都市に電気を送っている送電塔が爆発されれば、その周辺は停電となり、厳冬の中、人々は暖房や電気がないといった状況に陥る。数時間で停電が回復する場合もあるが、それが4日間も続くとなれば、国にとっても緊急事態だ。それが新年早々、ドイツの首都ベルリンの南西部で発生した。

災害救援・人道支援組織の独連邦技術支援庁(THW)、2026年1月6日、THW公式サイトから
ドイツの首都ベルリン南西部で3日の朝、4万5000世帯と2200の事業所が停電に見舞われた。カイ・ウェグナー市長によると、停電の影響を受けた人は約10万人に上る。ベルリン市は4日に非常事態を宣言した。冬の寒さのため、電力復旧作業は遅々として進まず、多くの世帯が停電のために暖房も使えなくなった。
7800人の警察官が住民の支援と保護のために派遣され、隣接するブランデンブルク州からも支援隊1500人が動員された。消防署と連邦技術支援庁(THW)は、ノルトライン=ヴェストファーレン州からの支援を含め、2500人以上の人員を現場に派遣した。ドイツ連邦軍(Bundeswehr)も関与した。
1月7日の朝、全世帯への電力供給がようやく復旧した。予定より1日早く回復したことになる。ベルリンのイリス・シュプランガー内相は10日、1週間前に宣言された非常事態を解除した。
電力系統運営会社によると、今回の停電は戦後首都圏で最長となった。昨年9月には、市南東部で放火事件が発生し、約60時間にわたる停電が発生した。この停電では、当初約5万人の電力顧客が影響を受けた。
ところで、左翼過激派グループ「火山グループ」が犯行声明を発表したが「火山グループ」は、捜査当局に以前から知られている。同グループは2011年以降、主にベルリンとブランデンブルクで公共インフラへの放火を繰り返している左翼過激派だ。
「火山グループ」という名称は、アイスランド南西部のレイキャネス半島の火山爆発で世界の航空便に大きな影響が出たことをみて、極左過激派が自身のグループ名に「火山」という名称を付けたとみられている。彼らは鉄道インフラや送電網を複数回攻撃した疑いがある。2024年3月、ブランデンブルク州のグリュンハイデという町にあるテスラ工場で電気を送る送電塔が放火され、生産が停止されるという事件が起きた。その時も、「火山グループ」が犯行声明を出している。カールスルーエ連邦検察庁はドイツの最高法執行機関の観点から、違憲の破壊工作、テロ組織への関与、放火、公共サービスの妨害の疑いがあるとして捜査を引き継いだ。
今回、4日間の停電となり、影響を受けたベルリン市民は寒さの中、電気のない大規模停電(ブラックアウト)を強いられた。自宅ではなく、避難所に宿泊した市民がカリタスらの慈善団体が用意したスープなど温かい飲食物を受け取っているシーンがニュース番組で放映されていた。
ベルリン南西部の送電網への放火事件を受け、アレクサンダー・ドブリント内相はビルト日曜版とのインタビューで、左翼過激派と過激な環境活動家への取り締まりを強化する意向を表明した。具体的には、諜報機関の人員増強に加え、現場をより綿密に精査し、デジタル証拠をより迅速に追跡するためのデジタル権限の拡大が含まれている。また、重要インフラ保護法(Kritis-Dusseldorfer-Gesetz)の強化だ。同法はエネルギー会社、空港、その他の主要インフラ施設を破壊行為、テロ攻撃、自然災害の影響からより強力に保護することを目的としている。事業者は、停電の可能性に備えることも義務付けられている。
ところで、ウェグナー市長は市民が停電の中で生活している時、女性とテニスをしていた、ということが明らかになり、メディアから激しいバッシングを受けている。ドイツ民間放送ニュース専門局NTVによると、「壊滅的な停電の最中、ウェグナー市長は凍えるベルリン市民にろうそくを配る代わりに、数球のボールを打っていた。そして自宅オフィスに閉じこもっていたと嘘の主張をした」というのだ。この秋、ベルリンで選挙が実施されるが、「キリスト教民主同盟」(CDU)のウェグナー市長は災害時の行動が原因で苦戦するだろう、といった具合だ。
災害時の対応がまずく、メディアから批判にさらされた政治家はドイツではウェグナー市長が初めてではない。2021年7月、大洪水の被災地を視察した当時CDU党首で次期首相候補者のアルミン・ラシェット氏は災害地で同僚と冗談を言い合い笑っている様子がテレビカメラに捉えられ、批判された。災害地での笑いはラシェット氏には高くついた。同氏の政治家としての評価は低落したのだ。ウェグナー市長もそのことを思い出しているのではないか。
NTVは「政治家は災害時、その行動、ふるまいを慎重にしなければならない。そのことをしっかりと認識すべきだ」と助言している。
編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2026年1月12日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。






