2026年衆議院選顛末③ チームみらいの躍進

チームみらい党首・安野氏と幹事長・高山氏
高山幹事長Xより

(前回:2026年衆議院選顛末② 中道改革連合の挫折

チームみらいに投票した理由

2026年衆議院のもう一つの事件はチームみらいの躍進である。獲得議席数は11議席でこれは誰もが予想しなかったことであった。

SNSで特段話題になっていたわけでもなく、動画再生数も低く、マスメディアの露出も高いわけではない。事前の予測調査でも高い値をだしていたところはない。それが11議席も取ったのは驚きであり、不正投票説や陰謀論まで出ている。

しかし、各種出口調査でみらいに投票した人の数は多く、筆者のアンケート調査でも数多くの票を取っており、これくらいの議席をとってもおかしくない。不正や陰謀の有無はわからないが、大量の得票は不正・陰謀のせいではなく、実際に多くの票が集まっている。これだけの票がなぜあつまったのだろうか。これを調べてみよう。

最初に結論を述べておくと、チームみらいは自民党と中道改革連合が右と左ににシフトし、中道リベラルの人たちが投票する先がなくなった隙を埋めた。これは歴史的な偶然の結果であり、チームみらいの躍進は、不正や陰謀論などを使わなくても十分説明できる

今回のアンケート調査では、チームみらいがまさかここまで取るとはおもわなかったので、投票先は「その他」に一括していた。

そこで投票先がその他だった123人に追加調査を実施し、114人から回答を得た。114人のうち8割の91人がチームみらいに投票していた。チームみらいに投票した理由をいくつか用意し、彼らに選んでもらった結果が、図3-1である。薄い青のバーはあてはまるものすべて選んだ場合で、濃い青のバーは最も重要な理由を一つ選んだ場合である。

図3-1

図3-1を見ると、所得税減税を公約にしないから、を上げた人が最も多く、33%いる。

チームみらい以外のすべての政党が消費税減税を唱える中で、チームみらいだけは所得減税を公約にしなかった。テレビなどの報道でも「チームみらいを除くすべての党が消費税減税を公約挙げて・・」という記述が何度もされており、チームみらいは消費税減税を言わない党として認知されていた。

そして、消費税減税には批判的な人も少数ではあるが存在する。消費税減税は人気取りのためだけの無責任政策だと思っている人は一定数存在しており、彼らがこれを託せる投票先を探すとするなら、投票する先はチームみらいしかない。チームみらいは消費税減税を言わない政党ということでブランディングに成功した面がある。

またAIを使った政治というチームみらいの基本方針への支持もあって、これを理由に挙げた人は24.2%いて、チームみらいの政策を理解して投票した人もそれなりに存在する。それ以外に「若さに期待」「新しいから」「利権に無縁」「他党の悪口を言わない」などを上げた人も一定数存在する。複数回答ではすべて3割弱の人があげており、これらもチームみらいを後押しした要因のようである

チームみらいに投票した人の属性

しかし、これらの要因だけでいきなり11議席をとるほどの躍進は望めないだろう。なにか他の要因が必要である。それを求めてまずは投票者の属性を見てみよう。

属性を見たのが表3-1で、比較のためにいくつか他の党のものも記した。これを見ると性別と年齢についてはチームみらいに特段の特徴は無い。女性比率がやや高いが差は5%程度の差である。年齢についても平均年齢48歳で、特に若いというわけでもない。既婚か独身かでも特徴は無い。

ただ、都市圏居住者の数が多い。都市圏とは東京、神奈川、大阪、愛知、京都の5つ都府県のことで、他の政党より10%ポイント程度高い。この意味でチームみらいは都市型政党である。

AIを政治に生かすという方針、メンバーが高学歴のエリート層であることなどは都市型政党という事実に合致する。しかし、チームみらいは離島や寒村のような僻地でも票を得ており、この属性だけでは説明不足である。

表3-1

そこで、最下段の政治思想を見よう。チームみらいの投票者は保守リベラル度がー0.216で中道リベラルといったところである(保守リベラル度は正の値なら保守、負ならリベラルで、絶対値が大きいほど度合いが強くなる。記事①補論参照)。

これは大きな特徴である。なぜなら表3-1に見るように他の政党で中道リベラルの政党はいないからである。国民民主党と維新の会は正の値で0.111と0.178であり、中道保守である。同じような位置にある政党がチームみらいしかいない。

チームみらいに投票した人が政治的に中道であることは、投票者が前の選挙の時にどこに投票していたかを見るとさらによくわかる。

図3-2がそれで、まず、前回は投票していないという人が24.2%で最も多い。ついで、立憲民主党から来た人が23.1%で続いている。ただ、自民・維新・国民民主の保守系の3党から来た人があわせて30%を越えている。

無党派層、リベラル、保守などあちこちから集まってきている印象であり、特定の供給源が見当たらない。チームみらいにはあちこちから人が集まってきており、この意味でも保守・リベラルの政治思想の軸の中で中道、あるいは中道リベラルなのである。

図3-2

中道の窓が開く:歴史的偶然

そして実はこの中道リベラルであることが、チームみらいの躍進の理由である。図3-3は記事①記事②にあった、自民党と立憲民主党の投票者の変化である。

前回の石破解散選挙で自民党に投票していた人のうち3割の人は今回の高市解散で自民党から離れた。図の点線で囲った134人がそれで、彼らは高市氏の右派路線を嫌って自民党から離れたのであるから中道である。実際、保守リベラル度は0.006で中道に位置する。

また、立憲民主党に投票していた人のうち、6割は公明党との合同をよく思わず、中道改革連合には投票しなかった。図の点線で囲った156人がそれで、彼らもまた中道である(保守リベラル度はー0.264)。

図3-3

ということは今回の選挙では、多数の中道の人々が既存の党から流れ出し浮遊していたことになる。ここにうまくはまり込んだのがチームみらいだった。

高市氏の右派路線を嫌って自民党を去った元自民党投票者、あるいは公明党との合同を嫌って中道改革連合に投票する気になれなかった元立憲民主党投票者は、投票する先がなく漂っていた。かれらは思想的に中道である。

保守よりの中道なら国民民主党・維新の会という受け皿があるが、中道リベラルには受け皿がない。困った彼らが見渡した時、そこにあったのがチームみらいだったと考えられる。離島や寒村のようなまったくチームみらいが選挙運動をしていないところでも票を獲得したのはこのように考えると理解できる。

別の表現でも確認しておこう。図3-4は、各政党に投票した人の保守リベラル度をプロットしたものである。2024年と今年2026年の配置を比較し、矢印で変化を示してある。

ここで気づくのは、立憲民主党と公明党が合同した中道改革連合はリベラル方向に大きく振れた。自民党は高市氏の登場で保守不度が高まり右方向に振れた。その結果図の0からマイナス0.5のところにぽっかりとあいた領域が窓のように現れた。

チームみらいは、この空いた窓に飛び込んだのである。この空いた領域にいる中道リベラルの人たちが投票する先はチームみらいしかなかった。

図3-4

このように考えればチームみらいの台頭は自然に理解できる。なにも陰謀論や不正を持ち出す必要はない。自民党の右傾化、立憲民主党の公明党との合同で、行く先を失った中道リベラルの人々が選ぶ投票先はチームみらい以外なかったのである。

これはたまさかの偶然の産物である。もし立憲民主党が立憲民主党のまま戦い、また自民党が右派に傾かなければ、チームみらいのここまでの勝利は無かっただろう。すなわち立憲民主党と自民党が従来からの中道付近の支持者をしっかり維持していれば、チームみらいがそこに割って入る事は難しい。

今回、自民党は右へ、立憲民主党は意図せざることであるが左へシフトし、第三の政党が入り込む窓が開いた。チームみらいはこの窓に飛び込んだ。これは歴史的な偶然であり、チームみらいにとって幸運以外の何物でもない。

このことはおそらくチームみらい自身が理解しているだろう。今後はこの偶然を生かすことができるかどうかがカギとなる。

現時点での勝利は幸運の産物であり、成果を出さねばすぐに有権者は去っていく。しかし、幸運によって成果を出すため舞台は与えられた。チームみらいはこれまでとは異なる性格をいろいろ持っており、そこに期待がかかる。新規参入者には反発がつきものであるが、それにめげずに新しい政治を切り開いてほしいものである。

民主主義は機能した

最後に日本の民主主義への疑念について反論しておきたい。

今回の選挙を民主主義の機能不全のように語る言説が見られる。民主主義の機能不全とは、有権者が無知あるいは既得権益で投票する政党が決まっている、フェイクニュースなどで分断が生じる、政治運動の声を聴かない、などのことをさしていると考えられる。そうだとするとそんなことはなかったと申し上げたい。

まず、投票する党が決まってるということはない。今回の選挙では、前回、自民党に投票した人のうち3割は別の党に投票している。自民支持者の中で中道系の人が自民党を離れており、高市自民の右派の姿勢を嫌った人は別の党に移っているのである。立憲民主党からは公明党との合同を嫌い、6割もの人が離れている。

人々は、その時の状況にあわせて投票先をダイナミックに変えているのであり、無知によりあるいは既得権益によって囲い込まれているわけではない。端的な例をいえば、今回、自民党に投票した人の半分弱は、前回は自民党に投票していない人々であり、およそ半分が入れ替わっている(記事①。一回の選挙で投票者の半分が入れ替わることをダイナミックと言わずして何と呼ぶのか。

有権者はそれなりの考えがあって大きく投票先を変えるのであり、既得権益に縛られて投票先が固定されているわけではない。自民党政権が続いているため、既得権益に引きずられた国民が自民党に投票し続けているというイメージを語る人がいるが、これは正しくない。国民は投票先をいくらでも変える用意があるのであり、国民の監視の目は働いている。自民党といえども票を失う時は失うのであり、民主主義は機能している。

また、今回はフェイクニュースの影響も限定的で分断も避けられた。兵庫知事選の時は斎藤知事のパワハラについてニュースが偏り、パワハラがあったかどうかについて県民の事実認識が真っ二つに割れてしまい、分断が生じた。基本事実についての認識がフェイクニュースなどのせいで大きく割れてしまうと議論が不可能になり、民主主義が機能不全を起こす。

しかし、今回は、そのような事が起きていない。その理由はこれからの調査課題であるが、一つには有権者に学習が効いてきて簡単にフェイクには騙されなくなったのかもしれない。もうひとつの理由として各陣営が動画を用意して流すなど対抗策をとったことも一因である。

兵庫の時はYouTube動画にあるのは斎藤陣営の動画ばかりで、これが偏りを生んだ。両陣営ともに動画を出せば相殺しあい偏りを避けることができる。

さらに政治運動の呼びかけも一定の効果があった節があることをあげておこう。今回、民主主義の機能不全をいうのはリベラル陣営が多く、彼らは自分たちの運動(「ママ、戦争止めてくるわ」)が国民に届かなったことを嘆いているようである。しかしリベラル陣営の戦争を阻止すべしとの運動は国民に届いていたと思わせる事実をいくつか指摘できる

たとえば自民党から3割もの人が離脱したことがそれである。今回、高市氏の総裁としてのイメージは極めて良い(記事①の図1-6参照)にもかかわらず、それを振り切って3割もの人が自民党から離れた。このことは、リベラル側の戦争反対のキャンペーンが一定の成果を上げたことをうかがわせる。

また、前回、立憲民主党に投票した人のうち4割程度の人が中道改革連合に継続して投票しているが、彼らは中道ではなく明快なリベラル派である(記事②)。

リベラル派は、中道改革連合が「原発再稼働・辺野古移設・安保法制」の容認に舵をきったことで裏切られたはずで、本来は幻滅し他の党に離脱しても良さそうなものである。それなのに中道改革連合にとどまり、投票を続けたのはなぜだろうか。「ママ戦争とめてくるわ」といった反戦のメッセージが一定の訴求力を持ち、彼らをとどまらせたというのがひとつのありうる解釈であろう。

このように国民はそれなりに考えて投票している。投票先をダイナミックに変えており、決して無知や既得権益に捕らわれて投票先を決めているわけではない。フェイクに騙されて分断が起きているわけでもないし、政治運動に耳を傾ける用意もある。

日本の有権者は賢明であり、日本の民主主義は機能している。Democracy is working。選挙に負けた時にばかり、民主主義の機能不全を口にするのはいただけないだろう。


編集部より:この記事は田中辰雄氏のnote 2026年2月22日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は田中辰雄氏のnoteをご覧ください。

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