先の衆院選ですが、解散決定直後のメディアの予想に反して自民党の圧勝という形に終わりました。その中でも、特にリベラル勢力の壊滅が話題となっています。
なぜ彼らは壊滅したのか。
本来のそれとは異なる和製リベラルだったからだ、冷戦の空気がいつまでたっても抜けきらない拗らせ老人だったからだ等、いろんな人がすでに分析を行っています。
たぶん、それぞれ正しいんでしょう。
でも、今回はあえて“雇用”という面から紐解いてみたいと思います。たぶんそれが、同時並行で進んでいる「日本社会のもう一つの変化」もセットで理解する近道でしょうから。

共同体の“財布”として使われてきたサラリーマン
筆者が常々言っていることですが、日本は終身雇用という形で、現役世代向けの社会保障のかなりの部分を民間企業に丸投げしてします。
解雇しやすい国だと、ちょっと○○ショックが来ただけで国中に失業者があふれ、失業給付や再就職支援、そして生活保護のような生活支援を矢継ぎ早に繰り出さないといけません。
でも我らが日本国は、コロナ禍に際しても失業率3.1%という驚異的な低位安定ぶりを誇っています。

【参考リンク】新型コロナが雇用・就業・失業に与える影響
「労使は何があっても65歳までは雇用を守れるくらいの、ほどほどの賃金に抑えておけよ」
と、普段から厳しく民間企業に指導している賜物でしょう。
いまだに勘違いしている人が多いんですが、終身雇用制度というのは賃金を低く抑えて雇用を安定させるための仕組みです。江戸時代の贅沢禁止令みたいなもんですね。
で、ここからが本題なんですが、このサラリーマンをコアとした民営化社会保障制度は、サラリーマンだけで完結するものではなく、高齢者や自営業者の社会保障を支えるためのお手軽な財布としても政府に使われまくっています。
たとえば、国民年金の(免除、猶予を除いた)実際の納付率がたった4割だというのは割と有名な話ですが、未納で足りない分は基礎年金化を通じて事実上サラリーマンの負担している保険料でまかなわれています。
また、保険料引き上げの続く健保組合ですが、実際は支出の4割を高齢者医療向けの拠出金が占めています。
【参考リンク】高齢者医療、膨らむ現役世代の健保負担 24年度5.7%増の3.8兆円
ついでにいうと、今回惨敗した中道も「サラリーマンの年金積立金でバクチはって、儲かったらみんなの消費税減税に使おうぜ、大丈夫、俺ギャンブル強いからへーきへーき」って言ってましたが、あれも流用の一種でしょう。
言い換えるならサラリーマンというのは、何があっても失業しない程度のほどほどの給料に抑えられつつ終身雇用の柵の中に囲い込まれ、“労使折半”や“天引”といった偽装ツールで気付かれないようにそーっと搾り取られ続けているようなものでしょう。
で、そこに高齢者や自営業者や無職やニートや夜職や坊さんや反社といった非・サラリーマンが寄ってたかって寄生しているわけです。
共同体は守るな、でも共同体の社会保障は死ぬまで死守しろ、では誰もついてこない
さて、そうしたポイントを踏まえた上で日本のリベラルという集団を見てみると、実に矛盾した存在であることは明らかでしょう。
彼らの多くは日本という共同体そのものを否定し、個人がそれに優先されるべきであり、安全保障すら放棄せよと説きます。


ちなみに、筆者はちょっと心情は理解できるんですよ。自分はどちらかというとリベラル寄りなので(少なくとも保守ではない)。
「そうだそうだ!共同体なんてどうでもいい!とりあえず個人が重要だ!というわけでとりあえず高齢者も生活保護受給者も原則3割負担!介護保険制度なんて廃止しようぜ!」
と共感しちゃう部分は割とあったりします。だって共同体なんてどうでもよくて、重要なのは個人だから。
でもね、彼らリベラルはこと社会保障になると豹変してまるで全体主義者のごとく保守化するんです。
【参考リンク】団塊老人の既得権を守る上野千鶴子さんの「自分ファースト」に非難集中


日本の債務残高は大戦末期と同水準であり、ギリギリの綱渡り状態です。現在の日本を「社会保障という名の戦争を継続しているようなものだ」と考える人も少なくありません。
そんな中、現役世代の手取りを増やしてとか、全世代一律の3割負担にしてくれとちょっと頼んだだけで↑ですよ。
まるで大戦中の右翼じゃないですか。
「社会保障戦争の手を緩めよとか何事か!サラリーマンなら血を流し、最後の一人まで戦え!撃ちてしやまむ!」
みたいな。
で、きわめつけは、上記のような勇ましいことを言っておられるリベラルな面々が、ほぼ非・サラリーマンだということですね。
自分たちは柵の外にいて、少ない負担で社会保障の恩恵だけ享受する立場にいながら、柵の中からの社会保障見直し要求にだけは一丁前に反対する。
上の「若者と高齢者は敵じゃない いつか来た道 いつか行く道」ってビラなんて、作ってどや顔してる奴がフリーランスだと考えるとケンカ売ってるようにしか見えないんですけど(苦笑)
筆者のような雇用をベースに社会を見ている人間からすると、この辺が彼らリベラルが現役世代から毛嫌いされる理由のような気がします。
というわけで、惨敗したリベラル諸党が「現役世代の取り込み強化!」を掲げてますけど、筆者が提案するとすればシンプルに以下ですかね。
- 個人の自由を尊重するなら、高齢者の負担大幅引き上げ、社会保険料の引き下げと消費税への置き換え
特に安全保障全否定するような人は75歳以上は公的保険の適用外して100%自費くらい言わないと筋が通らんでしょうね。
- 社会保障という共同体の一部を重視するなら、憲法改正と再軍備宣言支持
9条破棄と核武装まで入れれば、言ってることに多少は説得力も出るんじゃないですかね。
「学生時代は安保闘争や学生運動やってたからそういうのイヤだ、でも社会保障は面倒見て欲しい」って言うんなら、リベラルの看板は降ろして党名を「団塊保守党」とか「高齢者ファースト党」とかにしてください。
新しいリベラルの看板は我々が引き取りますから。
■
以降、
チームみらいに吹いた追い風の正体
21世紀のリベラルとは
Q:「就職氷河期世代の強み/メリットは?」
→A:「終身雇用に変な幻想を抱くことなく、自身の腕で勝負できたことですかね
Q:「43歳で2度目の転職をしてみた感想」
→A:「40歳以降は年功序列もいいですが、しがらみのない職場もいいものです」
雇用ニュースの深層
Q&Aも受付中、登録は以下から。
・夜間飛行(金曜配信予定)
編集部より:この記事は城繁幸氏のブログ「Joe’sLabo」2026年2月26日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はJoe’s Laboをご覧ください。





