観光地の二重価格は何処まで許されるか

近年、観光地において二重価格に踏み込むところが増えてきました。賛否両論があるなかでソロソロと踏み出した形ですが、さて、これは何処まで許されるべきか、あるいは本当に二重価格にしなくてはいけないのか、単なるブームに便乗しているところはないのか、もう少し考えるべきではないかという気がします。

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少し前にバングラディッシュのダッカに行った際、現地でいろいろ世話になったバングラの方が数少ない観光地に連れて行ってくださいました。入場券売り場が長蛇の列だったのでその方が「私が買ってくるから入口のところで待っていて」と言われ、しばらくして戻ってきて、さて入場となった時、係員に「あなたはバングラ人じゃないですよね。その場合は外国人料金を払いなさい」と指摘され、買い直したことがあります。価格はローカルの10倍。ちょっとひどいな、と思ったことはあります。

このように観光地で外国人向けとの価格差をつけるところは欧州やインド、新興国を中心に広がっています。では日本でこれを導入するのは是か非か、であります。

まず、当該の観光施設の運営状況がどういう状況にあるか、という経営的背景は検討する必要があるでしょう。例えば閑古鳥が鳴いているような観光地ならば価格差をつけることでお金を落としてくれる外国人客の足は更に遠のくでしょう。一方でわんさわんさと客が押し寄せる施設なら価格引き上げの余地はあると思います。

次に二重価格にしなくてはいけない理由が明白であるべきです。例えば英語などの多国語表記をするコストがかかるとか、博物館などにある多言語対応で解説が聞けるヘッドフォンの貸し出しなどは理由になるでしょう。ただ、個人的にはそれでも価格差はリーズナブルであるべきで、その妥当性はせいぜい5割増し程度ではないかと思うのです。それ以上の価格差は論理的説明ではなく、政治的判断だと思います。例えば姫路城は住民が1000円でその他が2500円と2.5倍の価格差がありますが、私からすれば妥当性はなく、どちらかと言えば「払いたくなければ結構です」という姿勢が見え隠れします。大体、姫路に行く観光客は姫路城に行くのが目的のようなもので、駅から中途半端に離れたあそこまで来て「高いからやめた」とは言いませんよね。

同じ価格差でも大学留学となるとトンデモ価格差があるのは既知の通りです。アメリカ、カナダ、英国あたりの大学に海外から留学するとなれば自国学生より数倍の学費を払うのが当たり前です。理由は自国民学生は将来、納税を通じて自国に還元するが、外国人留学生は卒業後、原則自分の国に戻るから当該国で将来働き、税金を納めることがないからです。(あくまでも原則論です。)論理的ですよね。

ただ、大学にしてみればこれは「儲かる仕組み」で留学生を沢山招き、莫大なる学費を徴集し、大学の懐は過熱するほど暖かくなりました。ところが2年ぐらい前から始まったアメリカ、カナダの留学生削減政策で大学の収入の大幅減。ハーバードなどやってられん、というほどまで追い込まれるのです。で、どうしたかと言えば自国民向けの入学のハードルを下げたわけです。理由は授業料稼ぎです。

これがどうなったかと言えば、まだ進行中なので結論は申し上げられませんが、学生の質が落ちているのです。キャンパスには学生がいっぱい。だけど一昔前のエリート集団ではないということです。私の会社ではカナダの大学向けに日本語教育の教科書を卸していますが売り上げが落ちないのは学生の数だけは維持されている、あるいは増え気味ですらあるからなのです。

観光地の価格制度のまとめです。私は地元の方に還元するなら二重価格ではなく、サブスク方式がベターではないかと考えています。つまり3回分ぐらいの価格で年間パスが買える仕組みです。地元の人がその施設を自慢できるならパスを使ってもっと愛する姿勢を見せればよいではないかと思うのです。カナダではその仕組みが多いです。特に博物館や庭園などはサブスク方式が圧倒的に優れているし、制度的に支持できると思います。

観光地の二重価格導入についてはもう少し、賢者がアドバイスできる仕組みを作るべきでしょう。好例は大阪万博でした。開幕前はいろいろネガティブなことを言われていたのになぜあれだけ成功したか、といえば一つの理由はサブスク方式が決め手だったと言ってよいと思います。特に「夏の盛りの頃は炎天下で並ぶのも大変なので来場者は減るだろう、だけど学校は休みだ」、ならばと大人12000円、子供3000円という格安で期間限定のサブスクをオファーしたところ、地元の子供とその親が通い詰めたというのが実態であります。

日本は時として誰かがやるとそこに雪崩を打ったようにどこもかしこも同じことをする傾向が強いのですが、ケースバイケースなのですからそこは賢くすべきだと考えています。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2026年2月27日の記事より転載させていただきました。

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会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。

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