遠い過去となった昭和においては、金利が十分に高かったので、例えば、退職金2000万円を6%で安定的に運用して、毎月10万円の所得を得て、公的年金を補完することも可能だったのである。逆に、退職金額の水準は、そうした利回り水準を想定して、設定されていたのでもあろう。

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6%での安定運用が過ぎ去った夢となった現在でも、資産運用で公的年金を補完するという金融機関の営業話法は健在である。例えば、つい最近まで継続していたゼロ金利のときには、2000万円の預金をもつ高齢者に対して、3%程度の毎月分配金が見込める投資信託を購入すれば、毎月5万円を年金の補完として受け取れるとする販売話法が横行していたのである。
もちろん、3%程度の安定的な毎月分配金というのは、基礎となる金利がゼロのときには、非現実的である。実際には、表面的な金利が高い外国通貨の債券や低信用格付の社債への投資によって、見かけ上の分配金を大きくし、裏には、元本価値が減少する大きな危険、即ち、元本価値の減少分を分配金として受け取るにすぎない事態になる危険を伏在させていたわけである。しかも、高い手数料によって、確実に元本は減少していくのである。
その他、潜在的に大きな危険を伏在させることで、表面的な利息配当金収入を多く見せようとする営業は、毎月分配の投資信託やアパート経営から、詐欺まがいの投資案件に至るまで、そこらに横行していたのである。逆にいえば、それだけ、人々の金利生活への憧れが根強く、その憧れが悪用され易かったのである。ただし、こうした金利生活への憧れは、決して投資への無理解から生じているのではなく、むしろ、投資の本質を十分に理解した人々の努力の根底にあるものであって、そこに、悪質な業者が付け込んだだけである。
現在では、政府は、勤労層に対して、勤続期間全体にわたる超長期的な資産形成を推奨している。つまり、老後に憧れの金利生活を実現する方法として、勤労期間中に元本を大きくするように努力すべきだとしているのである。そして、更には、できるだけ長く働くことも推奨しているようである。なるほど、金利生活も憧れだが、生きがいをもって、死ぬまで働き続けることも憧れだということか。
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森本 紀行
HCアセットマネジメント株式会社 代表取締役社長
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