株高の陰に隠れて日本の国債の話題はわき役になっているのですが、1月20日のアメリカの金融市場で突如やり玉に挙がったのが「日本に端を発してアメリカの国債が売られる」という日本国債悪役説であります。この背景にはダボス会議に出席するためにスイス入りしている片山さつき大臣とベッセント財務長官が現地でやり取りをしてベッセント氏から「(日本の国債市場)どうにかしてよ」と申し入れがあったことがあります。
アメリカの国債が売られているのはトランプ氏のグリーンランド問題に端を発するEUへの関税及び、EUからの報復でアメリカ不信、ドル不信が進んでいることが主因だと思います。ただ、ベッセント氏は片山氏に日本の国債市場が「6標準偏差」の動きだと指摘しています。これは6σですから確率的に100万分の3.4と極めてまれで、通常起こりえないような事態が発生していることを指しています。ベッセント氏は国債取引のプロですから6σ説が正しいかはともかく、日本の国債市場がおかしいというのを極めて敏感に察知したのでしょう。
日本の債券市場では高市政権になってから国債の金利上昇(価格は下落)が右肩上がりで続きます。日本の国債は国内で消化されるとされたのは昔の話で今は概ね12%ぐらいが海外でその比率は上昇し続けています。つまり日本政府は日本人からお金を借りているのだから借金天国だ、という発想は少しずつ変わらなくてはいけません。とりもなおさず財政の健全性が国際基準で問われるという意味です。更にベッセント氏が片山氏に苦言を呈したように日本の国債市場の動きが他国への影響を与えると言われれば日本が好き勝手にできるという時代でもないのでしょう。
特に高市氏が衆議院解散をするのはともかく、突如打ち出した食品にかかる消費税を2年間の時限でゼロにするという公約は、それが良いか、悪いかという話を横にして、国債が売られやすく、円も売られやすく、株も売られやすくなるというトリプル安が現実のものになる可能性を秘めています。円安なら株は高いのではないか、という見方もありますが、日本市場が海外マネーにより支配されている中で「日本に投資をすべきか?」という大前提が崩れれば個別企業への投資の話に到達しないのです。

高市首相 首相官邸HPより
海外のファンドマネージャーが世界市場を相手にファンドを組み込む場合、カントリーリスクを勘案します。その尺度は格付け機関の評価もありますが、国債や為替相場といったリアルタイムで動く指標も大きな影響があります。当然政治的安定性も勘案します。そこで国債価格が高市氏就任からずっと下がっているということは海外での評価が上がっていない可能性があるのかもしれません。
個人的には食品にかかる消費税ゼロは余計だったと思います。選挙対策だったのかわかりませんが、自民党内で慎重に討議された気配もあまりありません。片山氏は防戦一方になっており、お仕えする身としてはかなり苦労されているように感じます。片山氏は財源に赤字国債を発行することは考えていないと明言(ブルームバーグ)していますが、市場は疑心暗鬼であります。
また日経などが指摘するように一度消費税に手を付けると「2年で終わらないだろう」という連想が働きます。しかもこれを補填するのに年間5兆円の財源が必要です。日本の時限的措置は例えばガソリン、電気、ガス代の補助などが実質的に恒常的となり、当たり前になる傾向は非常に強いのです。仮に2年経って元に戻す作業を高市氏が自分で自分のお尻を拭くようにするならともかく、首相が変わっていたら恒久的になりかねないとみています。なぜなら食品消費税の引き上げは消費税導入や%の引き上げの際の苦しみと同等のものがあり、誰もやりたがらないのです。
ところで余談ですが、高市氏が解散宣言をしたテレビ報道を見ていて個人的にふと思ったのが「高市氏に政策や政権運営への批判が相当あり、それを一人で受け止めているな」と感じたのです。今の政権は残念ながら総力ではなく、高市氏の独り舞台であります。あの笑顔の裏で相当のストレスを抱えているのがありありと見て取れます。これはリスキーだと思います。政権のグリップがなくて唯一の拠り所は「高い支持率」というのは怪しいのです。高市氏がそこを気にしていて中国問題も含め、解散して信を問うとしたとみています。ですが、今のやり方では高市氏がどれだけタフであろうが、私が期待する4年どころか1年も持たないように感じます。
選挙の行方については様々な意見が飛び交っておりますが、不確定要素がこれほど多い選挙もないと思います。予想と結果に大きなブレが生じるかもしれません。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2026年1月21日の記事より転載させていただきました。





