アメリカが準備するイランの濃縮ウランを国外に持ち出す作戦

「もし燃料を持ち出せなかった場合、原子炉を爆破する計画があったのではないですか?」

米国防総省高官は答えなかった。

私はさらに続けた。

「仮に爆破した場合、敵国とはいえ周辺地域の放射線汚染は甚大になるはずです」

彼は再び沈黙した。

その沈黙こそが、当時の現実を物語っていたのかもしれない。

ダラット原子炉をめぐる冷戦の影 ― いまにつながる核物質回収作戦

1975年、ベトナム戦争終結の直前。南ベトナム政権の崩壊が目前に迫る中、米国はベトナム中部の高原都市ダラットにあった研究用原子炉から高濃縮ウラン燃料を回収する極秘作戦を実行した。対象となったのは、米国企業が建設したダラット研究炉に装填されていた米国製の高濃縮燃料である。

当時の証言によれば、北ベトナム軍にはこの原子炉を「戦利品として確保せよ」という命令が出ていたという。目的は原子炉そのものよりも、そこにあった高濃縮ウラン燃料と米国製研究炉の設計情報だったと見られている。冷戦期において核関連技術は単なる科学技術ではなく、軍事力と政治力を象徴する戦略資産であった。もし施設がそのまま接収されれば、その技術情報は同盟国であるソビエト連邦や中華人民共和国へ渡る可能性が高かった。

私は約30年前、この作戦に関与したアメリカ合衆国国防総省の担当高官をサクラメントの自宅に訪ね、情報公開法で入手しいた米軍事公文書を使いながら、数時間にわたってインタビューする機会を得た。

その際の私の質問が冒頭のものだ。米国はもし国外に持ち出せない場合、爆破まで真剣に考慮していた。私はインタビュー前に米諜報関係者や公文書から得た情報を持っていた。

手作業で燃料棒を回収した危険な作戦

実際の作戦は、想像以上に危険なものだった。北ベトナム軍がダラットへ急速に迫る中、米軍特殊部隊と技術者が施設に潜入。時間がなく、クレーンなどの設備も使えない状況だったため、作業員は手袋をはめただけで炉心プールに手を入れ、燃料棒を一本ずつ手作業で引き上げたという。作業は夜通し続き、回収された高濃縮ウラン燃料は輸送容器に収められ、C-130ハーキュリーズによって国外へ空輸された。

作戦終了は午前2時。当時の軍務記録にもその時刻が残されている。燃料を手作業で引き上げる写真も現存、私の資料庫のどこかに眠っている。その後まもなく北ベトナム軍が施設に到達したが、炉心はすでに空になっていた。

この出来事は、ベトナム戦争終結の混乱の中で行われた一つの小さな作戦に見えるかもしれない。しかし実際には、核物質が敵対勢力に渡ることを阻止するための冷戦型特殊作戦であった。

原子炉メーカーと無人機プレデターの意外な関係

興味深いのは、この研究炉を製造したのが米国のGeneral Atomicsである点だ。同社グループは後に、アフガニスタン戦争などで知られる無人機プレデターを開発したGeneral Atomics Aeronautical Systemsを擁している。私は約20年前、アフガニスタン戦争で活躍した無人機プレデターを取材するため同社を複数回訪問したことがあるが、原子力から先端無人機まで幅広い技術領域を手がける姿勢は一貫していた。

同社の歴史部門は米国防総省の友人たちと共に、こうしたベトナム戦争時代の史実発掘に協力してくれた。善悪論は別にして、米国は歴史から学ぶ姿勢がある。驚くべきレベルだ。

そして、この話をいま持ち出す理由がある。

イランの60%濃縮ウランという現在の危機

現在、イランは国際社会に完全には公開していない形で、兵器級に近い60%濃縮ウランを生産・保有している。もし、内戦や体制崩壊も含めて、この核物質をめぐる危機がさらに深刻化した場合、考えられるシナリオの一つは、施設への潜入と核物質の国外搬出である。

革命防衛隊の操り人形とみられる殺害されたハメネイ師の次男モジタバ師が、生き残ったとしてもだ。

米特殊部隊シールズかデルタフォース、情報機関が関与する、いわば「現代版ダラット作戦」。イスラエルが参加する場合はサイェレット・マトカル特殊部隊だ。

可能性が高い標的はフォルドゥ施設。これは山岳地下、数十メートル岩盤、革命防衛隊警備という構造で、米・イスラエル特殊部隊でも簡単ではない。

濃縮ウランは通常、UF6容器、金属キャスクで保管されており、これをトラック、ヘリ、輸送機で搬出する。

米諜報の友人によると、現在、イランは60%濃縮ウランを100kg以上保有していると推定されている。しかし、この数字は純粋なウランの重量にすぎない。実際の保管・輸送では、重量も体積も大きく増える。

濃縮ウラン輸送の現実的な重量

濃縮ウランは通常、UF₆(六フッ化ウラン)という化合物の形で保存される。これは常温では固体だが、わずかに加熱すると気体になる特殊な物質だ。このUF₆は専用容器である「30Bシリンダー」に入れて保管される。

この容器は直径約76cm、長さ約2mの円筒で、体積は約0.9立方メートル、つまりドラム缶2〜3本分の大きさになる。容器自体の重量が約120kgあり、そこにUF₆が約200kg入るため、1本で合計約320kgになる。

仮に100kgの濃縮ウランをUF₆の形にすると、化学量の関係で約170kgのUF₆になる。これを容器に入れると総重量は300kg以上になる。

さらに実際の核施設では、安全管理や濃縮度、製造ロットの違いなどの理由で物質は分散して保管される。そのため、2〜5本の容器に分かれている可能性が高く、総重量は1〜1.5トン程度になり得る。

つまり、イランの濃縮ウランは単なる「100kgの物質」ではなく、大型ドラム缶サイズの容器が複数本、合計1トン以上という規模になる可能性があり、これが輸送や回収作戦を極めて難しくする要因になっている。

想定される特殊部隊作戦

米軍の場合は、秘密輸送にV-22オスプレイ、長距離潜入にMH-47Gチヌーク、ステルス侵入にF-35ライトニングIIが使用されそうだ。

半世紀前、ベトナム高原の小さな研究炉で行われたこの作戦は、単なる歴史の一断面ではない。核拡散を阻止するための現実的な選択肢として、今日の国際安全保障の中でも依然として存在している。

ここには詳しく書けない。だが向こう1週間くらいで、実際に作戦成功の報道があるかもしれない。

ダラット原子炉をめぐる出来事は、冷戦期の情報戦と核管理の最前線を象徴するエピソードである。そしてその影は、半世紀を経た現在の世界にも、静かに伸び続けている。

トランプ大統領 ホワイトハウスXより

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