日本の実質賃金が再び大きく目減りしている。厚生労働省が8日発表した毎月勤労統計(2025年11月速報)によると、物価上昇に賃金が追いつかず、家計の購買力が削られる状況が長期化していることが明らかになった。政府は物価高対策の名で大型支出を繰り返すが、インフレと実質賃金低下の悪循環が強まりつつあり、高市政権の経済政策のミスマッチも指摘されている。
- 実質賃金は前年同月比2.8%減で、2025年1月から11カ月連続のマイナスとなった。物価の伸びに賃金の伸びが追いつかない構図である。
- 名目賃金は0.5%増の31万202円となった。所定内給与は2.0%増の27万41円で、春闘による賃上げが押し上げ要因とみられる。
- しかし賃金の伸びは物価上昇に届かず、実質賃金のマイナス幅はむしろ拡大している。
- 背景にあるのは「賃金と物価の悪循環」であり、インフレが実質賃金を削り、家計を支えるためのバラマキ財政が円安を招き、輸入インフレを経由して再び実質賃金を低下させる構造を示している。
- 財政インフレの色合いが強まるなかで、日銀の金融政策には限界がある。金利引き上げは物価上昇を加速させる副作用の懸念もある。
- 政府は春闘で5%賃上げを事実上求める構えを見せているが、企業側が価格転嫁を進めればインフレ圧力となり、英国病のような悪循環を招くリスクがある。
- 日本とイタリアの実質賃金が過去30年ほぼ横ばいで停滞している一方、米国など他の先進国は堅調に伸びている。
- 高市政権下では積極財政が拡大し、インフレ加速とともに実質賃金が大きく低下している。財政インフレを抑制しない政策運営が懸念されている。
- 専門家の一部は、金融政策ではなくバラマキ停止が最も効果的なインフレ抑制策と指摘している。金融政策のみでは対応困難な政策ミスマッチが際立っている。
今回の統計は、名目賃金が伸びても実質賃金が下がる「逆転現象」が定着しつつある現実を示した。短期的な給付や補助で乗り切る政策はインフレ圧力を増幅させ、円安・輸入インフレを通じて労働者の購買力を削ぐ。政府が次年度の賃上げを企業に求める一方で、財政インフレを止めなければ、価格転嫁→インフレ→実質賃金低下という悪循環が強まる危険がある。先進国で日本だけが取り残される賃金停滞の是正は、今後の日本経済を左右する中心的な課題となっている。

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