過去最多を更新しつづける日本の医師数:一方で「患者不足」の到来が迫る

国内の医師数は過去最多を更新し続けているが、地域や診療科の偏在は依然として解消されていない。

一方で、地域・診療科の偏在は解消されず、将来的には人口減少による「患者不足」が医療構造そのものを揺るがす可能性が指摘されている。医師不足と医師過剰が同時に進行する日本医療の現状と将来像が、各種統計から浮かび上がってきた。

  • 厚生労働省によると、2024年末の医師数は34万7772人で過去最多となり、1982年の約16万8000人から約2倍に増加。
  • ただし、人口10万人当たりの医師数は、最多の徳島県と最少の埼玉県で約1.8倍の差となっている。首都圏周辺で医師が少なく、地方の一部で多い構造が続く。
  • 産婦人科・産科は前年より143人減、外科も749人減と減少が続く。
  • 小児科は増加し、診療科間の需給格差が拡大。
  • 高齢化と医師不足対策を理由に、2009年以降、医学部定員は拡大。また、地域勤務を条件とする「医学部地域枠」が大幅に増加しており、医師は毎年3500~4000人規模で増え続けている。
  • 人口がほぼ横ばいの中、医学部定員は1989年より大きく増加している。このため、医師の需給は2029~2032年頃に均衡し、その後は過剰になるとの推計されている。

  • 医師養成には時間がかかり、需要変化への調整が難しい。国は医学部定員の適正化を検討している一方、医師不足に悩む地域からは削減への反対が強い。

日本の医師数は過去最多を更新する一方、地域・診療科の偏在は解消されず、人口減少に伴う「患者不足」が現実味を帯びてきた。医師不足への対症療法として続けられてきた医学部定員拡大は、将来的には需給の大きな歪みを生む可能性がある。医師養成数の調整、地域・診療科偏在対策、医療提供体制の再設計を一体で進めなければ、医師過剰と患者不足が同時に進行する構造的問題は避けられない。

日本医師会HPより