トランプ米大統領の最近の一連の発言をみていると、松尾芭蕉の有名な句、「物言えば唇寂し秋の風」をどうしても思い出してしまう。うっかり口を滑らせると、自分で後悔する、と謳った句で、他人の欠点や自分の長所は、絶対にしゃべるべきではないという内容だ。

トランプ・ファンのメローニ伊首相もトランプ発言に激怒、2026年1月24日、イタリア政府公式サイドから
デンマークを含む欧州諸国を悩ましたトランプ大統領のグリーンランド領有に関連した発言がようやく沈静化したと思っていた矢先、トランプ氏は22日、フォックス・ニュースとのインタビューで、北大西洋条約機構(NATO)のアフガニスタン支援ミッションについて言及し、「米国はNATOを必要としたことは一度もない。NATOのいくつかの国がアフガニスタンに部隊を派遣したが、彼らの部隊は少し後方、前線からやや離れた場所に留まっていた」と発言したのだ。欧州のNATO加盟国からは「アフガン派遣で犠牲となった兵士の名誉を侮辱する」といった強い反発の声が出てきている。
イスラム過激派の国際テロ組織「アルカイダ」の2001年9月11日の米国同時多発テロ事件を受け、米国は同盟国の支援を得るためにNATO条約第5条を発動した。それを受けてイギリスやドイツなどのNATO加盟国は、タリバンやテロ組織アルカイダとの戦争に自軍をアフガンに派遣した。NATO条約第5条が適用されたのはNATO史上初めてのケースだった。
NATOのアフガン派遣(ISAF)は、2001年9.11テロ後のタリバン政権崩壊を受け、治安維持と国軍支援を目的に2003年から実施された。最盛期には約13万人の兵力を擁し、米国、英国、ドイツ、フランス、イタリア、カナダ、トルコなど、NATO加盟国を中心に展開。非加盟国(パートナー国)からも参加があり、一時は約50カ国以上が支援を提供。2021年8月のタリバン復権により20年におよぶNATO軍の活動は幕を閉じた。20年以上続いたアフガン駐留で同盟国全体で約3,500人以上の死者を出した。
ちなみに、NATO公式ウェブサイドや米国国防総省によると、国別の死者数は、米国2461人、英国457人、カナダ159人、フランス90人、ドイツ62人、イタリア53人、デンマーク43人、ポーランド43人などだ。
ところで、トランプ氏の発言に最初に噛みついたのは英国だ。スターマー英首相は「トランプ大統領の発言は不快で、本当にひどい。アフガニスタンで愛する人を亡くした、あるいは負傷したすべての人々を傷つけるものだ」と述べ、米国大統領に対し、被害を受けた人々に謝罪するよう要求している。
ドイツのボリス・ピストリウス国防相も「ドイツは任務に多大な犠牲を払った。兵士59人と警察官3人が死亡した。負傷者の多くとその家族は、今もなお苦しみを強いられている」と語った。ピストリウス国防相は24日、国防省のWhatsAppチャンネルで述べた。
トランプ・ファンを自負するメローニ首相も「テロを煽る者に対するこの大規模作戦において、イタリアは同盟国と共に即座に対応し、数千人の兵士を派遣し、国際ミッション全体の中で最も重要な作戦地域の一つである西部地域司令部の全責任を担った。約20年にわたる献身の中で、我が国は疑いようのない代償を払った。だからこそ、NATO諸国のアフガニスタンにおける貢献を軽視する発言は、特に同盟国からの発言であれば、決して受け入れられない」と説明。そして「イタリアと米国は、共通の価値観と歴史的な協力に基づく強固な友情で結ばれている。このパートナーシップは、特に現在の課題を踏まえると、極めて重要だ。しかし、友情には相互尊重が不可欠だ」と強調した。
また、ロンドン発の23日ロイター通信によると、ポーランドのコシニャクカミシュ国防相は「犠牲は決して忘れられることはなく、軽視されてはならない」と述べている。一部の政治家は、「トランプ氏はベトナム戦争の徴兵を回避した人間だ」と指摘している。
なお、欧州諸国から自身のアフガン発言に対する強い反発を受けたトランプ大統領は24日、自身のソーシャルメディア「トゥルース・ソーシャル」で、「英国の偉大で非常に勇敢な兵士たちは、常にアメリカ合衆国と共にある!」と、英国兵については称賛の言葉を送っている。
編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2026年1月26日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。






