このところシャープの関連の記事が目立ちます。目立つということはそれだけ重大な局面にあるといってもよいかと思います。これらの記事を読み合わせながら最近、ふと思ったことがありますので一応、書き記しておきます。
ご承知の通り、シャープは液晶テレビの一本足経営がたたり、経営不振から台湾の鴻海精密工業に出資を仰ぎ、9.9%の筆頭株主になってもらうことで当初合意しました。しかし、その後、今期決算予想を下方修正したため、株価は600円台から一時160円台まで下落しました。一方、鴻海側は出資は来年3月に550円程度で行うことで当初話が進んでいたものの株価の下落が厳しく、当初の予定金額での出資について難色を示しています。
ここに来て、提携発表と出資時期そのもののタイムラグが非常に長いことも含め、私は鴻海側の本気度に疑問を感じ始めています。ディール好手の鴻海のスタンスは二つの見方が出来ると思います。
一つは来年3月の出資という実弾を入れるまでにシャープから更なる好条件を引き出す作戦に出た可能性です。鴻海側としてもシャープの業績予想がここまで悪化し株価がここまで下落するのは想定を超えていたかもしれませんが、結果としてまだほとんどお金を使っていない鴻海としてはこのディールを好機到来と捉え更に好条件を付することが出来ます。
二つ目はディールそのものを取りやめるというケース。8月末までに提携内容をまとめる日程で作業が進んでいるという報道がありますが、華人の発想はマネー第一ですからみすみす損をするディールはしません。よって、シャープと進んでいるであろう実務者会議で鴻海側に大いに実りのある結果が出なければ「止めた」の一言で終わることも考えておかねばなりません。海外とのディールはこういうことは往々にして起こりますから私はまだどちらとも言い切れないと思います。
よってこのゲーム、完全に鴻海側の手中に収まってしまっているという事でしょう。
ただ、日本側が本当にそれでよいのか、という疑問があります。銀行側は一定のリストラの見返りに巨額の運転資金の融資を計画しているようですが、日本側の銀行としても鴻海は今後、コントロール不能です。よって、鴻海という巨大企業に食い込むつもりで銀行団がそちらに擦り寄るならともかく、そうでないならば微妙ではないでしょうか?
そこで、新案としてはまったく違う形でシャープを再生するバックアッププランを銀行団が中心となり考えるか、ということです。多分、それは政府系金融機関を含めた融資ではなく、M&Aという手法かふさわしいように感じます。
日本の家電の弱点は企業数が多すぎ、国内で不要な競争を強いられてきたこと、また、技術力の割にグローバルな商品開発力がなかったことがあげられます。つまり、国内家電メーカーはある気づきが入れば大いに復活する可能性はあると思うのです。ならばシャープが鴻海の軍門に下るのがよいのかもう一度真剣に考えなおすというのも手ではないかと思います。
このところのシャープの報道を見ていてあまりにも情けなくなったのでここは心を入れ替えて是非とも頑張ってもらいたいと思います。
今日はこのぐらいにしましょう。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2012年8月24日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。
オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。