欧州連合(EU)の欧州委員会は16日、2035年から予定していたエンジン車の新車販売の原則禁止方針を事実上修正・撤回する方針を示した。電動化を軸にした脱炭素政策の象徴とされてきたエンジン車禁止は、現実的な制約や産業界の反発を受け、大きな転換点を迎えた。
EU、エンジン車禁止を撤回へ 2035年以降も条件付き販売容認:日本経済新聞
これは酷いな。あなた方の実現不可能なネットゼロ政策がどれだけの人々を苦しめて、将来を奪ってきたか。世界を不安定にさせたのか。英独政治家は反省すべきです。そして、周回遅れの豪州政界も。 https://t.co/WXcu9tRzaC— 松尾 豪 Go Matsuo (@gomatsuo) December 16, 2025

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EUが音を上げ新たな方針を示す
- 欧州委員会は、2035年以降も一定条件を満たせば、ハイブリッド車(HV)を含むエンジン搭載車の新車販売を認める方針を発表した。
- 条件として、走行中の二酸化炭素(CO2)排出量を、新車全体の平均で2021年比90%削減することを各自動車メーカーに求める。
- 形式的な全面禁止を掲げてきた従来方針を見直し、実質的にエンジン車の存続を容認する内容となった。
背景にある欧州産業界と政治の反発
- 急速なEVシフトに対し、欧州の自動車メーカーやドイツ政府を中心に現実離れしているとの反発が強まっていた。
- EVへの全面移行は雇用や部品産業への打撃が大きく、既存産業基盤を維持しながら脱炭素を進める現実的な目標設定が求められていた。
- 各国政治家の間でも、理念先行のネットゼロ政策が国民生活や産業競争力を損なっているとの反省論が出ていた。
中国製EVの台頭と競争環境の変化
- 足元では中国製EVが価格競争力を武器に欧州市場で急速に存在感を高めている。
- 欧州メーカーは低価格EVの量産で出遅れ、採算性の面でも苦戦が続いている。
- EV一本足打法では国際競争に勝てないとの危機感が、政策修正を後押しした。
今回も繰り返されるEUの政策修正
- 今回の方針転換は、EUがまず強い宣言で世界を動かし、その後に現実との乖離から修正・撤回を重ねる、従来の政策運営パターンを改めて印象付けた。
- 環境政策を巡っても、成果の検証より理念が先行し、後からルール変更を行う姿勢への批判は根強い。
- 環境規制が利権化しているとの疑念を招いている点も否めない。
日本への影響
- 日本にとっても、無理にガソリン車からEVへ一気に移行する必要はないとの見方を補強する動きとなった。
- 技術的選択肢を狭めず、HVや次世代エンジンを含めた多様な脱炭素戦略を維持する重要性が明らかなものとなった。
EUは、エンジン車の販売禁止という強硬な方針から一歩後退し、現実路線へと舵を切り始めた。依然として厳しいCO2規制は残るものの、かつての極端なEV一本化政策は修正されつつある。狂気じみた理想論から正気に戻り始めたとも言えるが、これまでのネットゼロ政策がもたらした混乱と負担について、欧州の政治は今こそ真摯な検証と反省を求められている。






