イランのペゼシュキアン大統領は13日、テヘランで行われた集会で、「イランの敵対勢力は制裁と経済制限によって国家の発展を妨害しようとしながら、同時に自らをイラン国民の擁護者と見せかけている」と述べた。そして「広範囲にわたる犯罪と大量殺戮を犯した者たちが今や人権擁護を主張しており、こうした立場は極めて矛盾している」と強調し、ガザ、レバノン、パレスチナにおける人道危機に言及し、露骨な人権侵害を指摘した。

穏健派のぺゼシュキアン大統領、イラン大統領府公式サイトから
その一方、同大統領は「私の唯一の要求は、イランが誇り高く、国民が尊厳を持って生きることだ」と述べ、対話と表現の自由の重要性を改めて強調した。さらに、「学生は国家の財産であり、国民は国の最大の資本である。政府の義務は、国民の声に耳を傾け、彼らの問題解決に取り組むことだ」と述べた。
抗議デモが発生して以来、ペゼシュキアン大統領(71)は融和的な姿勢を示してきた。生活費の高騰という危機について抗議活動の指導者たちと対話することを約束し、経済の自由化についても言及した。同大統領はまた、当局の政治・金融政策の不備を認め、「責任は我々にある」と述べ、国民との対話を模索している。
ただ、医師出身の大統領の融和路線が抗議デモを鎮静できるかどうか不明だ。ぺゼシュキアン大統領の発言からはハメネイ師を中心とした聖職者支配体制(ムッラー政権)下での無力感だけが伝わってくる。
イランからの情報によれば、イラン治安部隊の抗議デモ参加者への弾圧は益々エスカレートしている。人権団体HRANAによると、抗議活動での死者数は2,571人に上った。米国に拠点を置く同団体の報告によると、死者のうち2,403人は抗議参加者、147人は政府関係者、12人は未成年者、9人は無関係の民間人だった。イラン政府当局者は13日、死者は約2,000人だと発言していた。
イラン全土におけるインターネット遮断は継続している。イランのインフラには、他国と接続する光ファイバーケーブルが8~10本ある。これらの中継地点で、特定のウェブアドレスをブロックするなど、インターネットアクセスを制限するための特別なソフトウェア対策が実施されているという。これは、抗議デモの実態が外部に流れるのを防ぐためだ。
そのような中で衛星通信スターリンク(Starlink)の役割に注目が集まっている。スターリンク衛星ネットワークを利用すれば、この遮断は回避できるからだ。
衛生通信スターリンクは、米国の億万長者イーロン・マスク氏が所有する米国航空宇宙企業スペースXによって運営されている。スターリンクは地上約500kmの低い高度を周回する低軌道衛星を多数利用した高速・低遅延のインターネット接続サービスだ。山間部や離島など地上回線が届かない場所でも、アンテナ(受信機)を設置するだけで利用できる。光ファイバーがない場所や携帯基地局が届かない場所でも、空が見えればインターネットに接続可能だ。
ただし、スターリンク衛星システムを介して外部と接続するには、必要な端末が利用可能でなければならない。ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)によると、スターリンク端末はイランでは違法であり、「多くの場合、ドバイやイラク領クルディスタンからの国境を越えて小型船で密輸されなければならない」という。
政治指導部は先週末、イランの約9000万人のほぼ全員のインターネットアクセスを遮断した。ここにきてイラン当局はスターリンクのユーザーを追跡し、国内で禁止されている同サービスの遮断に乗り出してきた。当局は週末からイラン西部でスターリンクの衛星アンテナを捜索し、押収し始めたという。
ソ連・東欧共産圏と西側民主圏が対立していた冷戦時代、ハンガリーでの取材で1人の民主改革派のビジネスマンと話したことがあった。彼は当方が日本人である分かると、「日本は共産圏解放に大きな貢献をしている。小型のラジオや録音機など日本の電気通信機材は共産圏下で地下活動を強いられている反体制派活動家を助けてきた」と説明してくれたことを思い出す。
21世紀の現在、インターネット時代だ。マスク氏はイランやウクライナの民主化を願う人々に対しスターリンクの無料利用を認めているという。

マスク氏とトランプ大統領 トランプ大統領Xより
編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2026年1月15日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。






