米中首脳と市場に嫌われた高市首相は敗北? 勝っても三重苦で八方塞がり

自民党HPより

衆院が23日解散され、2月8日に投開票されます。毎朝、官邸に入る時、無理に作ったような笑顔をカメラに振り向け、印象操作には余念がありません。一年間で最も寒い週は、1月20日から始まる大寒(1月下旬~2月上旬)の期間だそうですから、選挙運動、投票日がはさまります。なんでこんな時期に解散、選挙をやるの声が溢れています。

豪雪地帯では選挙運動に苦労するし、大学入試のシーズンにあたり、受験生や親は、選挙どころではないでしょう。豪雪のニュースが流れるたびに、選挙への反感が高まる半面、高市首相は「高市支持が低い高齢者は家にこもり、高市支持が高い20代、30代が投票に来てくれたほうがいい。計算通り」と思っているのかもしれません。

解散があった23日、25年の消費者物価は前年比3.1%と発表されました。高市首相は円安、輸入インフレを是正する気配は乏しく、インフレ税を頼りに、財政拡張を続けるつもりのようです。

対中、対米、対市場との関係悪化

わたしは、高市首相は3重苦を背負っていると考えます。まず対中関係の悪化、それに続く微妙になってきた対米関係、高市不信を強める市場(債券、株、為替)の3つです。

世論調査の結果が出そろっていないので、予想は難しいにせよ、

① 仮に選挙で勝ったとしても、大勝しなければ解散した意義が問われる
② 3重苦がだんだん強まり、八方塞がりになる
③ 勝ったとしても、1年もつかどうかの短命に終わる

とみます。

高市首相にとって極めて重大なのは、外交的要因に続き、経済的要因で対米関係が微妙になってきいことです。外交的要因というのは、トランプ大統領が高市首相に電話をかけ、「米中関係の改善を図っている時に、台湾有事発言のような中国を刺激することを言わないでほしい」(昨年11月)という意味のことをいい、高市外交にクギを差したことです。

米財務長官のきつい警告を聞いたか

それに続き、ダボス会議(スイス)の期間中、ベッセント財務長官が「米金利の急上昇(米国におけるトリプル安の原因)について、日本からの波及効果を分離して考えることは非常に難しい」(20日)と語ったことです。これは極めて重大な発言で、高市氏の積極財政、飲食料品の消費税ゼロ方針による財政赤字の拡大、長期金利の急騰に不満を示したのです。

まさに高市氏の財政政策のど真ん中に牽制球を投げ込んだのです。「台湾有事は日本有事発言」に対するトランプ大統領の警告は、高市外交のこれまたどん真ん中に直球を投げ込んだのです。

積極財政の意味を財政膨張でなく、「積極的に財政健全化の道を探る」に変えていくことです。「国の予算の作り方を根本から変えていく。国論を二分するような大胆な政策をする」などの高市発言は威勢がよく、本人は陶酔しているようです。日本国内ばかりか、米国や国際金融市場も高市氏に危うさを感じとっているというのがこの問題の本質です。

国際金融市場、米国からの警告を軽視し、財政赤字の拡大、長期金利急騰を座視していると、本格的な日本売りを仕掛けられることになる。

このベッセント長官の発言に対する日本メディアの感度は鈍すぎる。日経はかなり踏み込んで報道するようにはなってきました。読売新聞などは、一般記事でほとんど触れず、23日の社説「消費減税の公約/無責任な大衆迎合を競うな」で初めて触れ、社説の末尾でわずか6行ですませ、「日本が国際市場混乱の一因とされるのは避けなければならない」と指摘しました。国内の永田町の情報ばかりでなく、国際市場を踏まえた分析をもっと望みます。

高市氏はトランプ氏と親密な関係を築いて、対中、台湾外交に支持を得たいと願っているのでしょう。トランプ氏はTACO(急な方針転換の常習犯)と言われるように、「トランプ氏と組んだつもりでも、いつ梯子を外されるか分からないから要注意」というのが本当のところでしょう。

啖呵を切る政治手法の危うさ

3重苦の3つ目は、高市首相の政治手法の危うさです。解散表明演説で「高市早苗が首相でよいのかどうか。主権者たる国民の皆さまに決めていただくと考えました」と真っ先に語りました。

なにか啖呵を切ったような口ぶりです。首相に就任してわずか3か月で、成果をだすならこれからという時に、「私に任せてくれるか」と聞かれても、有権者は単なる印象からしか判断のしようがない。かりに選挙に勝ったら、「あとは私に任せてくれ」と気持ちでしょう。かったらさらに独走を続けるのではないかと懸念する声が聞かれます。

日経の一面見出しに「金利上昇下/危機感薄く」というのがありました。市場ばかりでなく、米国の財務長官(トランプ氏の側近)からも「要注意」という警告を受けています。危機感が薄いままだと、日本売りが鮮明になり、英国であったばかりのトラスショック(22年、トラス首相の大規模減税に市場が波乱を起こし、就任44日で退陣)が起きかねません。高市首相はもっと国際社会の先例を学ぶべきです。


編集部より:この記事は中村仁氏のnote(2026年1月23日の記事)を転載させていただきました。オリジナルをお読みになりたい方は中村仁氏のnoteをご覧ください。