「縁なんてドンドン切れ!」という人が縁を切られる

黒坂岳央です。

SNSでよく拡散され、反響の良い投稿として「縁を大事にするより、少しでも気に入らない相手はドンドン要らない縁を切れ」というものである。

自分自身、若い頃は縁に無頓着で携帯の電話番号の度に、丸ごと縁が切れてしまったこともあった。だが、今は深く反省し、できるだけ縁を大事にするようにしている。

SNSで威勢よく「縁なんてガツガツ切って自分が選ぶ側になれ」といった話は、そのままブーメランになる。人嫌いを公言する人こそ、まともな人から「関わりたくない」と縁切り対象になると思うのだ。

※もちろん、搾取気質の相手や迷惑な人は縁切りするべきだろう。ここで言っているのは「縁を切ること自体」を否定しているのではなく、「それを万能戦略・優越ポジションとして語る態度」を問題にしている。

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「自分が選ぶ側」という傲慢さ

「縁を切れ」と主張する人は、常に自分が「選ぶ側」に立っていると錯覚している。確かに仕事ならそうしたパワーバランスは存在するかもしれないが、プライベートな人間関係はフラットなものであり、本来はお互い様のはずだ。

「自分が常に選ぶ側」という思考は、裏を返せば相手を「下」に見る傲慢さの表れである。その傲慢さの根拠となる価値提供が出来る実力者なら文句は出ないが、多くの場合、そうではないだろう。

また、彼らは自分が相手を品定めしている感覚だろうが、それをいうなら同時に相手もまた自分を品定めしているといえる。

仕事以外の場で、相手から「査定」されるような不快感に耐えられる人はいないので、自然に人が離れる。このくらいのメタ認知力がない人が魅力的であるはずがなく、「ドンドン縁切りをしよう!」という人から人が離れていくのだ。

「人好き」が希少価値を持つ無縁社会

令和の現代は、放っておけばつながりが消えていく「無縁社会」である。

「SNSがあるからリアルな人間関係なんていらない」と豪語し、SNSでそれぞれ好みのコミュニティに所属する「人嫌い」が大衆思考のようになった。

だからこそ、令和に人好きは希少性がある。誰もが「選ぶ側」に回ろうとする中で、積極的に人を大事にする「人好き」な人間は、それだけで圧倒的な希少価値を持つ。世の中のチャンスというものは常に大衆思考、行動になった瞬間に消滅し、逆張りが有効になるという本質がある。

筆者はそれを理解したことで中年になった今、できるだけリアルの人間関係を大事にしようと活動している。具体的にいうと自分の子供たちが通う学校で英語の出張授業をしたり、夕方、子供を連れて近所をゴミ拾いしながら散歩している。

こうした行動が何か大きな評価につながるわけではないし、自分も特段、下心があってやっているわけではない。だが、社会貢献活動をすると、「この間、授業をされたそうですね!」と同級生の保護者から顔を覚えてもらい、挨拶を交わし、新たに関係が作られる実感がある。

「人とは関わらない方が楽だ」「縁は積極的に切るべきだ」という考えが広がれば広がるほど、あえて人と関わろうとする行為そのものが相対的に目立つ。これは善悪の話ではなく、人間関係にコストを払う人が減った社会では、それだけで差別化になるという、単純な構造の話だ。

若い頃の感覚を捨てなさい

なぜ、人は「自分が選ぶ側」だと思い込んでしまうのか。それは、若い頃の人間関係のあり方に原因がある。

若さは人気そのものである。筆者は若い頃、相手から積極的に話しかけられ続けた。特にコールセンター派遣をしていた頃は、周囲が30代が多い中で20歳前後で入ったので、黙っていても相手から興味を持たれ、ドンドン話しかけられたり、遊びに誘われたりした。その結果、「自分は人気者」という錯覚をしてしまった瞬間もあった。

だが今振り返るとこれは大きな誤解である。相手が見ていたのは筆者ではなく、「年齢」という記号である。当然、年を取ると知らない人から声をかけられるのはセールスマンしかいなくなるので、「待ちの姿勢」は早い段階で抜く方が良いだろう。

年を取ると、誰しも新規の人間関係の構築が至難の業になる。そんな中、積極的に既存の人間関係をバッサバッサ切っていたら周囲にはあっという間に誰もいなくなってしまう。「合わない人がいなくなった」というのは、イコール自分の周囲に誰一人いなくなったということになりかねない。

それは綺麗事でも道徳論でもない。「自分が選ぶ側に立とうとする」のではなく、「選ばれ続ける人間であろうとする」こと。それこそが、この無縁社会において豊かな人生を送るための、現実的で再現性の高い戦略である。

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働き方・キャリア・AI時代の生き方を語る著者・解説者
著書4冊/英語系YouTuber登録者5万人。TBS『THE TIME』など各種メディアで、働き方・キャリア戦略・英語学習・AI時代の社会変化を分かりやすく解説。