“ホスト依存症” ~ 回復への道です --- 田中 紀子

寄稿

坂口杏里さんはホスト依存症か?という記事を書きましたが、その続きです。

ホスト依存症だった仲間に聞き取り調査をしてわかったことは、ホストにはまってしまうのは、

「私が、この人を助けてあげたい!」
「この人のメンツをたたせてあげたい!」

という共依存的心理なのです。

では、共依存になりやすい我々のような人達と言うのは、
一体どういう人なのでしょう?

息子のギャンブルによる借金を延々と尻拭いしたり、
酒乱の夫から離れられなかったり、
商売で甘言を吐いていることが分かっていながら、
ホストに大金を使ってしまったりといったことが、
何故繰り返されてしまうのでしょう。

私は、自分の体験も含めて、思うのですが、
最大の原因は自分の存在理由が分からない、認められないという、自己肯定感の低さだと思います。
自己肯定感と言うのは、地位や名誉や学歴や家柄とは関係がありません。
自分で自分を愛することができているかが一番の問題です。

自分は自分の情けない所やカッコ悪い所、ずるい所や、臆病だったり、嘘をついていることも良く知っています。

人に好かれようとして、好きでもないものを好きと言ったり、自分が仲間外れにされたくなくて、嫌ってもいない人をいじめたり、嫉妬心から誰かを無視してしまったり、人が離れていかないか不安でたまらず試したくて嘘をついたり、そういう自分って、ちょっと好きになれないですよね。

でも人って大抵の場合、そんな所が多少はあります。
その上で、そんな自分とも上手く付き合うことができるのですが、共依存になってしまう人は、そんな自分を許せない!という完璧主義の人や、自分を嫌い「何故、自分がこの世に生きているか分からない」と、自分で自分を責めることがやめられない人達なのです。

だから問題の多い人が身近にいると、
「自分は役に立つ」という感覚が非常に簡単に得られるので、「ありがとう!」と嬉しそうな顔をされると、「ここには自分の役割がある」と、居場所感が感じられ、自分を差し出すような真似は、苦しいのだけれども、その役割から降りられなくなってしまうのです。

ホストに貢ぎあげ、その借金の返済のためにAVデビューしようとしている坂口杏里さん。
そして、ホストに貢ぎあげ、犯罪にも手を染めた脇坂英理子先生。
どちらも、傍から見れば、華々しく見える経歴でも、本当は、誰かに認めて欲しくて、誰かに必要として欲しくて、その確認行動が止められなかったがゆえに、ホストに入れあげてしまったのかもしれません。

余談ですが、私たちギャン妻(ギャンブラーの妻)の間では「あるあるネタ」がいくつかあるのですが
その中でも共依存の恋愛事情版について書きますね。
若い頃からこんな傾向のある人は要注意です!

・恋人といてもいつも淋しい
・「私のこと好き?」と常に確認せずにはいられない
・少しでも相手の行動が見えなくなると不安でたまらない
・気持ちを確認するために「告白された」などと嘘をついたことがある
・恋人から「重い」と言われたことがある
・恋人に対して、掃除、洗濯、食事作りなど、何から何までやってあげたくなる

どうですか?あなたは大丈夫でしょうか?

さて、ではホスト依存症からどうやって回復していくのでしょうか。
仲間の場合、借金で行き詰まり、多重債務者の相談にのってくれる機関を訪れ、
そこでギャンブルの自助グループを勧められ、繋がってきました。

ホストとギャンブルは違いますが、日本では行動依存のグループは、そう多くはありませんので、ギャンブルに他の行動依存の人が繋がってくるケースはよくあります。

そして、自助グループに通っているうちに、仲間意識が芽生え、そのうち仲間のサポートをするようになり、自分の居場所感ができてきたそうです。するともうホストで心の空白を埋める必要がなくなったのです。

ホスト依存症も、回復の道のりは他の依存症と同じです。
できるだけ自分を嫌いにならないように、正直になり、そして他者を思いやり、寛容さと感謝を身につける。そして他者貢献によって、自分の居場所や存在理由を見つけていくのです。

私を見て貰えば一目瞭然ですが、もちろんだからといって
聖人君子になれ!というのではありません。
自分と折り合いが付けられるようになれば良いのです。

坂口杏里さんは、果たしてAVの世界で居場所が見つかるのかな?
自分で自分を好きでいられるのかな?と気になります。

脇坂英理子先生は、詐欺のお金をお母様が弁償するとおっしゃっていましたが、それは絶対にお勧めしません。
自分を嫌いにならずにいるためには、自分が撒いた種は、自分で責任をとらなくてはなりません。

今すぐに払えなくても、コツコツと自分で返済するべきであり、隠している事があるなら、自分に正直になるべきですね。

ホストに通うことが止められなくなり、大金を使ってしまって悩んでいる方、
また、そんな娘さんの借金の尻拭いで困っている親御さん、
まずは、私たちのような依存症の相談機関につながって見て下さい。

一人で抜け出すことは、なかなか大変です。
まずは同じ問題から抜け出した、仲間を見つけることから始めてみて下さい。
力になりたくてうずうずしている、私たちのような回復者が沢山待っていますから!


編集部より:この記事は、一般社団法人「ギャンブル依存症問題を考える会」代表、田中紀子氏のブログ「in a family way」の2016年9月8日の記事を転載しました(見出し、本文の一部をアゴラ編集部で改稿)。オリジナル原稿をお読みになりたい方は「in a family way」をご覧ください。