
自民党HPより
衆院選について新聞社説は「高市首相の歴史的な圧勝」(朝日)、「歴史的大勝」(読売)など、圧勝、大勝という表現で全紙が共通しています。どうでしょうか。議席数は圧勝でも、有権者の投票行動をみると、圧勝とはいえない。人気がなかった岸田政権下の衆院選(21年10月)と比べると、有権者の投票率、自民党の得票率はほぼ同レベルなのに「歴史的圧勝」が起きたのはなぜか。そのことを高市首相は自覚してほしいのです。
選挙結果のデータの分析がいろいろ公表されています。それをみると、高市フィーバーが起きたとは言えないと思う。名目(議席数)で圧勝であっても、実質(投票率、得票率)は低人気の岸田首相並みに過ぎなかった。その差が大きく出たのは、上位候補が有利になる選挙制度(小選挙区289、比例176)の下で、野党の多党化・分散化が高市首相が圧倒的に有利な状況を作り出したのだと考えます。
自民党が316議席を獲得し、全議席の3分の2を獲得しました。日経が分析したデータ(10日)によると、「自民得票率は21年並みの49%」、「小選挙区は86%制す」でした。高市フィーバーが起きて、自民党の得票率が急上昇し、戦後初の「3分の2議席獲得」となったのと違うのです。
人気のなかった岸田政権の21年衆院選の自民党得票率は48%で、今回の49%と同じレベルです。それに対し議席占有率は前回は65%、今回が86%で両者は大差がつき、「高市首相が歴史的圧勝」となりました。朝日は「有権者のうち小選挙区で自民候補に投票したのは4人に1人」にすぎないそうです。投票率は56.2%で、前回の58.8%を若干上回った程度で、高市フィーバーで有権者がどっと投票所に行ったわけではありません。
「3分の2」に危惧を覚える有権者
読売新聞が発表した世論調査結果(11日)をみると、自民圧勝について「よかった55%」に対し「よくなかった32%」で、かなりの多数が圧勝に危惧を覚えているようです。「野党がもっと議席をとったほうがよかった49%」、「ちょうどよい39%」で、自民は取り過ぎと見る有権者は多い。かなりの有権者は今回の「高市圧勝」は行き過ぎだと考えている。
高市氏という初の女性首相、長期政権の期待とともに、野党の乱立が野党にとって最大の敗因、自民党にとっては大きな勝因となったと思います。そういう分析ができますから、1強を過信して、高市首相が独走すると、足元をすくわれかねません。1強はあくまで名目値、得票率や投票率が実質値という考えで、政治に取り組まねばなりません。
自民は総合病院、野党は街の個人医院か
「自民党は総合病院」で、様々な利害関係者を取り込むシステムと、かねてから言われてきました。野党は循環器内科、胃腸内科、心療内科、外科、整形外科など、ターゲットを絞った診療所で、なかなかまとまらない。
今後、野党が乱立し、共通項を共有できないままで行くと、自民党支持率が落ちても政権交代とまでいかないでしょう。野党の中には、自民党と連携、連立するところが出てくるでしょう。与党に対する対抗軸が存在することが政治の暴走を防ぎ、ブレーキをかけられる。
野党乱立では政権交代は起きない
どうしたらよいのか。まとまれる政治課題を中心に取り上げ、野党連合を組んでみるというのはどうでしょうか。選挙制度改革、政治資金規制、世襲議員の制限、首相の解散権の制限などを掲げ、統一連合を作り、日本の政治を刷新する。選挙に勝ち、十分な議席を得られたら、政治改革を成し遂げて、新しい政治環境のなかで解散し、議席を争い、共通項を見出し、連立を組む。
今回の総選挙について、「歴史的な分岐点になる」という見方がありました。「自民党が3分の2を獲得」は「歴史的勝利」と言えるものの、その実態は「分岐点」になったとはいえません。国民の利害関係が分極化し、対立する傾向が強まり、野党の乱立の時代が続くでしょう。与党の対抗軸となりうる野党のまとまり、塊を作る方向を考えるべきです。
編集部より:この記事は中村仁氏のnote(2026年2月11日の記事)を転載させていただきました。オリジナルをお読みになりたい方は中村仁氏のnoteをご覧ください。






