IT先進国スウェーデンがタブレット教育から「紙の教科書」へ回帰

スウェーデンが進めてきたデジタル教育政策が大きく転換した。IT先進国として「1人1台端末」を早期に実現した同国が、紙の教科書中心へと舵を切ったことは、教育分野におけるデジタル化の是非を問い直す象徴的な出来事として世界的に注目されている。単なる方針変更ではなく、学力低下や情緒不安定への対応という性格が強い。

  • 2000年代後半以降、スウェーデンは自治体主導でタブレットやPCを学校へ大量導入し、紙の教科書を削減または廃止する学校も現れ、デジタル社会への適応と学習効率化を目的に教育の全面デジタル化を進めた。
  • しかし約10年後、PISAで読解力や数学リテラシーの低下が確認され、とくに低学年で長文読解力の弱体化、集中力低下、手書き能力の衰えが指摘され、スクリーン読書は紙より認知負荷が高いとの研究結果も公表された。
  • スウェーデンでは2022年の政権交代後、学校担当大臣ロッタ・エドホルム氏がデジタル化の行き過ぎを批判し、2023年8月から紙中心授業へ政策転換が開始されていた。
IT先進国スウェーデン、学校で「紙と鉛筆のアナログ教育」に戻る計画を発表 | 世界のソーシャルグッドなアイデアマガジン | IDEAS FOR GOOD
大規模なICT教育を進めてきたスウェーデンのソレントゥナ市が、紙と鉛筆での学習に戻すことを発表しました。賛否が分かれたこの決定から、教育とデジタルの関係を紐解き、再考します。
  • 主要科目で生徒1人1冊の紙教科書を配布し、静かな読書時間と手書き学習を増やし、デジタル端末は補助ツールへ位置付け変更、幼児教育ではデジタル機器使用の義務を撤回した。
  • 複数年の予算投入で教科書や学校図書館の書籍を整備し、総額は約1億ユーロ規模と報じられ、2026年から学校での携帯電話持ち込み制限やデジタル試験削減も検討されている。
  • 教育省は物理的な本が基礎学習に不可欠と説明し、最新技術が常に最善とは限らないという立場を明確にした。
  • 日本では2020年以降のGIGAスクール構想で全国の小中学生に端末配布が完了し、授業・宿題・テスト・連絡帳までデジタル化が急速に進んだ。
  • 現場の教師からは「板書を写さなくなり記憶定着が弱い」「長文を読めない」「タイピングは速いが作文が書けない」「通知や別アプリに気を取られる」といった指摘も多く、スウェーデンと同様の課題を感じる声が広がっている。
  • 特に低学年で手書き能力低下や漢字定着の弱さを懸念する意見が多く、紙のノート復活を求める学校も一部に出始めていた。
  • 一方で、完全否定ではなくハイブリッドが妥当との穏当な指摘もみられる。

ここ数年のスウェーデンの政策転換は、デジタル教育そのものを否定したというより、基礎学力形成の段階では紙を中心に据えるという現実的修正と位置付けられる。先進国が自らの実験を修正した事例として、各国の教育政策にも影響を与える可能性が高い。

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