GPIFの年金積立金を消費減税の財源に流用できるのか?

中道改革連合が食料品消費税をゼロに下げる財源として提案しているのが、政府系の資金を一体運用するジャパン・ファンドですが、これは何でしょうか。

Q. 「ジャパン・ファンド」とは何ですか?

中道改革連合が提唱している日本版政府系ファンド(SWF)の構想です。政府や政府関係機関が保有する公的資産を一元的・戦略的に運用し、その運用益を政策財源として活用する仕組みをつくるというアイデアです。(公明党)

Q. 何をどう運用するんですか?

公的部門が保有する年金積立金(GPIF)や外貨準備(外為特会)や日銀が保有するETF(上場投資信託)などをバラバラに運用するのではなく、一体的運用して効率を高めることがねらいです。

GPIFの資産は約250兆円、外為特会(外国為替管理特別会計)は約200兆円、日銀の保有するETF(上場投資信託)の評価額は90兆円で、合計540兆円です。これを一体運用して年1%の運用益を出せれば、年間5兆円程度の新たな財源が期待できる、というのが中道改革の説明です。

Q. GPIFの収益を年金加入者に無断でジャパン・ファンドで運用できるんですか?

結論から言うと、できません。理由は法的にはかなり明確です。

GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が運用しているのは、厚生年金、国民年金の積立金(年金保険料の一部)で、法的には年金加入者・受給者の将来給付のための資産と位置づけられ、その目的は将来の年金給付と明記されています。

つまり政府の自由財源ではなく、特定目的の資産なので、GPIFの資金を政策目的で流用したり、国有ファンドへ移管したりすることは、積立金の目的外使用になります。移管するには、法改正が必要です。

Q. そんな法改正ができるのですか?

年金制度は強制加入・強制徴収で、将来給付の契約要素を持つ制度なので、制度変更には国会の同意が必要です。積立金の目的外使用を加入者が認めるとは思えないので、国会の同意を得ることは考えられません。

公明党の説明では、実態はGPIFのような運用手法で外為特会や日銀の保有するETFなどの資金を運用するものと思われます。

Q. 外為特会をGPIFが運用できるんですか?

できません。GPIFは財務省とは別の独立行政法人であり、外為特会を運用する権限はありません。外為特会はほとんどが米国債で運用され、今でも年5兆円の運用益を上げて国庫に納めています。

財務省がGPIFの運用をまねて外為特会を運用することは可能ですが、これは為替介入の資金なので、米国債以外で運用することは考えられません。

Q. 日銀の保有するETFの処分を第三者が決められるんですか?

これも不可能です。日銀のETFを政府系ファンドに使う案は以前からありますが、日銀は保有国債で33兆円の含み損を抱えており、資産のバッファとしてETFは必要です。日銀も慎重な検討の結果、毎年3300億円ずつ売却することにしました。

結論

今の制度では、GPIFなどの資金を第三者が運用することはできません。それを可能にするには法改正や年金制度改革が必要で、政治的ハードルはきわめて高い。

またこのファンドで、巨額の運用損が出たらどうするのでしょうか。長期金利が急上昇し、国債保有者が数十兆円の含み損を抱えているときに、運用益5兆円で損害ゼロという楽観的な想定で政府系ファンドをつくるのは危険です。

ただ日本の年金は賦課方式なので、GPIFの積立金は過大です。これを加入者に還元して社会保険料を下げることは考えられますが、今でも徐々に取り崩す設計になっています。

外為特会も規模が大きすぎるという批判は以前からあるので、それを縮小して一般会計の財源にすることは考えられますが、これも一時の穴埋めで「恒久財源」にはなりません。