ウィーンで亡命ロシア人の反戦集会

ロシア軍がウクライナ侵攻してから今月24日で4年が経過する。音楽の都ウィーンで22日午後、1区のシュテファンドーム大寺院前でオーストリアに在住するロシア人を中心とした約50人がロシアによるウクライナ侵攻に抗議する集会を開いた。主催者は「ウイーンで戦争に反対するロシア人」グループだ。

亡命ロシア人の反戦集会、「今立ち上がらなければ悪が勝つ。ウクライナ支援を」と書かれた横断幕、オーストリア日刊紙クーリエ、2026年2月22日付から

活動家で共同主催者のドミトリー氏は「これはもちろん、ウクライナへの4年間の侵略に対するウクライナの人々への連帯を示す行為です。しかし、私たちはこの戦争に反対するロシアの人々、そしてウクライナを支援したために投獄された人々とも連帯しています」という。

侵略戦争が始まった日以来、ロシアでは1,300人以上が戦争に反対する発言をしたとして起訴され、5,000人以上が政治的な理由で迫害されているという。、ウィーンに亡命中のロシア反体制派の中心的な活動の一つは「ロシアの政治犯に手紙を書き、彼らが孤独ではないことを知らせることだ」という。これまで1,000通以上の手紙を書いたという。集会では、囚人の政治犯からの返信も読み上げられた。

集会自体は平和的だった。例年と同様に、英語とロシア語でウクライナへの支援を呼びかけ、「今行動を起こさなければ悪が勝つ。ウクライナにサポートを」と書かれた大きな横断幕が掲げられた。デモ参加者数名は、白と青と白のライトブルーの旗を掲げていた。この旗は、2022年以来、ロシア亡命反対派の一部が別のロシアの象徴として使用している(オーストリア日刊紙クーリエ)。

オーストリア通信(APA)の記者から「デモ参加者数が前年に比べて減少している」ことについて質問されたドミトリー氏は、「戦争に対する国民の疲労感が高まっているためだ。これはオーストリア在住のロシア人にも当てはまる。しかし、今こそ、この戦争が依然続いていることを人々に改めて認識してもらうことが重要だ」と述べている。

APA通信の上記の記事を読みながら、「戦争には勝利者はいない。敗北者だけだ」といった言葉を思い出した。ウクライナ戦争が勃発して以来、欧州諸国はロシア軍の侵攻を受けたウクライナへの支持でほぼ結束してきた。避難してきたウクライナ人に対して、オーストリア政府は支援の手を差し伸ばしてきた。一方、西側に住んでいるロシア人は肩身の狭い思いをする。「自分がロシア人である」ことを公の場で言いにくいという。

亡命ロシア人がウクライナへの支持表明とロシア国内の政治犯への連帯を表明すること自体、勇気がいることだろう。ロシアでは侵攻以来4年目が経過するが、プーチン大統領は今なお「特別軍事作戦」と呼び、戦争とは正式には言わない。「戦争」と言えば、当局から反体制派として様々な迫害を受けることを覚悟しなければならない。ウィーンには多数のロシアからの工作員がいるから、戦争反対を表明し、抗議デモに参加すれば、駐オーストリアのロシア大使館から目を付けられることは間違いない。

2月16日はロシアの著名な反体制派活動家アレクセイ・ナワリヌイ氏(47)がシベリア北極圏ヤマルの刑務所で死去した日だ。ナワリヌイ氏は2023年末、新たに禁錮19年を言い渡され、過酷な極寒の刑務所に移され、厳しい環境の中、睡眠も十分与えられず、食事、医療品も不十分な中、独房生活を強いられた。そして2年前の2月に亡くなった。

欧州の5カ国イギリス、スウェーデン、フランス、ドイツ、オランダの各国政府は14日、「ナワリヌイ氏はヤドクガエルに含まれる毒素から作った毒で殺害された」との見方を発表した。遺体から採取した検体で確認したという。

ナワリヌイ氏は欧米メディアでも知られている著名なロシア反体制派活動家だが、ロシアにはプーチン大統領を批判したゆえに政治犯として刑務所に収監されている多くの国民がいる。ウィーンのロシア人の反戦集会はそのことを思い出させてくれた。彼らは収監されている政治犯に手紙を書き、「私たちはあなたのことを忘れていない」と伝言しているわけだ。もちろん、彼らの手紙が受取人の手に届いているかは分からない。しかし、亡命ロシア人は書き続けるだろう。刑務所にいるロシア人のために、そして西側に亡命した自分たちのためにもだ。

ドイツ民間放送ニュース専門局ntvが先日、キーウ市長のビタリ・クリチコ氏とインタビューしていた。クリチコ市長(54)は戦争で亡くなった息子の母親に功労賞の勲章を手渡していた。息子を失った母親はクリチコ市長の前で「これで勲章は2つ目です。私の2人の息子はいなくなりました」と呟くと、クリチコ市長は何も言えずに母親の顔を見つめていた。元プロボクサーで世界ヘビー級チャンピオンだったクリチコ氏は懸命に涙をこらえていた。


編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2026年2月24日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。

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