カナダのカーニー首相がインド、オーストラリア歴訪後、最終訪問地として日本に来ます。日程は確定していませんが、たぶん、3月5日頃ではないかと思います。高市首相との会談も予定されています。

マーク・カーニー首相とトランプ大統領 同首相Xより
私はカーニー氏がカナダの中銀総裁時代からその手腕を見てきたのですが、正直申し上げて凄腕です。ただ、強引さとか強い押し出しがあるわけではなく、賢さと戦略家と先を見通す能力に極めて長けている方でした。それ故にカナダ中銀総裁任務満了後、英国の中銀総裁に初の外国人として指名され、その手腕を発揮しました。また英国から帰国後、不動産投資会社としては世界有数のブルックフィールド社で最後は取締役会会長まで勤め上げ、その後、首相になり、更に議会選で議員の座も射止めています。正直、キャリアだけ見れば立派過ぎるほどですが、逆にそれだけ引く手あまたということでしょう。
個人的には首相として非常に期待を寄せており、就任当初からそれを申し続けているのですが、一部のコメントでは否定的な意見もありました。どんな意見も構わないのですが、日本の方でカーニー氏の手腕を十分理解している人はあまりいないと思うので「なんでだろう?」という不思議な気はしていました。
さて、そのカーニー氏の対米戦略。前任のトルドー氏はトランプ氏との確執で米加関係はもともと冷えていた中でカーニー氏がトランプ氏と初会談した際には「あいつはいい奴だ」などとコメントしていたのに今ではまた冷たい関係に戻っています。ただ、対トルドー氏と対カーニー氏では違いがあります。トルドー氏ヘは侮蔑に近い感じだったのに対してカーニー氏には手ごわいという意味での強い抵抗感を示しています。その違いが分からないと米加関係は語れないと思います。
その中でカーニー氏がひときわ光ったのが1月のスイス ダボスでの講演でありました。要は大国主導の中で巻き込まれるのではなく、中規模の国らが連携をする必要がある、という趣旨です。これは銘スピーチとして評価されていますが、トランプ氏は完全にバカにしており、対カナダのテンションを更に上げている状態です。
イアン ブレマー氏は日経ビジネスに「米主導の秩序は終焉、再構築へ」と題して寄稿しており、その中で「企業は依然としてグローバリゼーションと自由貿易にコミットしている。関税が天井知らずに跳ね上がり、自国経済が破壊されることは望んでいない。より強いレジリエンス(回復力)を追求することになる。しかしそれは米国主導で起きることはない。トランプ氏は世界が変わるきっかけになったが、変えたのはカーニー氏の演説だった。今回のWEFから得られる最大の示唆だ」と最大級の勝算をしています。
さて日本でカーニー氏が提案する課題は①資源サプライチェーンの構築 ②食糧安全保障 ③防衛安全保障 ④相互投資促進 が柱になりそうです。資源については日本の商社などがカナダへの資源投資を増やしていますが、なぜかカナダ産原油にはほとんど興味がないらしく、輸入していません。日本は輸入国の多様化が問題になっている折、ここは検討する余地はあるでしょう。
食糧についてはカナダの自給率が200%もあり、日本と相反する関係にあるのですから豚肉や小麦ばかりではなく、もうすこし大きな取引をしてもよいと思います。 防衛安全保障はネタはありますが、私からは今はコメントは避けておきます。④の相互投資ですが、日本は北米=アメリカという意識が強すぎるのですが、カナダをうまく利用するビジネスもあるはずです。そのあたりを探ることは重要でしょう。
カナダは日本にとって最も近い北米で政治的にも穏健であり、日本との長い関係においても極めて安定しています。今回はインド、オーストラリアと渡り歩いた最終訪問が日本ということはQUADの仕切り直しをしてもよいのではないかと思っています。トランプ政権はQUADには興味がないと思います。ならばメンバーの組み換えをするぐらいのドライさを日本が持てるかどうかではないかと思います。
私は期待しています。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2026年2月25日の記事より転載させていただきました。







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