フランス南東部ボルドーから少し内陸に入ったところにある、サン=テミリオン。ここはボルドー地方を代表するワイン産地の一つであり、小さな丘の上にある中心地の村は1999年にユネスコ世界遺産に登録されている。葡萄畑に囲まれたかわいらしい村には季節を問わず観光客やワイン関係者が世界中から訪れ、フランスの人気観光地の一つになっている。

サン=テミリオン
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そんな美しい村の中心に、周囲に広がる葡萄畑を見下ろすように建つ「オテル・ド・パヴィ」。世界のトップホテルレストランが加盟する”ルレ・エ・シャトー”のメンバーでもある名門ホテルだ。名前を見て、ワイン愛好家ならすぐに、”シャトー・パヴィ”を思い浮かべるだろう。
”シャトー・パヴィ”は、サン=テミリオン産ワインの最高評価である”プルミエ・グラン・クリュ・クラッセA”に輝く、このエリアトップのワインシャトー。同シャトーのオーナーが、「オテル・ド・パヴィ」も経営しており、ホテルの食部門にも力を入れている。

「ラ・ターブル・ド・パヴィ」のサロン。
壁を飾るサン=テミリオンの街は、精巧な寄木と白蝶貝で作られたアート作品。
ホテルのレストラン「ラ・ターブル・ド・パヴィ」は、ミシュランガイドで2つ星の評価。シェフを務めるのは、パリとフレンチアルプスきってのウィンターリゾート地クーシュヴェルでそれぞれ3つ星レストランを手がけているフランス料理界のトップ、ヤニック・アレノだ。
アレノがこの地で考えるガストノミーは、サン=テミリオンの気候風土が育む豊かな食材を、”シャトー・パヴィ”へのオマージュを感じさせる唯一無二の独創的な料理に昇華させたもの。アレノは以前から、発酵や香りの抽出といった技術に力を入れており、ワイン作りと共鳴する料理スタイルを持っている。地元の食材の魅力、とりわけ豊富な野菜やきのこ、ハーブなどのクオリティにフォーカスして2025年初めから提供しているヴェジタリアンコースは秀逸だ。
肉厚のほうれん草で、コールラビ、カプシーヌの葉、揚げた生姜の花をくるんでタコスのように食べるカナッペ。季節の野菜の旨みをクリアに引き出し、菜の花と洋梨を浮かべたスープ。文字に書くと味の想像が難しいが、どの料理も、意外性と驚きに満ち溢れ、芯のしっかりした唯一無二の美味しさを湛えている。

野菜やハーブの魅力と可能性に感動する料理の数々。
最高のグラン・クリュワインが、恵まれたテロワールを生かして育てた極上ブドウと一流の醸造家によって生まれるように、ここでは、最高の野菜料理が、地元の素晴らしい野菜をヤニック・アレノというトップシェフによって創造されている。
野菜料理の最高形の一つと出会える、「ラ・ターブル・ド・パヴィ」。もちろん肉や魚を使った料理のクオリティも抜群だ。ワインは、”ハウスワイン”である”シャトー・パヴィ”をはじめ、オーナーが所有する魅力的なワインを蔵出しで楽しめるなど、ワイン好きの琴線もくすぐる極上レストラン。ミシュランが3つ星をつける日も遠くないのではないだろうか。

素晴らしいディナーを満喫した後は、落ち着いた雰囲気の部屋での心地よい眠りが待っている。

朝、ホテルのテラスに出れば、サン=テミリオンの村と丘陵を埋める葡萄の木々が、目を楽しませてくれる。
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