
衆院選は自民党の歴史的大勝利に終わった。 中道改革連合の大敗を除けば概ね現状維持付近という中で、ひときわ勢力を拡大したのがチームみらいである。
チームみらいの躍進の理由は様々に語られているが、一つ大きな節目となったのが、高齢者の医療費自己負担3割の提言だろう。当初はテック政策を中心とした限定的な活動に留まるのではないか、と見られていた側面もあった。それが、この提言により、チームみらいは踏み込んだ政策提言もしてくる集団である、という信頼感が得られたと感じる。少なくとも筆者自身には、そのように映った。
いずれにせよ、その後の消費税減税反対も含めてチームみらいは、社会保障改革に本気で取り組む政党である、ということが大きな特徴と言えよう。
そうなると、比較されるべきは日本維新の会である。もちろん維新は社会保障改革を一丁目一番地と掲げて選挙に臨んだ政党である。そういう点で日本維新の会とチームみらいは、出自、経路はかなり違えど、現状では結果的に、「同じ目標に向かって進む政党である」といって過言ではない。
合同研究会の目的とスケジュール感
ということを前置きしつつ、私が提案したいのが
日本維新の会とチームみらいは直ちに「社会保障DX・AI活用研究会」を立ち上げるべき
ということである。
研究会の目的としては、
維新側は、社会保障改革を進める上で、チームみらいの武器であるDX・AIに関する知見・技術を取り入れること。
一方チームみらい側は、単なるテック集団を超えて、政治の実情、現場の課題、解決すべき問題の解像度を上げるべく研究すること。
という建て付けが現実的だと考える。
そして、具体的には2月、3月で集中的に開催したのち、チームみらいの独自改革案を4月上旬に提出することを目標とする、というスケジュール感を提案したい。 これがどういう意図で何の効果を狙ったものかを以下に解説する。
社会保障改革が決まる「本当の」タイムライン
まず、実際の社会保障改革案が成立するまでの流れとタイムスケジュールを大まかに示しておこう。
4月〜5月:骨太の方針に向けた「水面下の調整」 官邸・財務省(主計局)と厚労省の間で非公開の調整・認識共有が行われ、政治的・財政的な許容範囲が事実上形成される。
6月上旬:「骨太の方針」閣議決定 ここで示される方針が、その後の制度設計の事実上の前提条件となる。
8月末:概算要求(予算請求) 各省庁から財務省へ、来年度の予算要求が出される。
秋以降:審議会・国民会議での調整・正当化・最終確定 厚労省が整理した制度案を前提に、具体的な制度の中身(負担率や対象範囲)を議論する。ここで微修正や政治決着が行われ、12月の予算編成で最終決定となる。
4月〜5月の「水面下調整」こそが勝負
このプロセスの中で、チームみらいによる改革案がもっとも影響力を発揮できるのが、4月〜5月の水面下の調整の段階である。ここに、忖度のない、踏み込んだ新たな改革案を提示することができれば、厚労省の素案へ影響力を及ぼすことができる。逆に言えば、素案が出来てからでは微修正レベルにしか影響力を及ぼせない。
そして、この素案形成に日本維新の会は閣内から政策協議や政府内調整を通じて後押しする余地がある。これらの合わせ技により、改革素案はより踏み込んだものとして進めることが出来るようになる。
より具体的に例示すると、厚労省素案は松竹梅と言われるように、行政内部では複数案が検討されることが多く、現状維持案、妥当な改革案、より踏み込んだ案が提示され、その間を取る形で政策が決定されるわけだが、そのより踏み込んだ案に、チームみらい案そのままとまではいかずとも、かなり近い案が検討レンジに組み込まれる可能性が高まる。
案が出来てしまえば、その中での選択、折衷の議論となるわけで、より改革を進める素地を作ることができる、ということである。むしろ、ここでどこまで改革の範囲を広げられるか、が極めて重要な局面になる。 まず踏み込んだ案がなければ検討の幅も広がりようがないのである。
維新とみらい、双方にある政治的メリット
そして、これに維新、みらいの合同研究会を挟む意義も説明しよう。
日本維新の会としてはもちろん社会保障改革を進めたい。しかし、閣内に入った以上、そう簡単に大幅な制度変更を伴う提案はしづらくなっている。そうなると、どうしても角を丸めた現実的な提案に留まらざるをえなくなる。もしもここで維新の案がもっとも踏み込んだ案になっているとすれば、結果的にはそれをさらに折衷した妥協案に落ち着きがちになる、というのが自然な流れである。
一方で、チームみらいが独自案として、維新の想定する現実的な案よりも踏み込んだ案を提出した場合、落とし所がまさに維新の意図通りの案にできる可能性は高まる。そうなった場合には、社会保障改革における政策実装の主体として評価を得るのは維新となる可能性が高い。つまり、維新としてもチームみらいが踏み込んだ案を出すことには政治的な実利がある、ということである。
また、チームみらいとしても、メリットは計り知れない。チームみらい自体がまだ出来たばかりの政党であり、実績はほとんど無いに等しい。そこに改革案を提示すること自体が、政党としての大きな実績となる。その前段階で維新と研究会を開催することは、知識、経験の面でも得られるものは大きいだろう。
そしてチームみらいにとってはスピード感は他党に負けない最大の武器であろう。AIあんのによる24時間配信など、AIや技術を駆使した実績は多くあり、改革案を直ちに提出することは現実的な選択肢の一つと言える。
しかも、政権内の責任ある立場にいるわけでもないので、案の精度はそこまで要求されない。むしろ新規性、方向性の提示こそが党の存在感のアピールとなるはずである。そしてその案が、思想性を帯びず、純粋に問題解決的な技術的な案であれば、それもまた旧来の政治手法と一線を画した新たなアプローチとして評価も得られるだろう。しかも維新との合同研究会を経ている以上、維新の後押しも得られる。存在感を示す絶好の機会となるだろう。
高市政権にとっても「改革の口実」になる
また、もう一方で高市政権にとってもメリットはある。
自民党としては日本医師会など既得権益層との距離はとても近い。忖度せざるをえないことは、これまでの歴史が証明している。その中で改革を進める、となった場合、維新とチームみらいの提案がある、ということで政治的な負担を分散できる可能性がある。つまり、自民党が主導したわけではないが、維新とチームみらいが言うから仕方ない、という言い訳ができると言うことである。そして同時に改革自体が実績としてアピールできるものであり、政治的実利もある。
つまり、上記の通り、4月上旬にそれなりにまとまり、かつ踏み込んだ改革案をチームみらいが提出できれば、どの政党にも有利に社会保障改革を進めることが出来る、ということである。
これは直ちに「検討する」だけでなく、実行すべきではなかろうか。
なぜなら、制度形成のタイミングを踏まえれば、早期の提案こそが最大の影響力を持ち得るからだ。
日本維新の会、チームみらいには是非とも採用していただきたい、と切に願う。
編集部より:この記事は精神科医である東徹氏のnote 2026年2月11日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は東徹氏のnoteをご覧ください。






