ウクライナ戦争終結を目指したマイアミの和平交渉と「その後」は

ウクライナ戦争終結を目指してマイアミで行われた3日間の交渉は、米国、ウクライナ、ロシアの首席交渉官から肯定的に受け止められた。米国のスティーブ・ウィトコフ特使とウクライナ安全保障・国防会議書記のルステム・ウメロフ氏は21日、それぞれXについて同一の声明を発表し、「会談は生産的かつ建設的だった」と述べた。交渉の場では、米国の安全保障やウクライナの経済復興計画などが含まれていた。公式声明によると、マイアミではロシアとウクライナの紛争当事国間の直接会談は行われなかった。

米アラスカ州で開催された米ロ首脳会談後の記者会見 2025年8月15日 クレムリン公式サイトから

ウィトコフ氏とウメロフ氏は共に、「我々の共通の最優先課題は、殺戮を終結させ、安全を保証し、ウクライナの復興、安定、そして長期的な繁栄のための条件を整えることだ」と宣言している。なお、トランプ米大統領の義理の息子ジャレッド・クシュナー氏も会議に参加した。

マイアミでは20日、21日の両日、ウィトコフ特使ら米代表はキリル・ドミトリエフ氏率いるロシア代表団とも会談した。

ウィトコフ氏はXへの投稿で、ドミトリエフ氏との会談も「生産的かつ建設的だった」と述べ、「ロシアは、ウクライナ紛争の解決と世界の安全保障の回復に向けた米国の努力と支援に深く感謝している」と述べたが、会談の内容や結果について、明らかにしなかった。ドミトリエフ氏は、ウィトコフ氏のXへの投稿をシェアし、ビーチを背景にした自撮り写真とともに、「ありがとう、マイアミ。次回はモスクワ」と記している。

ウクライナのゼレンスキー大統領は21日夕方の演説の中で、マイアミでの会談の状況について「建設的だ。戦争終結、安全保障、そして復興に関する文書の作成作業は継続しており、あらゆる点が詳細に議論されている」と説明。さらに「米国代表団との協力は建設的だ。マイアミでの交渉では、今後の交渉のタイムテーブルについても話し合われた」という。

一方、ドミトリエフ外相は22日、ロシアに戻り、報告を行う予定だ。プーチン大統領の顧問ユーリ・ウシャコフ氏は、「報告を受けて初めて、モスクワはウクライナ危機解決に向けたどの提案を受け入れ可能で、どの提案を受け入れられないかを検討する」と述べた。

ところで、ロシア軍はマイアミの和平交渉が行われている間もウクライナ国内の標的に大規模な空爆を継続した。ウクライナ南部オデーサ市にあるウクライナの3つの港がロシア軍の標的となった。戦闘用ドローンと弾道ミサイルにより、多くの死傷者が出た。

ゼレンスキー大統領は「ロシアは戦争終結の意志を示さない。ロシアは圧力なしに侵略を真に終わらせる用意がないことは、誰もが理解しているはずだ。圧力を強めなければならない」と述べた。そして「モスクワがウクライナの海上物流へのアクセスを遮断しようとしている」と批判した。

ちなみに、米国発の外電によると、米共和党のリンゼー・グラハム上院議員は、ロシアのプーチン大統領が交渉による解決を拒否した場合、米国はウクライナへのトマホーク巡航ミサイルの供与を含め、モスクワへの圧力を大幅に強化するよう求めている。同議員はNBCの「ミート・ザ・プレス」で述べた。

グラハム議員は「プーチン大統領が今回ノーと答えた場合、トランプ大統領には次の行動を取ってほしい。85人が支持する私の法案に署名し、中国などの安価なロシア産原油を購入する国に関税を課してほしい。ウクライナの2万人の子どもを誘拐したロシアは、テロ支援国家に指定されるべきだ。そして最も重要なのは、ベネズエラで行っているように、制裁対象のロシア産原油を積載している船舶を拿捕することだ」と強調している。

トランプ大統領は本来、対ロシア交渉で強いカードを持っているが、それを切るのをなぜか躊躇している。ゼレンスキー氏が何度も主張しているように、ロシアを停戦に導くためには「力」しかない。切れるべきカードを出さなければ、プーチン氏はそれをトランプ氏の弱さと受け取るだろう。米国では議会や国民の間でトランプ政権のロシアに対する交渉スタイルに批判が高まっている。

トランプ氏は「意味のない戦争で多くの若い兵士たちが戦死している。私はそれを終わらせたいだけだ」として、ウクライナ戦争の早期停戦・和平を口癖のように語ってきた。ディールの名手を自負してきたトランプ氏には、その実力を発揮してほしいものだ。


編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2025年12月23日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。