。そこで国民からいちばん求められていたのは、民主党政権の3年間で何があったかということで、経済が大変厳しい状況になった。行き過ぎた円高で製造業が生産拠点を海外に移し、競争力に破れて行くなかで、「連鎖倒産」という言葉が日本中を覆っていました。(中略)例えば、正社員の有効求人倍率は0.5でした。(中略)だから、私たちは経済を再生して、デフレから脱却し、そして「働きたい人に仕事がある」というまっとうな社会をつくることを目指しました。

正社員の有効求人倍率が2019年には1倍を超える

安倍:(中略)2019年の段階では、正社員の有効求人倍率が日本で初めて1倍を超えました。(中略)400万人分の仕事をつくり出すことができたと。ある意味で責任を果たすことができたのかなと思います。

【最後に】
高市内閣が取り組む諸施策については、なるほど深い考えに基づくものであると理解した次第である。以上をもって、高市総裁率いる自民党への応援の言葉としたい。

また、拙稿を最後までご覧いただいた皆様に、あらためて心より感謝申し上げるものである。