聖書の世界では3大天使が知られている。ミカエル、ガブリエル、ラファエルの3天使だ。それぞれが特定の使命を担っている。ところが、その3大天使の他に、「天使メローニ」が出現し、ローマっ子たちは驚いている、という話を紹介したい。

「天使メローニ」の壁画、メローニ首相公式サイトから
「天使メローニ」が出現したのは、ローマ歴史地区にあるサン・ロレンツォ・イン・ルチーナ大聖堂だ。同大聖堂は、1946年の第2次世界大戦終結後に亡命した最後のイタリア国王ウンベルト2世の大理石の胸像を所蔵していることでも知られている。胸像の上部には2体の天使が描かれているが、修復された絵画の一つの天使の顔があのイタリアの首相ジョルジャ・メローニ氏に酷似していることから、「天使メローニ」の出現としてローマっ子を驚かしているのだ。
この異例の絵画は、サン・ロレンツォ・イン・ルチーナ教会の脇礼拝堂に飾られている。日刊紙「ラ・レプッブリカ」が31日に報じたところによると、翼を持つ「天使メローニ」は、イタリアのブーツを描いた巻物を手にしている。その顔は右派政党「イタリアの同胞」のメローニ首相に驚くほど酷似しているのだ。
教区によると、教会は現在修復工事中で、工事は「変更や追加は一切なし」で行われる予定だった。そのため、天使の顔の変更は装飾家の独断によるもので、関係当局には報告されていなかったというのだ。
聖堂を管理する教区によると、今回の改修作業は教会の他の部分で作業を行っていた専門の修復業者ではなく、聖具室管理兼装飾家のブルーノ・ヴァレンティネッティ氏によって行われたという。同氏は教会で定期的に働くボランティアだという。
ちなみに、新聞の報道によると、ヴァレンティネッティ氏は政治的には右翼支持者だ。故シルヴィオ・ベルルスコーニ首相(右翼ポピュリスト)の別荘の改修作業にも雇われていたという。
大聖堂の教区長ダニエレ・ミケレッティ神父は「今朝新聞を読み、修復された作品を見ました。確かに似ている部分はありますが、なぜそのような形にしたのかは修復者に聞いてみないと分からない」と、ANSA通信に語っている。
ローマ教区公式サイトには31日、「サン・ロレンツォ・イン・ルチーナ教会の絵画修復に関する声明」が掲載されている。曰く「ローマのサン・ロレンツォ・イン・ルチーナ教会の十字架礼拝堂の絵画装飾の修復に関して、1)ローマ管区長と所有者(FEC)、そしてローマ管区宗教建築局は、問題のフレスコ画(2000年)に対して、「一切の修正や追加を行わない」ことで一致していた、2)天使の顔の修正は装飾家の主導によるものであり、管轄当局には報告されていない。3)管区長は、教区のダニエーレ・ミケレッティ神父と共にこの件を調査し、可能な対策を検討することを約束する」。
また、バルド・レイナ枢機卿は今回の出来事に遺憾の意を表している。「関係者の責任を明らかにするために必要な調査を直ちに開始する。ローマ教区は、芸術的・精神的遺産の保護に対する決意を新たにし、聖なる芸術とキリスト教の伝統の画像は、典礼生活と個人および共同体の祈りを支えるためにのみ意図されているため、悪用または搾取されてはならないことを改めて強く表明する」と述べている。
政治家の反応も早かった。下院文化委員会の野党民主党(PD)イレーネ・マンツィ党首は、アレッサンドロ・ジュリ文相に対し、ローマ建造物管理局を直ちに介入させるよう要請している。曰く「恣意的な改変、個人化、科学的根拠に基づかない介入を禁じるイタリア文化遺産及び景観保護法典の重大な違反に該当する可能性がある」と指摘している(オーストリア国営放送のヴェブサイト)。
一方、天使に格上げされた?メローニ首相の反応はどうか。メローニさんはインスタグラムに絵画の写真を投稿し、「私は決して天使には見えません」と述べているが、「私に許可を取らずに・・」といって怒ってはいない。案外、喜んでいるのかもしれない。
いずれにしても、教会側が「天使メローニ」の絵画を撤去しない限り、その絵画を一目見ようと、サン・ロレンツォ・イン・ルチーナ教会に多くの観光客が殺到するのは間違いないだろう。ローマ市内に新しい観光地が生まれるのだ。
編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2026年2月2日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。






