協力関係を深めるインド・イスラエル

インドのナレンドラ・モディ首相が25日から26日にかけ、約9年ぶりにイスラエルを公式訪問したというニュースに接した時、先端科学技術の分野で先行するイスラエルと世界最大人口を誇り、今後の経済発展が期待されているインドの両国の組み合わせに新鮮さを感じた。

イスラエルを訪問したインドのモディ首相、イスラエル首相府公式サイトから、2026年2月25日

イスラエルからの外電によると、両国は今回、1992年の外交関係樹立以来の「戦略的パートナーシップ」から「特別戦略的パートナーシップ」に格上げしたという。モディ首相は25日、インドの首相としては初めてイスラエル国会(クネセト)で演説し、2023年のテロ攻撃の犠牲者に哀悼を示し、イスラエルとの「確固たる連帯」を表明し、「不確かな世界において、イスラエルとインドの友情は力の源泉であり続ける。われわれのパートナーシップは同じ経験に基づく。歴史や文明の古さを共有する古くからの友人として、非常に強固な協力関係を構築してきている」と述べた。 ちなみに、モディ首相は、両国関係の強化に対する多大な貢献が認められ、イスラエル国会議長から最高位の「クネセト・メダル」を授与されている。

インドは過去、アラブ諸国との関係を重視、パレスチナ問題でも「2国家解決」を支持するなど、アラブ寄りの姿勢を見せてきた。インドとアラブ諸国の関係は、近年、エネルギー供給源としての関係を超え、「戦略的かつ多角的なパートナーシップ」へと発展している。2026年1月には、ニューデリーで10年ぶりとなる「第2回インド・アラブ外相会議」が開催され、経済・安全保障の両面で画期的な合意がなされた。UAEやサウジアラビアには数百万人規模のインド人労働者が居住しており、彼らがインドに送る送金はインド経済の重要な支えとなっている。

その一方、インドは現在、イスラエルとは軍事、技術、農業などの分野で不可欠な協力関係を築いてきた。例えば、イスラエルの武器輸出の3割から4割がインド向けだ。両国間ではミサイル防衛システムやドローンの共同開発、生産が進められ、最新鋭のレーザー防衛システムや弾道ミサイル技術での連携も視野に入れている。

技術分野では、 AI、量子コンピューティング、半導体といった先端技術での連携を強化する「重要・新興技術パートナーシップ」に合意。 インドの電子決済システム「UPI」がイスラエルで導入されるなど、デジタル分野でも結びつきが強まっている。また、農業分野では、イスラエルの高度な灌漑技術や品種改良技術を導入するため、インド国内に約30(将来的には100を目指す)の「農業優秀センター」が設立されている、といった具合だ。 両国ともテロの脅威に直面している共通点があり、諜報情報の共有やサイバーセキュリティでも緊密に連携している。

興味深い点は、インドが米国、UAE(アラブ首長国連邦)、インド、イスラエルの4カ国による協力枠組み「I2U2」や、インド・中東・欧州経済回廊(IMEC)を通じた地域的な連携を進めていることだ。インドとイスラエル両国は長年交渉が続いていた自由貿易協定(FTA)について、早期締結に向けた交渉を加速させることで一致している。特に、 インド・中東・欧州経済回廊(IMEC)を通じて、インドの貨物をイスラエルのハイファ港経由で欧州へ運ぶ物流網の構築を再確認していることだ。

IMECについて少し紹介する。このプロジェクトは、インドから海路でUAEへ、そこから鉄道でサウジアラビア・ヨルダンを縦断し、イスラエルのハイファ港から再び海路で欧州へ繋ぐ巨大物流網だ。

IMECの中核はサウジアラビアとインドの関係だが、両国関係は現在、黄金時代を迎えている。サウジアラビアはインドを「最も重要なパートナーであり、戦略的同盟国」と呼び、UAEとも包括的経済連携協定(CEPA)を通じて貿易額が1,000億ドル規模に達するなど、現在が「歴史上最も良好な時期」にあると評されている。サウジアラビアはインドにとって単なる石油供給国ではなく、「最大の投資パートナー」へと変わってきているわけだ。

ところで、インドの巨大資本アダニ・グループ(Adani Group)は2023年、イスラエルのガドット・グループと共同で、イスラエル最大かつ最も戦略的なハイファ港を約12億ドルで買収した(アダニが70%の株式を保有)。ハイファ港はイスラエルの海上貿易の30%以上を担う、物流の要衝だ。アダニはここを近代化し、地中海における世界的な貿易拠点へと変貌させる計画を推進している。

かつて孤立していたイスラエル経済を、インド企業が中介役となってUAEやサウジアラビアの物流網と物理的に接続(鉄道・港湾)している。中国の「一帯一路(BRI)」が中東で影響力を強める中、インド(アダニ)が戦略的な港湾を保持することは、米国やアラブ諸国にとっても「透明性の高い代替選択肢」として歓迎されている。イスラエル政府は、アダニの成功をモデルケースとして、鉄道、メトロ、海水淡水化といった他のインフラ分野でもインド企業の参入を積極的に促している。

(以上、インドとイスラエル両国の経済関係については、人工知能(AI)の助けを得た)

最後に、モディ首相の訪問を迎えたネタニヤフ首相は「短い訪問でしたが、非常に生産的で、また非常に感動的でした。昨日、クネセト(イスラエル国会)で行われたあなたの感動的な発言の後、イスラエルでは涙を流さない人はいなかったと思います。そして、それ以来、私たちは互いの心の奥底を見つめるだけでなく、両国が持つ素晴らしい知性についても深く見つめ直す機会を得ました」と述べ、モディ首相の訪問に感謝している(イスラエル首相府サイト)。


編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2026年2月28日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。

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