なぜ連合は小沢新党を切り捨てたのか --- 城 繁幸

アゴラ編集部

森永センセイがなんだか面白いことを書いているので紹介しておこう。


要約すると、こうなる。

なぜ連合と民主党執行部は小沢新党を切り捨て、増税支持に回ったのか。
それは、輿石幹事長が税金で喰っている日教組出身であり、古賀連合会長は
輸出還付金で儲けられるパナソニック出身だからである。
これこそ、本来なら生活者代表として消費税増税にブレーキをかけなければならない
労働組合が、逆にアクセルを踏んでしまうという異常事態の起きた理由だ。

たぶんモリタク的にはとにかく増税は悪というスタンスで、どこかの誰かに責任を背負わせないといけない(おまえら愚民どもが贅沢し過ぎなんだよ!とは芸風的に言えない)。
その点、自民党が与党だった頃は何にも考えずに「財界と癒着した自民が云々」と言っていれば良かったのだろうが、労働者政党が与党にいるためそのロジックは苦しい。
そこで「税金に寄生する公務員と還付金を貰える大企業出身者がトップにいるからだ」という苦しいロジックを編み出したのだろう。

もちろん、そんなことはありえない。
(というか連合も民主党も、役職者の一存で組織動向が変わるような小さな組織ではない)
筆者は連合や健保連の中の人達と面識があるが、みなずいぶん前から消費税引き上げには賛成だ。理由は簡単。過去十数年、増税が先送りされるたびに、そのツケを背負わされてきたのはサラリーマンだから。国民年金未納者のツケや基礎年金国庫負担分は、すべて厚生年金側から流用されている。

中でも、いまや保険料収入の約45%を高齢者医療支援に持っていかれ、さらには昨年に厚労省内で出された「厚生年金保険料の2倍への引き上げプラン」のメインターゲットとなっている大企業労組は、根強い不満を持っている。そんな彼らが、消費税の引き上げにも社会保障カットにも否定的な小沢派を切り捨てるのは当然の話だ。

還付金についても、以前述べたとおり、そもそも企業は消費税を負担しているわけではなく消費者から預かった分を納めているに過ぎない。客から取れない輸出分について還付されるのは当たり前の話だ。
氏が消費税についててんで理解していないということはサプライズだったが。

ただし、連合が大手の正社員を中心とした企業別労組の集まりだという認識は正しい。
なので、増税ではなく雇用関係に置き換えると、実はこういう指摘はピタリとあてはまる。
というわけで、筆者が置き換えた上でまとめておこう。

なぜ連合と民主党執行部は、65歳再雇用義務付けや有期雇用規制法案を採決させ若者や非正規雇用を切り捨てたのか。
それは、彼らが既得権のインサイダーであり、既得権の強化につながる改革は大歓迎だからだ。事実上経営と一体化している企業別労組が、組合員以外の利益を代弁することなどありえず、逆に彼らの切り捨てにアクセルを踏んだ理由である。

森永先輩も、同じ公務員や連合叩きをするんなら、一見しただけで無理のある増税絡みのネタは辞めて、そろそろ雇用問題に舵を切った方がいいんじゃないでしょうか。
正論に転向する分にはいくらでも歓迎しますよ。


編集部より:この記事は城繁幸氏のブログ「Joe’s Labo」2012年8月26日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった城氏に感謝いたします。
オリジナル原稿を読みたい方はJoe’s Laboをご覧ください。