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近年、ドバイやアブダビを中心に、中東市場への関心が高まっている。資金力があり、意思決定が速く、日本企業に対する評価も決して低くない。にもかかわらず、「話はあったが結局うまくいかなかった」という声を聞くことは少なくない。
その原因は、現地の文化や商慣行にあるのだろうか。実務を見ていると、答えは必ずしもそうではない。多くの場合、現地以前に、日本国内で失敗が決まっている。
中東案件が社内に持ち込まれると、日本企業ではしばしば思考停止が起きる。
「中東は特殊だ」
「現地に行かないと分からない」
「商社に任せるしかない」
こうした言葉が並び、具体的な論点整理が先送りされる。
だが、中東も一つの取引市場に過ぎない。特別視するあまり、通常であれば行うはずのリスク整理や判断設計が省略されてしまうことこそが、最大の問題である。
特に顕著なのが、輸出管理や制裁リスクの扱いだ。「現地では問題ない」「これまで大丈夫だった」という理由で、日本側の確認が形式的になる。だが、中東案件では、後になって第三国規制や金融規制が顕在化するケースが多い。問題が起きるのは現地ではなく、日本側の判断不足である。
また、国内の意思決定構造も足を引っ張る。営業は前向きに進め、技術は仕様を詰め、管理部門は最後に確認する。結果として、案件がかなり進んだ段階で問題が見つかり、「今さら止められない」という空気が生まれる。この構図は、中東に限らず海外案件全般で見られるが、中東では特に顕在化しやすい。
中東ビジネスで重要なのは、現地事情を語れる人材よりも、日本側の判断構造を整理できる人材である。
現地に行く前に、
- どの規制が関係するのか
- 誰が最終判断をするのか
- どこまでを許容リスクとするのか
これらを国内で決めておくことが不可欠だ。
中東市場は、日本企業の弱点を映し出す鏡のような存在である。現地でつまずいているように見えて、実際には日本国内で判断を誤っている。中東に限らず、海外ビジネスで失敗する企業の多くは、海外に出る前に、すでに勝負を終えている。
次に海外案件の話が出たとき、現地のことを調べる前に、まず自社の判断構造を見直すこと。それが、中東ビジネスを現実的な成功に近づける最初の一歩である。






