留まるところを知らない不動産価格の上昇。日本では今、それが顕著になっていますが、私が住むバンクーバーは1986年からずっと右肩上がりが続いたもののコロナ期の2022年頃をピークに下落傾向にあります。多分、カナダ全体の不動産価格はしばらく上がらない気がします。それは人口流入を抑制したことで不動産価格上昇が止まったのです。

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それを論じる前にその前段の話からスタートしましょう。
現在の日本の住宅価格高騰については材料費や人件費の高騰、更に職人がいないといった問題が指摘されています。建設業の従事者が減り続けている話は昔からあったわけで私がゼネコンに入社した時から「今は日本で最も従事者が多い産業だけど職人の高齢化が進んでいるから将来は厳しくなる」とずっと言われてきたものです。昔は680万人台が今では470万人台で今後、従事者はドラスティックに下がっていくとみています。
なぜ建設業従事者が減るのか、これは簡単です。少子化もあるのですが、それ以上に教育水準が上がったことが理由です。昔はそれこそ中卒、高卒の就職の選択肢として重要だったと思います。それが大卒になると3Kの仕事は途端に嫌になるのです。ましてや東京や大阪、福岡、名古屋、札幌などそれなりの街に出ていきやすくなり、自分を生かす機会が溢れてくると、かつての「働くところがないから建設業に行く」という感じにならないのです。
先日もあるニュースで北陸地方の住宅解体屋が減り続け、解体費用は10年前の2-3倍、しかも順番待ちで9か月待たされたという報道もありました。作るほうならまだしも壊す方になると余計人材がおらず、案外外国人労働者に頼らざるを得ないのが実態なのであります。
つまり社会全体の生活水準、教育水準、期待レベルが大きく上がってしまい、様々な業種に人がいきわたらなくなっている、これが今の日本であります。
ではカナダはどうしたか、と言えば多い年では年間全人口の1%近くの移民を毎年受け入れ、カナダ人に不人気の業種の下支えをしてきたと言ってもよいでしょう。建設現場に行けば何か国語もの言葉が交わされながら作業が進んできたのです。
ところがカナダは2024年にその移民政策と一時的な就労ビザ、学生ビザの発給を大幅に削減してしまったのです。この削減の影響は実は今年に表れるとみています。というのは24年の後半に変更されたポリシーなのでビザ申請でプロセス中のものは止まらなかったのです。実際に窓口で制約が出るのは25年からです。既に一時滞在ビザを取得している人はカナダで適法に滞在し就労できたのですがビザは概ね1-3年で切れますから今年あたりからビザの更新ができず、帰国をする人が続出します。その数、100万人を超えるとされます。仮にその半分の50万人が何らかの就業をしていたとすればその穴埋めができないのであります。特に建設業など下支え業種における人材不足は今後、顕著になるとみています。
ならば建設費は上がるだろう、と推測されますよね。はい、その通りです。ところが100万人単位で住民が減るということは住宅需要も急減するのです。つまり住宅も余ってしまう、これが実は現在起きているカナダの不動産事情なのです。
先日届いた不動産の固定資産評価通知書。住宅から商業不動産まで見事に下がっております。今年の下げ率は6%ですがこれで3年連続の下げでピークからは13%ほど下げています。私の見立てではカナダの住宅事情は更に軟化し、不動産価格もしばらく下げるだろうとみています。唯一の変化の可能性はカナダ政府が移民や一時就労ビザを以前のように発給を増やす政策変更が行われるかどうかにかかります。これがなければ漸減状態が続いてしまうでしょう。
日本でも外国人所有の不動産に対する目が厳しくなっています。ただ実態としては住宅における外国人比率はさほど大きくなく、富裕層による押し上げ効果と短期売買による投機対象になっていることが主因です。よって日本の場合は人口流入を止めるというより英語でフリッパーと称する短期売買者を徹底的に取り締まることで住宅価格の高騰は多少は止められると思います。特に1年程度の短期売買による不動産利益については80%とか90%といった懲罰的税率を適用すべきで、住宅は金儲けのネタではないということを政府が強く示すことが重要です。
次に日本における外国人規制ですが、不動産だけに限って見ると日本経済にはマイナスかもしれません。というのは彼らが多く住むのが安いアパートなのです。これは大家業をする方々の収入源として貴重なはずでこれが無くなると厳しいという大家さんは多いと思います。外国人で億ションを買うケースは言うほど多いわけではなく、そういう報道がやや偏向気味に行われている感じは見受けられる気がします。
欧米の不動産価格の流れを見ている限り、日本だけが出遅れ感による独歩高を続けることはあり得ず、比較的近い将来に不動産価格の鎮静化が起きるとみています。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2026年2月17日の記事より転載させていただきました。






