あまりに大きく変わってしまったアメリカ抜きの社会は成立するか?

トランプ氏は世界をかく乱させている、これを主張するリーダー、識者、学者の声が高まっています。高い教育レベルの人ほどトランプ氏の政策に強い拒否反応を示しているようにも感じます。また力による支配について違和感をもつ人が多いと思います。この場合の「力」は必ずしも軍事力に限らず、経済力や政治力、市場支配力、人脈などあらゆる方面に及び、国家間の対等な交渉は有名無実と言ってよいでしょう。

トランプ大統領と高市首相 首相官邸HPより 2026年10月28日

G7とはサミットのメンバーですが、近年はG2(アメリカと中国)とかG0(リーダーなき世界)など様々な見解が出てきています。ノーベル賞を受賞したコロンビア大学のステグリッツ教授が新定義、Gマイナス1を主張しています。マイナスとはアメリカであります。同教授は現状が想定よりもはるかにひどく、「トランプ氏は世界が団結しないことを前提にしており…」としたうえで11月の中間選挙が「米国で非民主的な動きが大規模に起こるのか、あと数年で米国が元に戻ると思えるのか。世界がそれを見極める機会になるだろう」と述べています。

アメリカ抜きで世界は廻るか、いや、廻す社会が生まれるのか、極めて重要な岐路に差し掛かっているのかもしれません。

Gマイナス1の世界、実はぱっと思い浮かんだのです。CPTTPです。当初アメリカも含めた環太平洋の国々のグローバルな結びつきを目指した協定でしたが、トランプ氏が第一期の時に交渉から脱退をしました。現在は12か国がこの枠組みで協調し、貿易が行われています。成果は日本だけを見ると2018年から24年で域内の輸出が34%増、輸入が51%増となっています。世界のGDPの14.6%を占める経済圏とされますが、ここにはアメリカも中国も入っていないのです。

私ごとで恐縮ですが、会社のクルマを早急に買い替える必要が生じたため、ディーラーを巡り始めました。トヨタに行くと「車がない」「人混みがすごい」「セールスの人に相手にされない」で目当てのSUV系は皆無、クラウンのクロスオーバーが隅の方にあるだけで見るべきものもなく、すごすご退散。隣にあった日産に冷やかしに行くとドアを開けた瞬間セールスマンがささっと寄ってきます。心地よく駄話をしながら日産のSUVの定番「Pathfinderはありますか?」と聞けば「新型が4月頃に出るから5月には納車できる」と。ハイブリッドは、と聞けば「日産では今はない」とにべもない返事。それよりも問題は日産はPathfinderなど多くをアメリカで作っているので「関税の問題があり、値段がいくらになるかわからない」と。ちなみにPathfinder、予約たくさん入っていますか?ときけば誰もいないからすぐに納車できると言われたときには一抹の寂しさを感じました。

アメリカに輸出するのも大変だけど、相互関税でアメリカのモノをカナダに輸入するのも大変になってしまい、3億人の経済圏のために世界中の企業がそこまでシャカリキにアメリカを目指す必要があるのかな、という気がしないでもないのです。

例えばアメリカ、カナダ、メキシコの貿易協定(USMCA)は2036年に失効するのですが、今年7月に見直しをする予定になっています。今のトランプ氏のスタンスからするとこの貿易協定は瓦解するように見えます。その場合、カナダとメキシコはCPTPPに加盟しているので相互の貿易には影響が出ないのですが、両国経済共に真ん中にあるアメリカに頼りすぎたことが仇になることを改めて認識するのでしょう。

中国が不思議な立場をとりました。エヌビディアが開発するAI半導体「H200」はファン会長の努力もありトランプ氏から中国向け輸出許可は得られたのですが、輸入する中国側がNOを突き付けたのです。これは想定外だったと思います。なぜNOなのか理由が明かされていないのですが、中国の内製化が進んできているのだとみています。「中国がそこまでできるはずはない」と高をくくってきたのが西側諸国のこの10数年の歴史でした。中国市場におけるAI半導体はファーウェイ「アセンド910C」がリード、ただ、中国内のAI半導体開発競争は熾烈で50社程度が参入しているとされます。特にエヌビディアの元副社長が立ち上げた「ムーア」社の躍進ぶりが際立っていることから中国が内製化に自信を持ったと私は見ています。

アメリカの強みは何か、といえば世界をリードする新しい仕組みや製品、サービスが次々と生み出されることでした。しかしその優位性が失われたのは自動車産業を見るだけでもよくわかるでしょう。今テクノロジーの世界でも必ずしもアメリカが圧倒する時代ではなくなるとすればアメリカが圧倒的支配力と優位性があるものが少なくなる危機と言えるかもしれません。

アメリカ抜きの社会は成立するか、というよりアメリカ社会がかつてのアメリカとあまりに大きく変わってしまったことで他国が様子見をし、アメリカ抜きで自立できる経済を作る傾向を見て取っています。トランプ氏は強みもありますが、弱みも多く、恐竜時代のティラノサウルスのような感じがしないとも言えません。スティグリッツ教授の中間選挙に対する質問に私が答えるとすれば「アメリカは元には戻らない。前人未到の世界に入り込むがそこに輝かしい未来があるかどうかは誰もわからない」というのが私の意見です。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2026年1月22日の記事より転載させていただきました。

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会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。