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高市政権が外国人政策を発表しましたが、今日は評価できる点とできない点を書きます。
私は海外生活が長く、外国人の立場で働いてきましたし、逆に外国人を雇用もしています。その経験を踏まえると、成功の鍵は「言語力」です。これが全てと言っても過言ではありません。長文ですがお付き合い下さい。
まず言語を学ぶという行為は、単にコミュニケーションを取る以上のことを意味します。言語を学ぶと、その言語特有の思考パターンを知ることができ、歴史や文化にも興味を持つからです。それで外国人政策の条件に「言語力」を含めるのは絶対必要です。その国で用いられる言語に精通できれば、外国人労働者が問題行動を起こす可能性も格段に低くなるからです。
例えば問題になっている在留資格「技能実習」は、2023年に新規で約18万人来日しましたが、同年に約9000人が失踪していて、非常に高い失踪率です。一方「特定技能1号」は同年に約4万人来日していますが、失踪者数は僅か348人で、技能実習よりも遥かに低い値です。
なぜこの差が生まれるのでしょうか? 待遇差もありますが、最大の差は言語力です。技能実習は日本語能力が不問で、多くは喋れない状態で来日します。そして意思の疎通で躓き、逃げる様に失踪します。逆に特定技能1号は来日前に日本語検定のN4が必須条件で、300〜400時間の学習時間を要します。彼らは意思の疎通が取れ、しかも日本文化への理解も深まるため、失踪の危険性は格段に低くなります。
これは日本に限った話ではありません。私はマレーシアで会社を経営していますが、この国は日本とは比較にならないほど外国人が多く、人口の10%を超えます。ただ事件や問題行動を起こす外国人の多くは、言語力が低く、意思の疎通が難しい人たちです。彼らは仕事を辞め、新しい仕事が見つからず、結果的に犯罪に手を染めます。この「言語力の低い外国人が問題を起こす」というのは、世界共通の傾向です。
さて日本の政策の話に戻ります。今回の高市政権の案では、人手不足が厳しい業界において、特定技能1号の枠の拡充が決まりました。これは評価できる点です。上述のように、彼らは日本語検定を既に受けており、日本社会に馴染む用意ができているからです。
一方で、技能実習の代わりにできる「育成就労」は全く評価に値しません。日本語検定のN5相当が条件ではありますが、試験に受かっていなくても、来日後に講習を受ければ良いことになっているからです。これは絶対ダメです。来日前に日本語を叩き込まないと、失踪の温床になります。
また特定技能1号で滞在する外国人は、熟練度次第で5年以内に「特定技能2号」に昇格が可能で、このビザでは家族が帯同できます。これに対しては「移民推進だ」と反対の声が大きいですが、私は是々非々の評価です。
外国人労働者の多くは簡素な生活を送り、収入の8割位を母国に仕送りします。これは国富の流出を意味するので、家族を呼び寄せた方が日本経済にも貢献できます。ただし、高市政権の案ではダメです。1号→2号の移行に言語力の規定がないからです。
例えば2号になる条件に、より難易度の高い日本語検定N2を課せます。また帯同の配偶者にもN4を必須にすべきです。こうすれば両親ともに日本語が喋れるため、仮に子どもがいても、学校や地域社会と意思の疎通が取れて日本社会に馴染むことが容易になります。
結論です。高市政権の外国人政策において、評価できる点は言語力が必須の特定技能の枠を拡充したことです。逆に評価できない点は、言語力が低くても来日可能な育成就労が残ったことや、特定技能2号への昇格に日本語試験を課していないことです。
言語は単なる道具ではありません。信頼を築くための基盤です。日本が外国人政策を成功させられるか否かは、「どれだけ言語力を重視するか」にかかっています。この点で改革を期待したいと思います。
長文お付き合い頂き、ありがとうございました。

(編集部より)この記事は、ちゃん社長(@Malaysiachansan)のポストから転載させていただきました。






